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学園タロットカード  作者: チンピラゲーマー
42/50

42. 戒斗とアヤノ

時は少し遡る。

教皇派と法皇派のアルカナ戦争時。


騎士団長と、桃色の髪をした少女は対峙していた。


「さあ早く剣を交えましょう、騎士団長」


「私は言ったはずですが……貴方を斬ることは出来ないと」


騎士団長は、彼自身のルールで『女性は斬らない』と定めていた。

彼は騎士として、それはあるまじき行為だと考えていたからである。

しかしこれは決して、男卑女尊(だんひじょそん)という訳ではない。


そんな事にはお構いなく、少女は騎士団長に斬りかかる。

彼女の剣筋は、騎士団長から見ても悪くは無かった。

騎士団長は彼女の一撃一撃を、丁寧に剣で弾いていく。


「ひどく舐められてる気分ね…」


「諦めてお帰り頂けないだろうか」


「無理な話よ!!」


彼らの剣戟は、もはや素人の目には見えないだろう。

しかし、騎士団長は一度も自ら攻撃はしていない。

少女の攻撃をひたすら全て受け流す。


「……まさか一度も攻撃が通らないとは……」


「確かに貴女の剣技は美しい。ですが、私から言わせれば足りない点が多い。どうですか?我々騎士団に入り、女騎士として活動するというのは」


少女は剣を鞘へ納刀した。

そして騎士団長へ背中を向けた。

それは、彼女にとって戦闘の意志はもう無いという合図。


騎士団長はそれを悟った。

彼もまた、剣を納刀する。


「……お断りよ。けど、私はもっともっと強くなる。こんな所じゃ終わらない…!」


「それではまた、貴女が強くなれば剣を交えましょう」



こうして、二人の剣戟は終焉を迎えた。

しかし、事件はここから始まる。


アルカナ戦争の終わりが宣言され、少女が帰ろうとしたその時。


目の前に、真っ黒なローブを着た男が突然現れる。


「!?……貴方は…『隠者』…?」


「ヤア。少し話を良いかな?」


初めは機械音のようだったその声が、徐々に肉声へと変わってゆく。


そして、真っ黒なローブのフードを取った。


「……!!」


その顔は痛々しい、火傷の跡が顔の左半分を蝕んでいた。

目は曇りを見せており、少女にとってはそれが恐怖ですらもあった。


「まあまあ、そう怖がらないでくれよ。少し話がしたいだけだからさ」


――――――――――――


戦宮司アヤノは、廊下を歩いていた。

彼女の脳内にあるのは、『焦燥』。


(愚者派…どんどんと力を伸ばしてる。それなのに私は…)


彼女は、言わばこの学園では価値をなさない。

それは、役職を与えられていない者だからだ。


曲がり角にさしかかろうとした、その時だった。


「やあ、アヤノ。そこで止まれ」


「その声は……(にい)様!?」


アヤノは、その声の主の顔を見ようと1歩踏み出そうとする。


「止まれ、と言ったはずだ」


「……!!すみません、兄様…」


紅色の瞳、綺麗な金髪。

兄の彼は役職を持たないアヤノとは違う。


それゆえ、彼は接触を避けていた。


「一度しか言わない、よく聞け。『節制派』が動きを見せている。私が直接手を下すまでも無いだろう。アヤノ、お前が何とかするんだ」


「節制派……ですか」


今のアヤノには、それをどうにかできる自信は無かった。


「無理ならば構わないが」


しかし、兄の冷静な一言が彼女を更に焦らせる。


「い、いえ!出来ます、やらせて下さい!」


「なら頼むよ、アヤノ。……期待している」


兄の気配は消える。

曲がり角の向こうを見ても、そこにはもう誰もいない。


彼の最後言葉は、まるで嘘で塗り固められたようだった。

一ミリも期待なんてしていない。

兄様も……()()()も。


しかしこの時、アヤノの中にはある考えが浮かんでいた。


だがそれは彼女のプライドを、自尊心を大きく傷つけることになりかねなかった。

だからこそ、彼女はその手を使うことが出来ないのだ。


「分かっているのに…その方が確実なことなんて……ッ!」



「随分とお困りのご様子だね」


突如、背後から声が聞こえる。

驚いたアヤノは、動揺しながらも答える。


「アンタは…転入生の…。一体何の用よ?」


そう、そこに居たのは『黒崎 戒斗』だった。


「僕はただ、貴女が困っていそうだったから声をかけただけだよ」


「余計なお世話よ!」


アヤノはその場を立ち去ろうとする。

しかし、黒崎の一言がその進行を止めた。


「……君にどうにか出来るのかい?」


アヤノはぴたり、と歩みを止めた。


「聞いてたのね、さっきの話」


「そこを通りたかったんだけど、先客が居たみたいでね」


「……アンタ、転入生でしょ?この学園の事情なんて…」


「まあそう思うのも仕方がないね。けれど、実は()()()()からずっと報告は受けていたんだ」


黒崎はアヤノの言葉を遮って話す。


「ある人物?誰のことよ」


「僕の仲間になってくれるのなら、教えてあげても構わないよ」


黒崎はそう言って、アヤノを抜かして歩き出す。


「ちょっ…!待ちなさいよ!どこ行くつもり?」


「言ったよね。僕はここを通りたかったって」


「そうだけど…」


黒崎は少し歩いて足を止める。

そこは使われていない、空き教室だった。


「こんな所に何が…?」


黒崎がドアを開けると、そこにはまるで誰かが住んでいるかのような、整えられた部屋があった。


「ここは……!?」


「僕に()()()()()()()だよ」


「与えられた……?……!!アンタまさか……!?」


「派閥には『部屋』が与えられる…だっけ。この学園の特徴的なルール」


そう。


それはアヤノにとって受け入れ難い現実。


そして、彼の発した言葉。

それらが全て繋がって、アヤノは一つの結論を出す。


「アンタ……大アルカナだったのね」


「正解。よく出来ました」




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