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学園タロットカード  作者: チンピラゲーマー
35/50

35.誰が為に

時は遡る。

天使、悪魔、死神の三人はその場に倒れ込んでいた。


「クソがァ……逃しちまったじゃねェか」


「あのヤロー逃げやがった…次会ったら絶対殺す」


「何はともあれ、僕達の役目はこれで終了かな?」


三人が倒れている理由、それは『魔術』の長時間使用によるものだった。

体力を過度に消費する彼らの魔術は、彼らの身体を蝕んでいたのだ。


「オイ、動けるか」


死神がゆっくりと立ち上がる。


「当たり前だろうがァ、誰の心配してんだ」


「平気さ。やはり君も気になるのかい?死神」


この時、死神と天使の思惑は一致していた。


「ああ。だが、その前に俺達の攻撃、どこまで行ったのか見てえな」


「それもそうだね。それが終わってからにしよう」


「オイ、何の話をしてんだァ?」


「お前は黙ってついて来い」


死神に首根っこを掴まれ、悪魔が連行されてゆく。


「離しやがれ!オイ!!」


――――――――――――


天使達は、自分たちの攻撃によって崩壊した校舎の残骸を見ながら歩いていた。


「相当な威力だったんだね…」


「こりゃァエグいな」


そんなことを言いながら歩いていると、人が倒れているのを見つけた。


「あれは……パーシヴァルか!?」


急いで倒れている人の元へと駆け付ける。

その人物はパーシヴァルだった。


「オイ!大丈夫か!」


死神も声をかけるが、応答はない。


「気絶しているだけのようだ、息はある」


天使がパーシヴァルの首に、指を当てていた。

その場の雰囲気は一先ず安心のようなものに包まれていた。


「とりあえず、安全な所へ運ぼう。屋上にでも行こうか……」


次の瞬間、天使の目の前に一人の男が現れた。


悪魔、死神共に戦闘体勢に移る。


「貴方は?」


「…………」


男は無言でメモに何かを書き始めた。

天使は、渡されたメモの内容を見る。


『須賀 龍之介。剣術副主任で、アルカナ戦争の審判員。その男の子を預かりに来た』


「そうでしたか、それは失礼しました」


「何だって?」


「この方は、アルカナ戦争の審判員でこの学校の剣術副主任。須賀先生だそうだ」


片目を髪で隠している、寡黙な男。

彼はパーシヴァルを受け取ると、すぐにどこかに消えてしまった。


「人さらいじゃねェだろうなァ?」


「僕も彼はこの学園で目撃した事がある。恐らくその可能性は無いよ」


「んじゃあ大丈夫だろ。それより、早く行くぞ」


死神は大きく跳び上がった。

天使も続いて翼を広げ、上昇する。


「オイ、だから何なんだこれ?」


悪魔も状況が飲めない中、翼を広げて飛翔した。




屋上からは、学園中が広く見渡せた。

天使と死神の思惑、それは『愚者の戦闘をこの目で見る事』だった。


「なるほどなァ……そういう事だったのか」


辺りを見渡すとすぐに、異様な光景に気が付く。


「オイ、あれを見ろ!」


悪魔が指をさした先、そこには愚者、そして愚者と対峙する謎の男。


「何だあれ……?」


愚者の背中に見える、左右で色の違う『何か』。

三人の眼には、それがおぞましくも見えた。


だが同時に、それにとてつもない興味を持っていた。


「あれが愚者の……『魔術(マジック)』?」


「近くに見に行くぞ!」


死神はフェンスから身を乗り出し、愚者の元へ走り出した。


「おい!待つんだ死神!」


「俺達も追うぞ!」


死神の後に、悪魔も続く。


「全くキミたちは……」


天使も渋々後を追うのだった。


――――――――――――――――


得体の知れない力を前に、クラウドは笑っていた。

彼の戦闘に対する思い、それはただ『楽しい』だけのものでしかなかった。


「お前も力を見せてくれたンだからなァ、俺もちょっくら力出すかァ」


こう見えても、彼は言葉を慎重に選んでいた。

心理戦では間違いなく経験の差でクラウドが勝利していたと言って良いだろう。


しかし、彼がここまでして慎重に言葉を選ぶ理由。

それは、未知なる力に対する警戒からだった。


(下手に刺激しちまうと、アイツのあの力が暴走。なんて事も考えられっからなァ…めんどくせェ)


「お前の能力が見れるのか?随分とサービスが良いじゃないか」


「ハッ、フェアじゃねェだろ?俺はアンフェアな闘いは嫌いなンだよ」


途端に、クラウドの辺りを白い蒸気のようなオーラが漂う。


「さァ!勝負と行こうぜェ!どっちが生き残るのか楽しみだなァ!?」


「望むところだ…!」


愚者の力がより一層強まる。

張り詰めた空気が辺りを覆う。


それを見ていた天使は思った。


どうして、どうして?


