Part46 迷子ショタ囮作戦
俺たちは男とケモショタを追って、路地のかなり奥の方まで進んできた。
方角としては市場と反対側、人が多いところを避けたいのだろう。
何個めかの曲がり角を過ぎたところで、闇取引の男とケモショタは突然動きを止めた。
もうすぐ大きな通りに出るからか、少し警戒している様子だ。
すると、エルが突然俺たちの方を振り返って言った。
「もうすぐ大通りに出る……二人にも今のうちに作戦を説明しとくね。まず…」
と、エルはそこから、自分で考えたという救出作戦を俺たちに説明してくれた。
ーーー
「こんな感じ。わかんなかったところはある?」
「ほ、本当に大丈夫なのかな…?」
「それって、エルが一番危ないことになるだろ?」
「大丈夫。こっちには自信あるから。」
と、エルはそう言うと、男とケモショタのいる路地へとゆっくり入っていった。
「ちっ…。人通りが多い時間帯にあたっちまった…。」
男は路地の壁に隠れながら、大通りの様子をうかがっているようだ。
ケモショタはそのすぐ後ろに、手を縛られたまま立っている。
と、そこに
「あの…」
と、男の後ろから声がした。
弱々しく演技したエルの声だ。
「んあ…、、、って、オレンジの髪、、、中央貴族…!?の、ガキか…。」
男は一瞬驚いたものの、子供だと気づき安堵したようだ。
「僕、迷子になっちゃって、ここ、どこですか…?」
エルはもじもじとしながら、迷子に扮して男の方に近づいていく。
「迷子の相手をしている暇はねえんだ!さっさと散れ!」
男はうざったらしそうに、エルのことを手で追い払ったが、ぴたりと止まると、
「待てよ…?中央貴族のガキ…、さっき攫ってきた獣人と一緒に引き渡せば、倍はもらえるんじゃねえか…?」
と小さな声で呟いたかと思うと、
「引き渡す前に1発やっていくのもいいな…にしし…臨時収入だぜ…。」
と卑劣な顔をしながら笑い出した。
そして手のひらを返したかのように、エルの方に振り向くと、
「坊や、おじさんならおうちまでの道、知ってるよ…。ここまで来な…?」
と手招きした。
「っ…でも、おじさん、ちょっと怖いよぉ…」
エルは見事に迷子の子供になりきっている。
完璧な演技だ。どこで習ったんだろう。
「大丈夫だよぉ、ほら、こっちにおいで」
男はそういって、どんどんエルの方に近づいていく。一方のエルは、少しずつ後ずさりをしていく。
そして男とエルが突き当たりにあるもう一本の路地との交差点に差し掛かった頃
「やだぁっ…」
と、言い残し、エルはもう一本の路地から逃げ出す。
「あっ、こらっ、金ヅルっ!じゃなくて、坊やっ!待てぇぇぇっ!」
男はエルの後を追って路地の中へと入っていった。
「リュイ!今だ!」
「うん!」
それを合図に、俺とリュイはさっきまで男がいたところに飛び出し、ケモショタのところにたどり着いた。
そう、これこそエルの言っていた作戦、名付けて「迷子ショタ囮作戦」である。
男をエルが引きつけている間に、俺たちがケモショタを保護し、エルは男を瞬足で撒いてから合流する、という流れだ。
「っ!?」
ケモショタは近づいてきた俺たちにひどく驚いた様子だ。そもそも言葉は通じるのだろうか?
時間は限られているので、ひとまず素早くケモショタの手に括られた紐を外していく。
「よしっ、解けた」
数十秒もしないうちに紐が解けたので、俺は母にエルの家に行くからと、無理やり着せられていた半袖ジャケットをケモショタに羽織らせた。暑いとしか思っていなかったのに、こんなところで役に立つとは...。
ズボンは流石にないので、ジャケットの裾を少し下に伸ばす。
そうして俺たちは、目立たないように祈りながら、ケモショタの手を引いて大通りへと出た。
ーーー
「坊やっ!ちょっ、なんで、こんなに足が速くっ…」
「もう~。ただのガキだと思われちゃ困るよ~?おじさんっ」
曲がり角をいくつか曲がると、さっきまで居た市場に出たので、人混みに素早く紛れ込んで、男が来るのをやり過ごす。
「ガキっ…はぁ…はぁ…くそっ…。はぁ…逃げられやがった…。」
追いかけてきていた男は、舌打ちをして路地の中に戻っていった。
リオンくんとリュイくんはうまくやってるかな…。
男がいなくなったのを確認して、僕は合流地点に向かうことにした。
続く




