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最弱ルーキーのナイト・スレイド  作者: フランジュ
冒険者ギルド編・第三章
36/61

イヤリング

ガル・アーナム


セラフィーナの屋敷



客室のソファに腰掛けるスレイドとミライ。

2人は新たな依頼を受けた。

向かい合わせで足を組んで座る制服姿のセラフィーナからの依頼だ。


『姉を殺したと思われる、"センセイ"という人物を見つけ出す』


恐らくセラフィーナが撒いていたエサに釣られて、そろそろ姿をあらわすだろうとのことだ。


報酬は彼女の全財産。

その額は計り知れず、スレイドからしてみたら借金を返して終わるどころか大金持ちになる可能性だってある。


だが、それ以上にスレイドは目の前で毅然とお茶を口にするセラフィーナのことを心配していた。

自分よりも年下であろう彼女が復讐に燃えていること。

もしかすれば、この復讐によって身を滅ぼすことにつながるのではないだろうか……?


そんなスレイドの心配をよそにミライはテーブルにあるティーカップを手に取って口をつける。

そしてふと思い出したかのように言った。


「あ、そういえば言うの忘れてたんだけどさ」


「なんだよ」


「スレイドのイヤリング」


「俺のイヤリングがどうした?」


「宝石にヒビが入ってるよ」


スレイドは一瞬、何のことだかわからず固まるが、すぐに左耳へと手を伸ばしてイヤリングを外す。

そしてイヤリングの先端に付いているワインレッドの宝石を見ると、そこには1センチ半ほどの小さいヒビが入っていた。


「なんだよこれ、いつヒビが入ったんだ!?」


「ちなみに洞窟に行く前には無かったわよ」


「ということは……あの戦闘で?」


"あの戦闘"というのはカルガラ・クロウとの戦いのことだ。

カルガラ戦の無数の烏による攻撃によるものなのだろうか。


この会話にセラフィーナは目を細めていた。

"よくそんな小さな変化に気づけたな"と言わんばかりだったが、それよりもイヤリングの宝石にヒビが入ったということに対して思う部分があった。


「私の考えが間違っていたのか……まぁ確かに"あんなもの"を自分の子供に送るはずはないしね」


「それってどういう意味だ?」


「いえ、今のは忘れて。私の思い過ごしだから」


洞窟に行く前にも同じことを言っていた。

しかしセラフィーナはこれ以上、語るつもりはないらしく、すぐに話題を変える。


「もし、その宝石を修復したいのであれば私の知り合いを紹介するけど」


「本当か?でも俺には金が無いんだ……」


「前回の報酬ということで私が代金を出してもいいわ。さすがにあれだけの活躍だったのにご褒美が無いのは可哀想だからね」


「それは助かる!」


スレイドの表情が一気に明るくなる。

それを見たセラフィーナは笑みを溢しつつ言った。


「この町から南東に行くと"ミディアラン"という小さな町がある。そこに私の知り合いのリカルドっていう宝石加工職人がいるから、何日か休んだら行ってみたらいいわ。今回の依頼は長期的になるだろうから屋敷は自由に使って」


「いや、今すぐ行く」


「え?」


「これは俺にとって大事なものなんだ。すぐにでも修復したい」


「まぁ……そう言うなら、早急に馬車を用意するけど」


そう言いつつ眉を顰めたセラフィーナはミライに視線を送る。

"本当に今すぐ行くのか?"という意味合いの簡単なアイコンタクトだった。


「私は構わないけど。時間ってのは無限じゃないからね」


「別にミライは一緒に来なくてもいいんだぞ」


「何言ってるのよ。女ってのはね、綺麗なものには目がないのよ。宝石なんてなかなか見る機会なんてないし」


ミライの言葉にはあまり共感はできなかったが、内心では心強い味方だと思った。

なぜか彼女がいることで問題が上手く解決しているような気がする。


「でも依頼の方は継続して頼む。もしかしたら、"センセイ"はミディアランにいるかもしれないからね」


「もしそうだとしたらびっくりだけど」


「可能性は十分あるわ。決して警戒は怠らないように。私も少し休んだら後から追いかけるわ。ミディアランの町にある花屋に用事があるから」


「オッケー!じゃあ早速いきましょうかー!」


こうしてスレイドのヒビの入ったイヤリングを修復するため一旦、2人でミディアランの町へと行くことになった。


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