46.フウとロックベル
前回の45話にタイトルがついておりませんでした……申し訳ないです。
既に修正しております!
「来てくれたんだね。愚者派……おや?死神はいないのかい?」
教皇は俺達が三人だけであることに気が付き、不思議そうな表情を浮かべた。
「あとで合流するそうだ。それより、どうして俺達を呼んだ?」
俺達の目的は黒崎を守ることだ。
女教皇からの話があったからだとか、節制という人間が気に食わないとか、そういった理由じゃない。
ただ俺は、『黒崎 戒斗』という一人の人間に興味を持ったのだ。
そしてあの日、ここで見た書類に書いてあった事実。
それは、黒崎が『法皇』に次ぐカード、『皇帝』を引いた事だった。
運悪くも、女教皇の予感は的中してしまったわけだ。
「場合によってはこの戦いに僕も出る。もしも君の身に何かあった時のためだ、これを渡しておきたくてね」
そう言って、教皇は黒いワイヤレスイヤホンを俺に差し出した。
「これでお前に連絡をしろと?」
ああ、と教皇は笑みを浮かべて頷いた。
俺はため息をつきながらも、イヤホンを耳に装着する。
どうやらこちらの声はこのイヤホンに内蔵されているマイクから拾われるらしい。
「それじゃあ頼むよ。全ては君にかかっていると言っても過言じゃあない」
「そんなに責任重大な事を人に押し付けるんじゃない……お前が最初から出れば楽に終わるだろうに」
教皇の身には以前のアルカナ戦争で、何かがあったらしい。
騎士団長の心配そうな表情が俺の脳裏をよぎる。
俺はもう一度ため息をつき、その場を後にしようとした。
その時だった。
「愚者!」
教皇が俺を呼び止めた。
「今度はなんだ」
「………負けるなよ」
教皇は真剣な面持ちで言う。
それにつき、天使や悪魔の表情も引き締まる。
「やれるだけやるさ」
これが、今の俺にできる精いっぱいの返事だった。
――――――――――――――――
一般の高校に比べ、とても大きい敷地面積を誇るこの学園。
その広いグラウンドの上に、一人の少女が立っていた。
少女と言えど、この学園の最高学年でもある彼女は、広すぎる校舎を眺めていた。
『魔術師』というカードを引いたあの日。
そしてこの学園で出会った一人の男。
その男に抱いていた特別な感情。
だが、彼女を待っていたのは残酷なまでのこの学園のルールだった。
(許せ、この学園の創造主よ。私は貴方に無礼を働くだろう……だが、私には為さねばならぬ事があるのだ……!!)
少女は五つの魔法陣を展開し、そして詠唱を始めた。
「全てを凍結させよ――――『永久凍土』!!」
五つの魔法陣から、校舎目掛けて無数の氷山が出現した。
先端は鋭利に尖っており、間違いなく殺傷能力は高い。
しかし、この攻撃は一人の男により阻止されてしまうのだった。
「流石だよロックベル!あの氷を岩石のプレートで封じ込めちゃうなんてね~!…………にしても寒いね」
そう、魔術師の攻撃を止めたのは革命派の『ロックベル』だった。
彼は氷山が校舎に到達するその目の前で、見事にそれらを打ち砕いて見せたのだ。
これには魔術師も、動揺を隠しきれていない様子だった。
「……中々やるではないか」
「まさか!これで終わりとでも?」
打ち砕かれた氷塊が、無造作に空中に舞う。
やがてそれは風によって、一点に集約する。
「さあて……こんなのはいかがかな?」
ロックベルと一緒に居たもう一人の青年、革命派の『フウ』が彼の能力で風を操っていた。
「『風神の息吹』!!」
吹き荒れる暴風と共に、鋭利な氷のつぶてが魔術師目掛けて一直線に飛んでいく。
「どうだ!?…………ってありゃ?」
魔術師は、ギリギリのところで防御障壁を発動していた。
「一筋縄じゃいかないねぇ…どうしよっか」
フウ、ロックベルと魔術師が睨み合う中、校内では生徒の避難誘導が行われていた。
「落ち着け!地下へ移動するんだ!」
六王寺、須賀の二人が中心となり、生徒を地下へと避難させていた。
「見て、彩佳!あれって……」
誘導が行われる中、治療者の二人が窓の外を眺めていた。
「愚者……?なんであの人が……!!」
彼女らの視線の先に居たのは、丁度グラウンドの反対側を走る愚者の姿だった。
――――――――――――――――
(あの音の正体も気になるが…黒崎を見つけない事には始まらない。当然節制本人も探しているはずだ。だとすれば、黒崎が隠れていそうなところをしらみつぶしにやっていくしかない……!!)
地味な作業になってしまうが、連絡手段がない俺達にとっては、こうするほか無かった。
(どこだ…どこにいる黒崎!)
そんな時だった。
学校の裏門の方向から、無数の人々が門を乗り越えて学園内に侵入して来ているのが見えた。
(まさか……あれが節制の……)
一人一人が何かしらの武器を持っており、まさしく交戦体勢だった。
あれだけの人数を相手に、三人で捜索する俺達に勝ち目は無いだろう。
「まずいな………死神は何してるんだ?」
とにかく、俺は一度その場を離れることにする。
死神の事を気にはなるが、今優先すべきは黒崎がどこにいるかだ。
――――――――――――――――
学園内の、ある部屋に潜む三人。
黒崎、北条、アヤノは息をひそめていた。
そんな中、黒崎はスマートフォンを取り出して電話をかけようとする。
「こんな時に……一体誰にかけるのよ」
「この学園に詳しい人物だよ」
黒崎は連絡先からその人物を選び、発信する。
「ああ、もしもし。僕だ。君に聞きたいことがあってね」
次に、電話の向こう側から聞こえてきたのは。
『はい。何なりとお聞きください』
元『法皇』の声だった。




