31.神の力
時は少し遡る。
死神は、決め手に欠けていた。
相手のスピードに合わせる事が出来るようになったのは良いものの、致命傷を与える程の一打を決めることが出来なかった。
その点、悪魔はどうか。
悪魔は四枚になった翼の力を余すことなく使い、相手の逃げ道を着実に潰し、追い込んでいた。
だが、やはりこの二人の猛攻を躱し続け、反撃の隙を狙うカラスが一枚上手だった。
「クソッ!俺の攻撃が当たらねェ!」
悪魔も死神も、肉体的に限界が近づいていた。
激しく肩で息をする悪魔と、額の汗を拭う死神。
しかし、そんな二人の限界を吹き飛ばすかのように、天使が二人に声をかけた。
「時は満ちた!!二人共、こっちに来るんだ!!」
天使の頭上には、とてつもない大きさのエネルギー弾がその存在感を出していた。
「この短時間でこんなデケェもんを作ったってのか…」
実際、悪魔や死神が注意を引くことに成功していたのはほんの数分の事。
その間に天使は、全集中力を注ぎ込んで、この一撃を作り上げたのだ。
「で、どうすりゃァいい!?」
「簡単さ!君達の魔力を…ここに全て注ぎ込んでくれ!」
「…そういう事かよ!面白ぇ!!」
この状況下で、死神は笑っていた。
それはこれから起こる出来事に、自らの期待が膨らみ上がるのが彼自身は分かっていたからだ。
戦闘を楽しむ。
こんな事、いつぶりだろうか?
自分の力を出し切る。
こんな事は、アイツ以来だ。
高い戦闘能力を有している死神ですら、届かないと思った男。
そんな男の背中が、死神の目には写って見えた。
いつか超えてみせる、いつか勝ってみせる。
『愚者』という男に…!!
死神は足元に赤黒い魔法陣を出現させた。
その中心に、彼の持っている剣を刺す。
すると、彼の周囲を赤黒いオーラが包み、天使の頭上にあるエネルギー弾へと移ってゆく。
真っ白だったエネルギー弾は、あっという間に黒く染まってしまった。
「お前達は何を見せてくれるのだ?その最後の悪あがき…しかと見届けてやろうではないか」
カラスは剣を構え、正面から三人と向き合っていた。
「ヘッ!そんな余裕こいてられんのも今の内だぜェ!?」
悪魔は翼の力を使い、自らの波動をエネルギー弾へと打ち込む。
それを吸収したエネルギー弾は、更に大きくなった。
「いける…これなら!!『神の力』にだって匹敵するハズだ!」
天使、悪魔、死神。
この三人は強い。
愚者もそれは感じていた。
いつか自分を超えるんじゃないか。
この三人が力を合わせる事が出来れば…。
きっとそれは、『神』が持つ力にほぼ等しくなるはずだと。
この学園には、『神』という役職は無い。
だからこそ、だからこそ。
彼ら三人の引き出した力こそが、『神』と呼ぶにふさわしいだらう。
「いっけェェェェェェェェェェェェ!!」
三人で同時に、とてつもない大きさに膨れ上がったエネルギー弾を蹴り飛ばした。
その反動で三人が後方へと吹き飛ばされる。
エネルギー弾は地をえぐり、校舎を破壊し、そして対象の元へと一直線に進んで行った。
「ウォォォァァァァァァァァァ!!」
カラスは正面からそれとぶつかり合った。
そして、彼は悟る。
『今の自分の力では受けきれない』と。
そして最後に彼が選んだ決断は、
降参の一手だった。
あと何話かで、この大アルカナ戦争編は完結致します。
この章を第2章と設定し、その次からは第3章へと移ります。




