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学園タロットカード  作者: チンピラゲーマー
47/50

47.俺達の革命を

生徒の避難誘導が終わった校内では、六王寺と須賀の二人が見回りを行っていた。

四階建てのこの校舎の見回りを、須賀は上から、六王寺は下の階から始めた。


まず初めに、異変に気付いたのは六王寺。

一階から二階に続く階段を上っている途中のことだった。


「ああ!ゴメンナサイ!」


慌てた様子で階段を下りる、ピエロのような男と接触しそうになった。

それを生徒だと認識した六王寺は、


「おい、お前も早く避難しろよ?巻き込まれちまうぞ」


「分かりました!」


その場を急ぎ足で去るピエロを、六王寺は不審に思いながらも二階へと上っていく。



「全く……バカな男ですねえ。ヒッヒッヒッ!!」


道化師は笑う。

そして彼はグラウンドへと続く道へと走るのだった。


――――――――――――――――


同時刻、グラウンドで交戦していた魔術師とフウ、ロックベル。

それを屋上から見下ろす一人の男が居た。


「あれか…?月子はんが()ってたんは」


男は腰に二本の剣を据えており、眼鏡をかけている。


「よっしゃ……もうちょい様子見やなあ、これは。一筋縄でいく相手ちゃうやろうし」


男は屋上から、四階へと下りて校舎内をゆっくりと歩く。

すると、男の眼には一人の人物が写った。


「あれは……龍之介やないか!」


そう、四階の見回りを行っていた須賀 龍之介だった。

依然として須賀は、男の存在に気が付く様子はなかった。


「せっかくの再開やのに、()()に気付かんとはなんちゅう奴や!ホンマに……そういや………水斗はおらんのかいな」


須賀が下りていくのとは別の階段で、男は下の階へと移動する。



しかし、須賀はもう一度四階へと上がって来た。



「……………………先生」


極端に口数の少ない彼が発した言葉。


それは、男に対する敬意か、或いは。



敵意か。


――――――――――――――――


同時刻、教皇の間。

その場所に、一人の男が訪れていた。

男は真っ黒なローブを身に纏い、足音一つ立てずに静かに忍び寄る。


そして、男はドアの前に立つ。

律儀にもノックし、ゆっくりとドアを開ける。

彼の眼に入って来たのは、椅子に腰かけている一人の白髪の好青年。


「そろそろ来る頃だと思ってたよ。『隠者』」


「…………突然スマナイ」


機械音のような声が、静かな部屋に響く。


「いいさ。最近は姿を見せないからね、心配してたんだよ?」


「コチラも忙しくてネ」


まあ座りなよ、と教皇は促す。

しかし、隠者はそれを受け入れなかった。


「手短に済ませようと思ってイル」


「そうかい?それじゃあ用件を聞こうか」


隠者は一歩一歩、教皇に歩み寄る。

教皇はそれをものともせず、平然としていた。


「隠者、グラウンドを見たかい?」

 

「…………イイヤ。見ていないナ」


「実はね、僕が見たことのない生徒が二人。居たんだよねえ」


教皇が言っているのは、フウ、そしてロックベルの事だった。


「新入生じゃないのカ」


教皇はにやりと笑う。


「いいや、違うね。………何故ならここに載ってないからさ」


教皇が取り出したのは、生徒指導教員用の生徒の写真と名前が記載されているファイルだった。

そう、彼はこの避難誘導に乗じてこのファイルを職員室から持ち出していたのだ。


「つまり、だ。どういうことか分かるね?彼らはこの学園の生徒じゃない」


「外部からの敵という事カ」


「いい加減止めにしないかい?隠者」


その場の空気が凍り付く。

まるで時間が止まっているかのように、静寂が場を包む。


「キミは僕が復帰したちょうどあの日。旧校舎に入って行ったねえ。誰と居たのかな?」


教皇は、彼の『縄張り』で旧校舎内の人数を把握していたのだ。

隠者は依然として黙り込む。


「…………黙秘か。まあそれも正当な権利だよ」


「マサカとは思うガ。私が気づいていないとデモ?」


そう、隠者は気付いていた。教皇が自分の後をつけている事に。

敢えて彼を誘導したのだ。


「……では、君は何故僕を?」


その次の隠者の行動は、決死のものだった。


隠者は、いや。『ムクロ』は。


自分の正体を明かすと決めたのだ。


今までの彼と教皇との関係にヒビが入るかもしれないと、覚悟を決めた上で。


隠者は、その真っ黒なローブをその場で脱ぎ捨てた。

思いもよらぬ行動に、動揺を隠せない教皇。


彼の眼に映っていたのは、顔の左半分を包帯で巻いている、一人の青年だった。


「先に謝らせといてもらう。………騙すような真似して悪かった」


「………やはり、か」


青年の言葉を、虚構は重く受け止めた。

しかし、実際彼の中では受け止め切れてはいないだろう。

それをかみ殺して、抑えて。何とか会話を続行させる。


「お前には世話になった。だから本当に申し訳ないとは思ってるさ。…………けど、俺達にはやらないといけねえ事があるんだ」


ムクロは、この時も仲間の事を思い続けている。

グラウンドで戦うフウやロックベルの事を、もちろん彼は知っている。

シスターのアイシャ、鎖を巻いた男、ダウリン。

髪を赤く染め上げた侍、ノブナガ。

電気を自由自在に操ることが出来る金髪の青年、オーム。


今もどこかで戦っているクラウド。

法皇派の残党として引き抜いた少女、イオリア。


皆彼の考えのもとに着いて行くことを決意した者達だ。

だからこそ、彼は成功させなければならなかった。


「そう、俺達の革命を………!!」


教皇は悟った。

彼は本気で言っているのだと。そして、それを自分に止めることは出来ないと。


「じゃあ最後に、一つだけ聞かせてくれないか」


「……ああ」


「君は…いや、君達は。僕らの敵なのかい?」


この質問の意味は、両者にとってとても重かった。

しかし、ムクロの答えは決まっていた。


「…………いいや、違う。ただし、邪魔するなら容赦はしない」


「そうか。君達の邪魔をする気はないよ。僕らにもやらければいけない事があるからね」


それだけか?とムクロは確認する。

ああ、と頷く教皇。


そして、ムクロが出ていこうとしたその時だった。


「…………何も分かってないんだな…『コウタロウ』」


それを聞いた教皇は、ひどく震えていた。


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