Part47 ドタバタ帰宅
「エルくん、本当に大丈夫かなぁ…」
エルと決めた待ち合わせ場所には、俺、リュイ、そして俺のジャケットを着た例のケモショタがいた。
ケモミミが見えないように、頭には麦わら帽子を被せてある。
エルの家からほど近いここは、街の中心部ではあるものの、人通りは他より少ない。
その中でも比較的人目につかないところで俺たちはエルと合流するのを待っていた。
まあ、小学生が数人で集まっていても、その中にケモショタがいても特に問題はないと言うことだ。
も、問題はないよね…?
さて、保護したケモショタの様子はというと、さっきからリュイが話しかけてくれているが、一向に話し出す様子はない。
「どこか、けがしてる場所とかある…?」
「…」
黙って頭を横に振るケモショタ。
どうやら言葉はわかっているようだ。
やっぱり攫われた後に何か酷い目に遭わされたからか、俺たちに怯えているのだろう。
怪我はしていないようだが、ボロ布一枚が腰に巻かれただけの体はひどく汚れている。
「もう大丈夫だからねっ。僕たちが君のこと守るから。」
「…」
もふもふそうに見える尻尾もだらんと垂れ下がっていて、元気がない様子だ。
早くエルの家に連れて行きたいところだが…。
「リオンくん、リュイくん!」
「エル!」
と、数十分ぶりに見たエルは、やや小さな声で目立たないように走ってきた。
この様子を見ると、無事に逃げ切れたようだ。
「大丈夫だったか…?」
「うん!よゆーで逃げ切れたよ!あんなおじさんに負けたら、いつも鍛えてる意味がなくなるからね」
そう言ってエルは得意げに笑って見せた。
「獣人の子はどう…?」
「大きな怪我はないけど、まだ話せないみたい…。」
「そっか…。それなら早く家に帰ろう」
リュイは頷くと、ケモショタの手を引いて立ち上がった。
「警察とかに引き渡すとかじゃあだめなのか?」
俺は気になって、エルにそう聞いた。
「いくら僕が中央貴族の息子だとしても、僕たちがこの子を誘拐していないっていう証拠もないし、人攫いの犯人はもういない。怪しまれていろいろ調べられるよりはいいかなと思って。」
エルは続けて少し黙って、こう言った。
「それに、こっちの方が楽しいし!」
それはそれは結構なことで。
楽しければなんでもいいって言うことらしい。
でも俺もその考えには大賛成だ。
ケモショタともっと触れ合いたいしな。
「そうだ。僕の家に着いたら、門番のお二人には僕が誤魔化しておくから、二人は急いで僕の部屋まで走って」
そうだった。エルの家は厳重なセキュリティが敷かれているのをすっかり忘れていた。
まずは門番をなんとかしないといけない上に、家の中に入ったら他の人間に怪しまれないようにせねば…。
「わかった。」
「とりあえずエルくんのお部屋で待っとくね」
全員がそれで納得すると、俺たちは建物の陰を出て、エルの家までなるべく目立たないようにして移動した。
ケモショタの尻尾を隠すものは何もないので、なるべくジャケットの中に収まるように上に向けたけど、いつ落ちてきてもおかしくはない…。
数分ほど大通りを歩くと、クレモンティーヌ邸が見えてきた。
「それじゃ、僕が先に行ってくるから、門番さんたちがいなくなったタイミングで走って!」
「了解。任せたぞ…!」
そう言って、エルは看守の二人に接触した。
「シエル様!おかえりなさいませ!」
「ただいまー!あっそうだ、二人に聞きたいことがあったんだけど」
「はっ、なんでしょうか…?」
「我々に手伝えることがあれば何なりとお申し付けください!」
「ありがとう!じゃあ、ちょっとこっちきてくれる?」
「「はい!」」
そう言って、二人の看守は庭の方に、エルについていくようにして正門を離れた。
それにしても中央貴族邸のセキュリティがこんなので良いのだろうか…。
誰とでも仲良くなれるエルのことだ。看守の人たちとも毎日親しげに会話を交わしてるんだろうし、看守の人たちがすぐにエルについて行ってしまうのもエルが普段築いてきた信頼関係の賜物だろう。
俺たちはこの機を逃すまいと、すぐに正面玄関に向かって走り出した。
庭には幸い誰もおらず、簡単に玄関にたどり着いた。
重厚感のあるドアを開けると、三人とも急いで靴を脱ぐ。
俺はすかさずケモショタの履いていた靴を手に持って、三人でさっきまでいたエルの部屋に駆け込んだ。
続く




