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学園タロットカード  作者: チンピラゲーマー
39/50

39.偽物

同時刻、教皇の間。

空席の教皇の席を前に、騎士団長は神妙な面持ちで立っていた。


「一体どうなさったというのですか…教皇。貴方に何があったのです…」


こんな事を言っても変わらない。

彼はその場を後にする。


教皇の間から出た時、一人の男と出会った。

背負った大剣、屈強な身体。


「シルヴァ…!どうしたのだ?」


その男は女教皇の側近、シルヴァだった。


「教皇が姿を見せていないと、我が君主からの心配の声が上がったのでな。少しばかり様子を見に来たのであるよ」


「恐らくお疲れなのだろう。明日には顔を見せてくださるの良いのだが…」


「不要な心配だったであるか」


「いいや。そんな事は無いさ」


口にした言葉とは反対に、騎士団長は大きな心配を抱えていた。

これまでの教皇はもう、戻って来ないかもしれない。


――――――――――――――


放課後に北条、天使と共に黒崎に学校案内をする事になった。

この学園はとにかく広い。

最初の方は俺も迷いそうになったのを覚えてる。


「よし、じゃあ行こうか。戒斗はどこなら行ったことあるんだ?」


「職員室と教室以外は、実はまだ行ったことがないんだ」


「そうか〜、なら色んなとこ回って行こうか」


「お願いするよ」


こうして始まった学校案内。


実験教室や、移動教室の際に使う教室、黒崎は剣術選択らしいので、体育館の隣にある道場なんかを案内した。

日も暮れそうになり、俺達が解散しようとしていた頃だった。


「大体こんなもんかな?後は学校生活してる内に慣れてくるよ」


「本当に今日はありがとう。とても助かったよ」


「それじゃあ俺はここで失礼するよ、また明日な!」


北条が帰宅、続いて黒崎も帰宅した。


「愚者、すまないね」


「いや、構わないさ」


ひとまず、今日節制と出くわす事は無かった。

学校案内をしている途中、周囲にとても気を配っていたが、こちらに敵意を向けているような気配は感じられなかった。



「それにしても、黒崎の役職は何だと思う?」


「彼の役職か…まだ何とも言えないね」


その通りだ。

あの時踏み込んで聞いてみるべきだったか…。


「まあ分からない事を考えても意味がない。とりあえず俺達も今日は帰るか」


「そうだね、そうしよう」


俺達が帰ろうとした、まさにその時。



「ぐぁぁぁぁぁぁっ!!」


一人の男子の叫び声が聞こえる。


「愚者!」


「よく分からんが…行ってみるぞ!」


声のした方に、俺達は急いで向かう。


校舎の裏側、一人の男子生徒がもう一人の男子の首を掴んで立っていた。

首を掴まれた男子生徒がこちらに気付き、声を上げる。



「た……たすけ…てぇぇッ」


すると、首を掴んでいる男子生徒もまた、こちらに気が付いた。


「あぁ…?お前は……!」


その男子生徒は、急に手を離した。

振り落とされた生徒は首をおさえながら、大きく咳込んでいた。


「会いたかったぞ……愚者!!」


俺を知ってるのか。

まあ昨日の戦争の件もあって、考えれないほど有名になってしまっているらしい。

こんなつもりじゃなかったんだが…。


「誰だ、お前は」


「俺か……?俺もまた『愚かな者』だ…」


その男子は顔に手を当て、笑い出す。


「何が言いたい?」


「俺がホンモノの『愚者』だって事だよ!!」


「何を言ってるんだ…彼は?」


俺にも分からん。と言うよりなんだこいつ。

偽物名乗るやつが目の前にいるってこんな気分なんだな。


「見てろよ偽物…お前の居場所なんかすぐに無くなるさ!」


それだけ言い残し、偽物は去っていった。


「愚者、今のは一体何だったんだい?」


「さあな…」


どうやら俺は今日また一つ、不可解なものと出会ってしまったらしい。


――――――――――


学園内の治療室。


「邪魔すんぜ」


死神は勢いよくドアを開けた。


「うわっ!ビックリするじゃないですか…」


ベッドに横たわっていたのはパーシヴァルだった。

アルカナ戦争の際に負った傷が原因で、大事をとって今日だけ入室したようだった。


「今日、アイツは来たのか?」


「愚者様なら…いえ。今日はまだ来られてません」


「……んな事だろうと思った。まあ多分、あいつはもうすぐ来るだろうよ。今日は転入生の学校案内させられてたからよ」


「そうですか……転入生が来たんですね。私も明日からは登校しますから、一日遅れの対面になりそうです」


死神は、ベッドの横にあった机にりんごを一つ置いていった。


「んじゃあな」


「もう行かれるのですか?」


「お前の様子見に来ただけだし、ここに居てもやる事ねえからな」


死神は来た時と違い、ゆっくりとドアを開ける。


「わざわざありがとうございました!」


パーシヴァルに背を向けながらも、左手を振って答える。


外では悪魔が待っていた。


「パーシヴァルは元気そうだったかァ?」


「まぁな。明日には出て来るらしい」


普段は喧嘩をしている彼らも、今日はそんな気になれなかった。


―――――――――――――




僕は誰だ?


俺はお前だ。


僕はお前じゃない。


ならお前は誰だァ?


僕は……僕だ。それ以外の何者でもない。



とある部屋の中で、項垂(うなだ)れる教皇の姿があった。



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