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最弱ルーキーのナイト・スレイド  作者: フランジュ
冒険者ギルド編・第三章
58/61

逆転の運命たち(1)

目を覚ますとベッドの上だった。

スレイドは少しだけ首を動かして周囲を見る。

見覚えのある木造の室内。

恐らくミディアランの宿だ。


窓から差し込む光は朝焼けのようで、その明るさに目を細めながら上体を起こす。


「ぐ、体が……」


あまりの激痛に顔を顰める。

起こした体を見ると包帯が巻かれていた。

包帯は上半身の全体に巻かれている。

そこでようやく自分の置かれた状況を把握できた。


セラフィーナの依頼で十二騎士ナイトであるグロムランド・オルバと戦ったこと。

そして、その戦いで大怪我をしたのだ。


「俺は……生きたのか……」


言ってすぐに部屋のドアが開いた。

すると入ってきた人物が声を上げる。


「おっ、スレイド!起きたじゃん!」


「ミライ……無事だったのか」


いつものセイフク姿のホウジョウミライだ。

彼女は満面の笑みを浮かべながら軽やかな足取りでベットの横に立つ。


「いやぁ大変だったわよ。まさか、このあたしがさらわれてちゃうなんてね」


「確かに。こんなガサツなのを攫って何の特になるんだか……」


「は?」


ミライの目が光る。

急いでスレイドは目を逸らした。

一転してミライは安堵の様子で口を開く。


「それにしてもスレイドも無事でよかったわね」


「あの後、何があった?」


「第二騎士団の騎士さま達がぞろぞろと来てさ。助けてくれたのよ」


話によれば第二騎士団の騎士、数十人が来てスレイド、ミライ、セラフィーナ、エレノア、サシャの5人を助けたそうだ。

恐らく第二騎士団総団長のガウ・ロン卿と入れ替わりで来たのだろう。


そして、どうやら第二騎士団の騎士たちの中にエレノアの婚約者もいたようだ。

彼女は婚約者に二度も救われるという展開に感動していたとのこと。


ミライとエレノア、少年サシャが連れてこられた休憩小屋の中には既に盗賊2人の遺体があり、その2人のものと思われる血液が飛び散っていたという。

状況から判断するとグロムランド・オルバの仕業であることは間違いない。


「まぁ、なんにせよフラグが回収されなくてよかったわ」


「ふらぐ……?」


「みんな生きて会えてよかったって話よ。特にエレノアさんと婚約者の騎士さま」


「確かにそうだな」


会話の中でミライがハッとして、


「あ、そうだ!」


と言うと、おもむろにブレザージャケットのポケットから"何か"を取り出してスレイドへと手渡す。

受け取ったのは"ワインレッドの宝石"だった。


「これは……俺の……」


「エレノアさんに言ったら快く返してくれたわ。今回のお礼も兼ねてさ。いやぁ今回はこの宝石に翻弄されちゃったわね。これのおかげで酷い目にあったわよ」


「……」


「どうしたの?」


「俺の剣技が全く役に立たなかったんだ……」


ワインレッドの宝石を見つめつつ、スレイドは奥歯を噛み締める。

セラフィーナを命をかけて守ると言っておきながら何もできなかった。

結局、グロムランド・オルバを倒したのはガウ・ロン卿。

決して自分が倒せるとは思ってはいなかったが、それでも今回の結果には不甲斐なさを感じていた。


なによりも頭をよぎるのは『その剣技は再現不可能』という言葉だ。


「俺の進む道はこれで正しいのか?この剣技で俺は誰かを救えるのか?」


それを聞いたミライは深いため息をつく。

すると少し間があってから真剣な面持ちで口を開いた。


「あんたさぁ、村を出る時になんて言った?」


「え?」


「村を出る時に戦ったでしょ、おっさんと」


「あの時……俺は……」


「"何を言われようとも俺は父さんが残したこの剣術を信じる。必ず自分のものにして騎士になる"。そう言ったでしょ」


ミライは一言一句、間違うことなくスレイドの言葉をいってみせた。


さらに続けて、


「だったら最後まで貫きなさい。どんな状況になろうとも信じ抜くの。そうしなかったら絶対、スレイドは後悔することになる」


と、いつもとは違う優しい声色で言った。


スレイドの心臓は高鳴る。

説教されたことによる緊張の鼓動ではない。

それは間違いなく前に進もうとする意思、"高揚"であった。


「ミライには、いつも励まされてばかりだな」


「そうねぇ。もしスレイドが騎士になれたら何か美味しいものでもご馳走してもらわないと」


「そんなものでいいのか?」


「いいわよ別に。そのかわり、とびっきり高いものを奢ってもらうから」


「その時に、そんな大金を持ってればいいけど。なんせ俺は"大借金まみれのスレイド"でしてね」


スレイドがため息混じりに言うが、ミライはニヤリと不敵な笑みを浮かべる。


「大丈夫よ。あんたは今日から"大富豪のスレイド"だから」


「は?」


意味がわからず呆然とするスレイドだったが、すぐにこの言葉の真意を知ることになる。

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