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としょしつのおと

「これかな、ルフ」

「ふぉあっ。九郎さん、ありがとうございますっ」

「重いから気を付けてね」

 そう言いながら僕は、本棚の上の方から取った大きめの本を、幼なじみの蘭堂 ルフに手渡した。

 彼女はそれを受け取ると、大事そうに抱えて頭を下げ、

「ルフの身長が147センチなばっかりに九郎さんにご迷惑をかけてしまって、申し訳ないであります、ごめんなさいでありますっ」

「いやいや。気にしないで」

 これくらいの手伝いは軽いものだし、身長が小さいのはルフが望んだものではないのだから謝るようなことではないと思う。

 それでもルフはパープルの瞳をきらきらと輝かせて、

「やはり九郎さんはルフのヒーローですっ。広がる宇宙の中で小さな星の話をしますっ」

「いや、悲しみを繰り返してどこに行くかわからないようなのはちょっと……」

 慕われてるのはわかるけど、褒め方がちょっと微妙なのがルフの残念なところだ。

 ただ、幼なじみとしてはルフのそう言う、天然なところが可愛くもある。

 苦笑しながらも頭を撫でてあげると目を細めて、ふぉあ〜、と独特の鳴き声を発するのがまた愛らしい。

 今日、僕がこうして図書室にいるのは、ルフの読みたい本を探すお手伝いが理由だ。

 うちの学校、ミスカトニック校の図書室はかなり大きくて、歴史書や地図帳といった学業に役に立つものから、絵本や漫画、ライトノベル、果ては海外の小説の現地語版まで、なにからなにまで、と言っても良いくらい大量の本がある。

