表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
道化師による楽しいダンジョン探索!!  作者: モノノキ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/20

第11話 武器難民

朝起きて欠伸を噛み殺しながらキッチンへ向かい、適当にパンをトーストする。

昨日のゴブリン集落壊滅で得た報酬のおかげで、冷蔵庫の中身が少しだけ豪華になっている。


『――続いてのニュースです。ヤマトダンジョン第1階層において、特定エリアでのモンスターの活性化が確認されました。探索者協会は、初心者探索者に対し、無理な奥地への侵入を控えるよう警告を出しています』


「ふ~ん。まぁまだそんな奥に行くことなんて無いしな」


モンスターとの戦いにもある程度慣れてきた。

だが、そろそろ自分の武器が欲しくなってきたのも事実だ。槍はリーチが長く安全だが、若干殺傷能力が低い。


「……まぁ、まずは金だな。武器を買うにも、もっと稼がないと」


俺はテレビを消し、準備を始めた。

いつもの黒パーカーを羽織り、リュックにあのスーツを詰め込んでマンションを出て、探索者協会へと向かう。

平日の早朝だというのに、協会周辺は相変わらずの活気、協会のロビーは朝から多くの探索者たちでごった返していた。

俺は更衣室の個室に駆け込み、リュックから視覚的暴力スーツを取り出して着替えた。


「今日も世界を彩ってやるかね〜」


しょうもないことを言って更衣室を出ると、カツン、カツンと銀色の靴が床を鳴らす。

周囲の視線が突き刺さる。


「うわっ……」

「またあの人だ……」


ヒソヒソ声が心地よい……わけではないが、身体の奥底から全能感が湧き上がってくる。今日も嫌になるぐらいに絶好調だな。


ダンジョン入口の大扉へと向かうと、そこには異様な緊張感が漂っていた。

入口付近で、二つのグループが睨み合っている。

どちらも最新の『ダンジョンドローン』を複数浮かせており、装備も整っている。

見たところ、それなりに実力がありそうな中堅探索者グループだ。


「おい、あそこは俺たちが先に目をつけたエリアだぞ! 後から来て横取りするんじゃねえ!」

「あ~?ダンジョンに早い者勝ちなんてルールがあるかよ。強い奴が獲物を狩る、それが真理だろ?」


どうやら、狩り場の縄張り争いらしい。ドローンが彼らの険悪な雰囲気を記録している。

一触即発。今にも武器を抜きそうな、ヒリついた空気。

ちっ、道を塞ぎやがって。誠に遺憾ながら彼らの間を通ることにした。


「すみません、通りますよ」


俺は銀色の靴を鳴らし、極彩色のチェック柄をなびかせながら、彼らの間を悠々と歩いた。

喧嘩をしていた男たちの言葉が、ピタリと止まる。


「……え?」

「……は?」


彼らの鋭い視線が、俺に釘付けになる。

張り詰めていた空気が、一瞬で変な空気へと変貌した。怒鳴り合っていた男たちが、毒気を抜かれたような顔で俺を見送る。


「……今、何が通った?」

「……凄まじく派手な不審者、か?」


背後で聞こえる困惑の声。

俺は心の中で「喧嘩を止めたんだから感謝してくれよ」なんて毒づきながら、探索用品貸出所へと向かった。


「ロングソードを貸してください」


「あら、今日は槍じゃないの?」


窓口のよく見かけるお姉さんが、少し驚いた表情をする。


「ええ。ちょっと、新しい自分を見つけたくて」


「あらそう。良いことね」


適当なことを言いながら、俺は手渡されたロングソードを受け取った。

槍よりも短く、ずっしりと重い。なかなか良い威力がありそうだ。


ダンジョンに入り、第1階層の平原へと降り立つ。

今日の目標は、この剣の使い心地を試すことだ。


「よし、まずはあいつだ」


前方に、プルプルと震えるスライムを発見。

いつもなら槍でチクチク刺して終わる相手だが、今日は違う。

俺は剣を抜き、低く構えた。


「ほっ!」


一気に踏み込み、横一文字に斬りつける。

だが、槍の感覚で間合いを測っていたせいか、刃先がスライムの表面をかすめるだけに終わった。


「あら!? 遠いな!」


スライムが怒ったように跳ねてくる。

俺は咄嗟に剣を盾のようにして防ぐと、衝撃が腕に伝わる。槍なら届く距離でも、剣だと一歩踏み込まなければならない。


「面白いね」


俺はマスクの下で笑みを浮かべた。全身を大きく使って振るう感覚が新鮮だ。


スライムの着地際を狙い、今度はしっかりと踏み込んで縦に振り下ろす。

ズバッ、という手応えと共に、スライムが真っ二つに裂け、光の粒子となって霧散した。


「威力は申し分ない……かな?スライムだから何とも言えないけど」


その後も、俺は草原を歩きながら、遭遇するモンスターを剣でなぎ倒していった。

ゴブリンの集団に出会った時も、槍のような"点の攻撃"ではなく、剣の"面の攻撃"で一気になぎ払う。


「ギャッ!? ギャギャッ!」


驚くゴブリンたちの首を跳ね、胴を断つ。

槍よりもリスクは高いが、その分、自分が戦場を支配しているという感覚が強い。


戦闘の合間には、採取も忘れない。

岩陰に生えていた『癒やし草』を数本、丁寧にナイフで採取する。

剣に変えたことで、腰を落とす動作がスムーズになった気がする。


「おっ、あそこにいるのは……一角鹿か」


草原の奥、立派な一本角を持つ大きな鹿がこちらを警戒している。第1階層でも俊敏なモンスターだ。

一角鹿が地面を蹴り、突進してきた。鋭い角が、俺の胸を狙っている。


俺は引きつけてから地面を蹴り、真横へと回避した。

鼻先を角が通り過ぎる。

その瞬間、俺はすれ違いざまに剣を振り抜いた。しかし、避けられると分かった一角鹿は角を振り下ろされる剣に合わせた。


ガギィィィン!


剣が硬い角に当たり、火花が散る。

一角鹿は器用に体勢を立て直し、再び俺を睨みつける。


「やるな……」


一角鹿が再び突進してくる。

今度は、回避ではなく受け流しを試みる。

剣の腹で角をいなし、そのまま回転の勢いを利用して首筋を斬り裂く。


「ほいっと!」


ズシュッ!


確かな手応え。

一角鹿は短い悲鳴を上げ、光の粒子へと変わった。

その場に、立派な一角鹿の角と魔石がドロップする。


「ふぅ……まぁ悪くない、悪くないけど……」


俺はドロップ品を拾い上げ、ロングソードの刀身を見つめた。

全能感に包まれた今の俺なら、どんな武器でもそれなりに使いこなせる気がする。

でも、なんというか……しっくりくるのは、やっぱり槍の方かもしれない。


「でもこっちのほうが強い気がすんなぁ」



夕暮れ時。

俺はロングソードを返却し、いつものように買取所で戦果を精算した。

今日の稼ぎは21000円ほど。一角鹿の角が10000円で売れたのがだいぶデカい。あれはドロップするのが低い方だそうだ。


「まっ、しばらく色んな武器使ってみるかね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