誰が為にキミは闘う?

その力を使う理由は何だ?


キミの過去を知りたい。

どんな環境で君は育ってきたんだ?


疑問という疑問が脳内を走り回る。

なぜ、どうして。

こんなものは子供の台詞だと思っていた。


だが、分からないものは分からない。


近くにあるような真実が、本当は深い溝の下にある。

そんな気分がした。


「両者そこまでッ!!」


二人の衝突を未然に防いだのは、審判の鶴の一声であった。


「あァ!?」


「そいつは…」


審判が抱えていた法皇の姿を見て、両者は動きを止める。

張り詰めていた空気もいつしか、なんでもないようなものに変わっていた。


「法皇が敗北、この戦争は法皇派の敗北です。よってこれ以上の戦闘は認めない」


「そんな理由で納得するとでも思ってンのか?こっちはまだ勝負がついてねェ」


「どちらかの大将が敗北すれば、この戦争は終戦。事前に決められていて、合意されたはずですが?」


この状況は明らかにクラウドが不利だ。

なぜなら彼は法皇派でも何でもない、どこから来たのかも分からない者なのだから。


「チッ!」


クラウドは大きく舌打ちし、その場を後にする。

すぐに見えない場所へと跳ぶようにして去っていった。


愚者も背中の『何か』を消失させた。


「俺達の勝利、でいいのか?」


「ええ、もちろんですとも。教皇様が法皇様を負かしましたから、続行の余地はありません」


呆気ない勝利に、思わず愚者はその場に座り込む。

クラウドとは結局、決着が付かないまま。

それに能力も核心的な所まで把握出来なかった。


「俺としては不完全燃焼だな、全く…」


「それでは、私は事後処理へと移らせていただきますが故。ここで失礼します」


(本当に呆気ないな…大丈夫なのかこれ)


「愚者!!」


聞き覚えのある声が俺の名前を呼ぶ。

声の方を向くと、そこには天使、悪魔、死神の三人がいた。


「お前ら。無事だったのか」


「ああ、まあね。パーシヴァルは少しケガをしてしまったようだったが…」


そうだ、パーシヴァルも闘っていた。

突然の参戦だったのにも関わらず、あいつは良く頑張ってくれた。


「そうか…」


「それより、俺達は勝ったのかァ?」


「どうやらそうらしい。全く持って実感の湧かない勝利だ」


俺はゆっくりと立ち上がり、歩きだそうとする。

その時だった。


「愚者」


「ん、何だ?」


「キミはどうして…闘うんだい?」


不意な天使からの質問。

その質問は、『良い質問だ』と言わざるを得ない。

それ程に俺という人間の核に迫っているものだった。


だがしかし、それをこいつらに話すわけにはいかない。

と言うよりも、巻き込みたくないのかもしれない。


この学園という場所で巡り会ってしまったこいつらに。

俺という人間の過去を話すには、少々重荷すぎるだろう。


だから俺は敢えて、こう答える事にした。


「俺の学園生活の…平穏を乱す奴は邪魔だから。だな」


「……キミらしいと言えばキミらしい答えだ」


天使は何かを悟ったような顔をしていた。


そうなんだよ。

お前達にも話したいが、まだその時じゃない。


だからもう少しだけ、待っていてくれ。



こうして、運命の時は過ぎていく。

アルカナ戦争の夜は、また明けていくのだった。



お待たせいたしましたーーついに第2章アルカナ戦争編がこれにて幕を下ろしました。

次回より、新キャラ新キャラ新キャラ!でございます。ハイ。

もしかしたら、よく読んでくださってる方はお気づきかもしれませんが


「あれ?騎士団長は?」


忘れてませんよ!!書きます書きます。

ただ、もう少しだけストーリーを進めさせてほしいのです、後は分かるな?(威圧)


という訳で、これからもご愛読していただけると幸いです。

第3章からもよろしくお願いします!


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