 ルフは読書が好きなので、こうして度々ここを訪れてはたくさんの本を借りていく。メインは絵本やSF小説などなところが、とても彼女らしい。

 しかし悲しいことにルフの身長はこんな感じだし、女の子の細い腕では持てる量も限られてくる。

 だから僕たちが、こうしてルフに快適な読書ライフを提供するために時々お手伝いに来ているのだ。

「るー。くー。まー、戻った」

「あ、茉莉。お帰り」

 ルフの髪の感触を楽しんでいると、もうひとりのお手伝いさんである茉莉が帰ってきた。

「…………」

 茉莉は僕とルフの顔を交互に見た。

 僕は茉莉より身長が高く、ルフは茉莉より身長が低い。だから首の動きは必然的に斜めだ。

 そうして三往復ほど僕とルフの顔を視界から入れ換えて、茉莉は唐突に左親指を上げた。

 よく解らないけどなんだか満足そうだったので、とりあえず僕もルフを撫でていない方の手、左手の親指を上げてみると茉莉は力強く頷く。

 無表情なのにその頷きはなんだか自信に満ち溢れた感じだった。意味はまったく解らないけど、茉莉が満足気だからいいか。

「あ、茉莉さん。お帰りなさいであります」

 目を細めていた為に気付くのが遅れたらしく、ルフが今頃になって茉莉に挨拶をした。茉莉は無表情のまま頷いて、

「オルテガ、無かった」

「オルテガ……?」

「踏み台」

 突然の横文字にきょとん、としたルフに対して茉莉が言い直す。そりゃオルテガじゃ解らないだろう。いかにも踏み台になりそうな名前だけど。

 茉莉の言いたいことを理解したルフは、ふぉあっ、と飛び上がる。

 相変わらずオーバーアクションだけど、いつもよりちょっと抑え目な『ふぉあ具合』だったので、一応場所を気にしてはいるらしい。声もいつもより小さいし。

「困ったであります……一番上の棚に届かないであります……」

「そうだね……」

 この図書室、蔵書が多いだけあって一つ一つの本棚の高さはかなり高い。

 いつものメンバー四人の中では、身長が180を越えていて手も長い弾でなければ、一番上の段の本には手が届かない。

 こうした事態への対処として、図書室には踏み台がたくさん用意されているのだけど……どうやら、すべて使用中みたいだ。

「ごめんね、ルフ……僕の身長が165センチなばっかりに……」

「まーの身長、158。正直、すまんかった」

「お、お二人の所為じゃないでありますよっ」

 さっきのネタに乗っかってみると、茉莉も乗ってきた。ルフがわたわたして、ちょっと面白い。

「でも、困ったね。今日は弾もいないし……」

 こういう時に大活躍する僕らのノッポ担当の家井 弾は、残念だけど今回は不在だ。

 彼ならこの図書室の本棚の一番上にも届くんだけど……。

「大丈夫。名案ある」

「おおっ。まことですか、茉莉さんっ」

「何かいい考えがあるの?」

 僕とルフ、二人分の視線を受けた茉莉が無表情のままで頷いて、

「今こそ、絆を一つにするとき。混沌合神を許可する」

「がっしん……?」

 ええ、と?

「合神でありますか!?」

 ルフが図書室であることも忘れて大きな声を出して、瞳をきらきらさせていた。

 たぶん意味は……解っていないんだろうなぁ。





―――――――――


「これが、友情の究極の形」

「形でありますっ」

「形、なのかな?」

 今、僕らはひとつになっている。

 正確には、僕がルフを肩車している。

 これによって僕の、いや、僕らの身長は軽く2メートルを越えた。これならどの高さの本も簡単に取ることが出来るだろう。

「名付けて、混沌合神、ランドクロウザー。この混沌とした時代を焼き尽くす、紅の牙」

「おおお……ルフと九郎さんのボディ&ソウルがひとつになっているでありますっ」

 ふたりは無駄にテンションがMAXになっていた。オリオンとかなぞりそうな勢いで。

 しかしランドとクロウは解るけど、ザーってどこから来たんだろう。

「まぁ……これなら上まで届くよね」

 ソウルはともかく、ボディがドッキングしているのは確かだ。

 問題といえばルフがじっとしていないので、バランスを取るのにちょっと苦労するくらい。足の柔らかな部分、太ももに顔が挟まれたり、頬に押しつけられたりしてちょっと苦しい。

 転んだりしたらいけないから、早く済ませてしまおう。そう思って、僕は上にいるルフに、

「じゃぁ、行こうかルフ。どこに行けばいいの?」

「お願いします、九郎さんっ。先ずは向こうでありますっ」

「うん、了解」

 ルフの指示を受けて、僕がバランスを崩さないように足を動かす。

 こうして、混沌合体ランドクロウザーとやらは歩き出したのだった。何故かその場で直立不動で敬礼している茉莉に見送られて。

 もちろんその目的はルフが読む本を集めるためで、混沌とした時代を焼き尽くすためなんかでは決してない。





――――――――――


「ルフ、これくらいで良いかな?」

「九郎さん、今度はこっちに行ってほしいであります〜」

「……ねぇルフ、実は楽しくなってわざと僕を動かして遊んでない?」

「ふぉあっ。そ、そんなことは、ないであります……よ?」

 ……そんなことないなら、どうしてそんな切れ切れに疑問系なのかな?

 真相はさておいて、これが終わったらルフを一度降ろそう。そろそろ肩も痛くなってきたところだし。

 そう決めて、僕はとりあえずはルフの指示に従うのだった。

 そもそもこれ、移動まで合体して行う必要はないような……目的の本棚の下で合体したら良いんじゃないのかな?

久しぶりにあとがきでもと思いました。


仲良し四人組とか言いながら弾さんの不在が目立ちます。そろそろ出したほうが良いんでしょうか。


ここ数日で更新した覚えもないのにやたらPVと読者登録が増えて、書いてる身としては何が何やらです。宣伝とかした記憶はないんですが……。


ただそんなに読みたいならってことでちゃきちゃき新しいのを書き上げておきました。

感想とかPVとか目に見えるご褒美が大好物で現金なやつです。すいません。




最近、『うちのメイドは不定形』というラノベがあることを知りました。


うーにゃーでお馴染みの這い寄るあれはアニメ化前から好きだったんですが、こっちは全然知らず、知ったときに「うわぁ……タイトルもろかぶりでしかも同じクトゥルフじゃん……」と、超びびりました。


これ以上気付かないうちにかぶってたら……と、思うと怖すぎて読む気になれません。助けて窓になんかいる。


それでは皆さんのSAN値が回復したころにまたお会いしましょう。いあいあ。

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