Part39 夢から覚めて
「リオンくん…リオンくん!」
「ん…、うう…」
目を覚ますと、そこはベッドの中で、目の前にはリュイの顔があった。
「どうしたの?結構うなされてたけど…。」
「大丈夫…ちょっと変な夢を見ちゃって…」
「顔色悪いよ…。涙もすっごい出てるよ…?」
「うん……」
軽く涙を拭うと、その手をリュイの頭の上に持っていき、少し撫でる。
「心配してくれてありがと。リュイ。」
「本当に大丈夫…?保健の先生、呼ぼっか…?」
「平気。他の三人は?」
「もう起きてるよ。あ、レオくんはまだ寝てる…。」
「そっか。」
昔の、それも、転生してくる前の夢を見たのは久しぶりだった。
俺が中学生だった時代には、多様性なんて言葉はなく、同性愛者は忌避された存在だった。
同級生の幼馴染に恋をしてしまった俺は、勢いに任せて告白するものの、本気にされるはずはなく。
空回りしてしまった俺は、無理やりキスをして思いを伝えようとした。
でもそれは逆効果で、ついに俺は避けられてしまうようになった。
あれから先輩たちには何回も呼び出されるようになり、行為はだんだんエスカレートしていった。
しまいには、俺がゲイだっていう噂も学校で回り始めた。
告白してから1ヶ月経った頃には、俺は不登校になって、自室に籠るようになった。
幼馴染との会話は、キスをした日に交わしたものが最後だった。
その後、何かを察したのか、親が転校の手続きをしてくれて、家も引っ越した。
けど、一つだけ変わらなかったものがある。
俺はやっぱり、男子に恋愛感情を抱いていたということだ。
正確には、幼馴染のような相手に、依存とも言えるような感情を抱き続けた。
そしてそれは、成長しても変わらなかった。
俺がいわゆるショタコンなのだと自覚したのは、高校に入ってから。
成長した同級生たちには何も感じないのに、ランドセルを背負う小学生のふくらはぎや、一向に声変わりのこない、制服がぶかぶかな中学生には心が躍った。
それは俺が、ショタに昔の幼馴染を映しているからなのであって、つまるところ俺がショタコンになった原因というのは、幼馴染を好きになってしまったからなのである。
「レオ、いい加減に起きなよ~!」
「むにゃむにゃ…あと5分、、、」
「このままじゃ朝ごはんに間に合わないよ…!」
隣のベッドにいるノアとレオを見ると、昔の俺たちとそっくりだった。
昨日、ノアに告白をしてみろ、なんて言ってみたけど、実に無責任だったと自分で思う。
告白って、恐ろしい。
成功すれば、二人が結ばれ幸せな時間が訪れるのに、失敗すれば、必ずどちらかが、または両方が悲しむことにしかならない。
1回きりのギャンブルだ。借りた金でやる競馬やパチンコみたいなもんだろう。
そんなギャンブルに、俺はノアを巻き込んでしまっていいのか?
そんなことを考えているうちにも朝ご飯の時間がどんどん迫っていたので、とりあえずベッドから出て、支度をすることにした。
「いただきます!」
朝ご飯は昨日の夜と同じ会場でいただく。
メニューはトースト、隣にはジャムが用意してある。
さらにはハムとチーズと、そしてりんごが一つ。
やっぱり一年生だからか、みんな眠そうな目を擦りながら一生懸命朝ごはんを食べていた。
「今日も海で遊べるんだったよね!」
さっきは眠そうだったレオだが、すでに遊びモードに切り替えているのか、目をキラキラと輝かせてりんごにかじりついた。
「昨日の続きだぞ!エルさま~!」
「お、受けて立つよ~?」
スポーツできる組は早速意気投合。
そこにリュイが言う。
「僕は今日ちょっと休もうかな…。昨日ははしゃぎすぎて疲れちゃった…。」
両手でトーストを持って、小さい口でトーストを食べるリュイの姿は、まるで小動物のようで物凄く可愛い。
「じゃあ俺もリュイと一緒に…」
そこにエルが入ってきた。
「リオンくん、昨日も砂浜で休んでたし、今日はいっぱい泳がない?」
「一緒に泳ごうぜ~!」
レオも目をキラキラさせて俺の方をみてくる。
リュイと砂浜デート、なんて思ってたら、体育会系の人たちからお誘いが来ちゃった…。
別に泳げないわけでもないんだけど…。
「うーん、、、いいよ。昨日はあんまり遊べなかったからね。」
悩んだ末、承諾することにした。
俺も海でリフレッシュしたかったし。
その代わり、遊ぶのは午前中だけ、という約束にしておいた。
午後はノアと例の話をしなくちゃいけないだろうし。
ーーー
「じゃ、リュイのこと、よろしくな」
「うん。レオのこともよろしくね」
「ちょっと!なんで僕とレオくんが赤ちゃんみたいになってるの!」
リュイから鋭いツッコミをもらったところで、俺たちは海に行く組と、ホテルに残る組に分かれた。
天気は全くのお出かけ日和と言っていいだろう。太陽は相変わらず、このサーブルの街に眩しく照りつけていた。
続く




