表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学園タロットカード  作者: チンピラゲーマー
37/50

37.女教皇の願い

時は昨晩。

学園内のとある場所。


「失礼します、審判(ジャッジ)です。アルカナ戦争の報告に参りました」


審判は部屋の奥へと歩みを進める。

そこには、一人の男が座っていた。


「こちらを」


審判は予め束ねておいた書類を渡した。

男は無言で受け取り、それに目を通し始める。


「今回の戦争で、特に浮き彫りになったのは教皇の『第二の人格』……とも言うべきでしょうか。法皇に極限まで追い詰められた時、彼に変化が見られました。

加えて、愚者の異常なまでの力。彼は直接能力を使用することはありませんでしたが、凄まじいオーラを放っていました。やはり注意すべきは、この二人かと思われます」


簡潔にまとめられた報告を聞き、男はにやりと笑う。

窓の外の月を見て、男は立ち上がるのだった。


――――――――――――――――


「わざわざここまで来てくれて感謝するわ、愚者」


「いえ、構いませんよ」


目の前にいる女教皇。

その眼は、全てを見透かしているかのようだった。


「ところで、今日俺はどうして呼ばれたんですか」


俺はここで、本題を引き出そうとする。


「少しお話がしたかっただけよ、そう身構えないで頂戴」


……そう言われてもだな。

四大アルカナの一角を前にして、落ち着いていられるかと言う話だ。


「そう言えば、法皇は事実上の失脚を余儀なくされたそうよ。敗戦が大きく響いたんでしょうね。お気の毒に」


女教皇がどんな人物なのか。

それを全く知らない俺でも分かる。


(今の『お気の毒』には感情がこもってない……)


「そうなんですか。そうなると、次の四大アルカナはどうなるんですか?」


敢えて俺は、疑問という形で話を繋げてみる。


「…………良い質問よ。流石だわ」


そしてそれが何故か褒められる。


「四大アルカナは、やはり特別なもの。基本的に空席なんてことは許されないわ」


「では、今の学園の中に次の候補がいると?」


「その席を狙っている者がいるがいる、と言った所かしら。実はね、学園の大きな規則違反をしたとして、停学処分でかつ、能力差し押さえになっていた生徒が帰ってくるのよ」


『能力差し押さえ』、女教皇が何気なく放ったこの一言に、俺はとても引っかかった。

一体だれがそんな事を出来る?


「つまり、その生徒が四大アルカナの席を狙っていると?」


「ええ、そう。彼も大アルカナの一人、『節制(せっせい)』よ」


節制…か。

学園の大きな規則違反、というのも気になる。今のうちに聞いておくか。


「では節制は、どうして停学処分になったんです?」


「学園内での能力の不正使用。それも、ただ口論になった生徒を大ケガさせたのよ」


いささか、『節制』という言葉の意味を誤解しそうになる。

どうやら少しズレてしまっているらしい。


「……なるほど。それで、どうしてその話を俺に?」


「彼は明日戻って来るのよ。それと同時に、明日にはこの学園に『転入生』もやって来るわ。貴方と同い年の男の子がね。

……まさか無いとは思いたいけれど、転入生が四大アルカナのカードを引いてしまう可能性だってあるの。そうなると…………分かるわね?」


「節制は力づくで奪いに来る…と」


本当に仮定の話でしかない。

その転入生とやらが、『法皇』のカードを引く?


それに、俺の中には疑問もまだ残っている。

節制はどうやって、四大アルカナのカードを手に入れるつもりなんだ?

先程も言ったように、転入生の事はあくまで仮定の話だ。


「ええ。その時は、一年生で最も影響力を持っているであろう『愚者派』にその子を守ってもらいたいのよ」


「俺は節制の能力も知らないですし、節制派があるのかすらも分からない。未知の事が多すぎます」


教皇と法皇のアルカナ戦争に巻き込まれた直後だぞ…………まだ闘うのか。

いや、これは仮定の話だ。仮定の話。


「そうねえ。貴方達にとっては苦労を強いる事になるでしょう。だけど、守ってほしいのよ……その子を」


青いその眼には、何故だろうか。悲しそうな感じをしていた。

吸い込まれそうな瞳をしていた。


「…………もし万が一、そうなっても期待はしないでください。それは俺達にメリットが無い話ですから」


そうとだけ言い残し、俺は立ち去ろうとする。

側近のシルヴァが扉から離れようとした時だった。


「本当にそうかしら?」


女教皇の一言。

俺はそれに耳を傾けなかった。


もし聞いていたら、俺は逆らえない。

何故かそんな気がしたからだ。


――――――――――――――――


「いよいよ明日だね、『戒斗(かいと)』?」


「ああ。とても楽しみなんだ。新しい学園での生活」


「いいなぁ~……お姉ちゃんも早くそっちに行きたいよ~」


「姉さんはまだもう少し、手続きがかかるんだったね」


「そうなのよ!まったくも~………感想聞かせてよね!」


「ああ、もちろんだよ」



あの場所に、確かに。

僕の求めているものはある。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