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うちのメイドさんは名状しがたい。  作者: ちょきんぎょ。
本編

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もういくつ寝ると夏休み?

☆もういくつ寝ると夏休み?




「もうすぐ夏休み、なんだよね」

 夕食が終わってお腹が落ち着いた頃、僕は呟いた。

 独り言のつもりだったのだけど、その言葉に反応した人がいた。

「わふ?」と言って厨房から現れたのは、金色の髪と紅い首輪がトレードマークの我が家のメイドさん、プリマリア・ティンダロスさんだ。

 紆余曲折あって僕のメイドをやっているプリマリアさんは、唇に指を添えるような仕草をして、

「……夏、休み……?」

 どうやら、解っていないらしい。

 彼女は少し、常識に疎いところがある。

 それは過去が原因でそうなっているところで、プリマリアさんに問題があるわけじゃない。

 彼女自身も気にしていて、少しずつでも知識を得ていこうとしている部分でもある。

 だから、僕はこういうとき、彼女がわかるまで付き合うことにしている。

「ええと、冬に一度、長い休みがあったよね? それの夏バージョンだよ」

 説明した瞬間、プリマリアさんの瞳が大きく見開かれた。

 首輪と同じ色の深紅の瞳いっぱいに僕を映して、彼女は口を開く。

「ご主人様が、毎日おうちにいらっしゃるのですか……?」

「ああ、うん。登校日とかはあるけど、大体一月くらいはお休みだよ」

「……わふぅ」

 どこかうっとりとした様子で、独特の溜め息を吐く。

「ご主人様のお世話を、朝から晩までさせて頂ける日が続くなんて……夢のようです」

 その言葉で、僕は去年のことを思い出した。

 去年の冬休み。彼女がこの家でメイドとしての生活を始めて一月か二月ほどのところで、それはやってきた。

 そして冬休みの間、毎日朝から晩まで、彼女は嬉しそうに僕の身の回りのお世話をしてくれた。それはもう、過剰なほどに。

 何時も若干過剰な世話を焼いてくるプリマリアさんだけど、この時はとにかく過剰だった。

 しかもその世話焼きが、毎日エスカレートしていった。

 メイドになってから日が浅く、際限というものがまだ解らない部分もあったのだろうけど、あの時のプリマリアさんはちょっと酷かった。

 そして、僕もいけなかった。

 毎日のプリマリアさんからの甘やかしにすっかり感覚が麻痺してしまい、色々と許してしまった。許しすぎてしまった。

 その辺りを話すと長くなるので、今回は割愛。

 というか、もうずっと心の中にしまっておきたい。お願いします掘り返さないでください。

「朝も、お昼も、夜も、私の作ったお料理を食べてくださるんですよね?」

「う、うん。家にいる限りは、もちろん」

「わふぅ……今から夏向けのメニューを考えるのが、楽しみで仕方がありません……」

「えーと……」

 この分だと、また暴走するかもしれない。

 来るべき夏に備えて、僕も色々と準備というか、覚悟を決めておく必要がありそうだ。

 今度流されたら、取り返しがつかなくなる気がするから。

「まあ、宿題とかもあるし、みんなと約束もいくつかあるから、毎日家にずっといるってわけにはいかないけど……」

「でも、何時もよりは居てくださるんですよね?」

「……そうだね」

 瞳をキラキラさせて、プリマリアさんがこちらを見詰めてくる。

 犬であれば尻尾がちぎれんばかりに振られているであろう、期待に満ちた表情だ。

 金髪美人にこんな可愛らしい笑顔を向けられて、はね除けられる人がいるだろうか。少なくとも、僕には無理だ。

 僕自身も、プリマリアさんと夏が過ごせるのが楽しみであるという気持ちはもちろんある。

 ……海とか、夏祭りとか、連れていったら喜ぶかな。

 彼女とはじめて過ごす夏を思って、僕も少しだけ心を踊らせるのだった。

 冬休みの二の舞だけは、きちんと回避しなければという気持ちと共に。




―――――――――


「ご主人様」

「ん、なに? どうしたの?」

「夏休みというものには、時間ループが付き物だそうですが……本当なのでしょうか?」

「……たぶんそれは、参考書間違えてると思うよ?」

 エンドレスな夏は来ない……はずだ。

「そうですか……安心しました。時間旅行者は危険ですからね」

 妙に神妙に頷くプリマリアさんを見て、僕は説明の仕方を考えるのだった。

 ……サブカルチャーだけで常識を覚えるって、やっぱり無理だよね。

あとがき

数年ぶりの更新になってしまいました。いつの間に時間旅行をしたんだ……周りのものを曲線にしなければ。


おやすみの理由は、一言でまとめると創作をする余裕がなかったからです。

色々辛いことがありまして、気持ちの問題から一年くらいほとんど筆が止まり。

創作したくなった頃に、子供ができました。

ようやく、創作に少し身を入れられる程度の余裕ができました。時間的な余裕、というよりも、気持ち的な余裕ですね。

まだまだリハビリ段階ではありますが、また書いていきたいと思います。


もしも待っていた、という方がいらっしゃるのならば、申し訳ありません。待っていてくださり、ありがとうございます。


新作なども公開してますので、肌に合ったらどうぞ。

軽くイチャイチャしたら、お友だち勢の掘り下げなどもしていきたいですね。

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