45.始まる作戦
翌朝、理事長室。
「お呼びでしょうか、理事長」
剣術の教師、六王子 水斗と須賀 龍之介は理事長からの呼び出しを受けていた。
「私の耳に入ってきた情報だが、今日この学園で大きな戦いが始まるようなんだ」
「アルカナ戦争という事ですか?審判からは何も聞かされてませんが」
「いいや、アルカナ戦争ではない」
「つまり……個人間の争いって事ですか」
水斗は眉をひそめて答える。
理事長は席から立ち上がり、水斗達の方へと歩み寄る。
「そこで、だ。君達二人の力が必要になる時があるかもしれん。何せその戦いがいつ、どのようにして始まるかも分かっていない。……頼めるね?」
「分かりました。いつ来ても良いよう、警戒しておきます」
戦いの渦にまた二人、巻き込まれる事となる。
この学園内で、それぞれが準備を進めていた。
「パーシヴァルはまだ怪我で無理みたいだなァ」
「そのようだね、仕方が無いよ」
「よし行くぞ、お前ら」
愚者、天使、悪魔の3人が歩き出す。
彼らの向かう先は『教皇の間』だった。
窓の傍で仮眠していたクラウドが目を覚ます。
ムクロは既に起きていて、学園内の地図を眺めていた。
「オイ、お前寝てねえンじゃねェのか」
「大丈夫さ、心配には及ばん」
ゆっくりと立ち上がり、地図を持ってムクロは部屋を出た。
その表情は、決意を固めたものだった。
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学園のとある場所。
審判は静かにコーヒーを口にする。
「ところで月子。『彼』の準備は出来ているのかい?」
「ええ。六王寺と須賀の師匠にあたる男……『久家 久功』。随分と苦労したわ」
月子は指をぱちん、と鳴らす。
すると、その部屋が静かに開いた。
そこに居たのは、腰に二本剣を据えた男だった。
「月子、すまないね。君には負担が重すぎたかな?」
「…………誰に向かって言ってるのかしら」
月子は審判に鋭い視線を送る。
「……ははは」
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午前八時前。
「さて、これから局はどうなるだろうね」
黒崎はチェスの碁盤を眺めながら言う。
両隣に座っているのは北条、そして戦宮司。
「キングは動かない。それはクイーンも同じ事。…………ただ、ナイトは動き出している」
黒崎は、黒色のナイトの駒を一つ前に出す。
「言っとくけど、今回だけよ。力を貸すのは」
「まあそう堅いこと言うなよ、いいじゃないか~戒斗に力を貸すぐらい」
「本当に不覚だわ」
不機嫌そうなアヤノを横目に、黒崎はゆっくりと立ち上がる。
そして壁に立てかかっている『武器』武器を手に取った。
「……さあ、『皇帝』の初陣だ」
続いて北条と戦宮司も立ち上がる。
彼らもまた、愚者と目的は同じであった。
『この男を節制から守ること』
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「女教皇。現在の時点でどれくらいの勢力がいるんだろう?」
教皇は白い紙を広げ、左手にペンを持つ。
「まずは愚者派。彼らは今朝、シルヴァが動きを確認しているわ。次に、仮にだけれども黒崎の『皇帝』派。今回のメインターゲットよ」
教皇は紙の上に、愚者、皇帝という言葉を並べて書く。
(まさか彼が大アルカナに選ばれてしまうとは……本当にこちらの嫌な予感が当たりすぎて嫌になる)
「続いて、反対勢力は節制派。恐らく、外部勢力と合わせて百人は超えていると予想できるわ」
「百人……か。随分と厄介だねえ」
停学処分になるような、あの節制が選んだ百人。気は抜けない。
これは教皇も女教皇も同じ事だった。
「そうだ、」
教皇は何か言いかけて、そこで言葉を止める。
女教皇は不思議そうな顔をしたが、何かを察したかのように紅茶を口に含む。
「すまない。忘れてくれ」
教皇の頭の中にあったのは、隠者の事だった。
彼の姿を見かけていない事。
そして、彼が複数の人物と共に居た事。
彼の中には、一つの結論が導き出されていた。
(君はどんな形でこの戦いに参加をしてくれるのかな?隠者)
その時、教皇の間のドアのノックが鳴った。
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「さぁ……ついに来たなァ!?この時がよォ!!」
屋上に、節制を含む四人の人間が居た。
緑髪の女、『魔術師』。
一度、愚者の前に現れた偽物の愚者。
そして、顔にピエロのようなメイクを施した男。
「行くぞお前ら……始まりだ!!」
四人はそれぞれ、別の場所へと歩み出す。
中でも魔術師は、グラウンドの方へと飛び降りてゆく。
節制は黒崎を探しに、偽愚者は愚者を、ピエロの男はヘイトコントロールを。
こうして、彼らの作戦は始まる。




