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学園タロットカード  作者: チンピラゲーマー
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27.クラウド

校内には、一人の男の足音だけが静かに響いていた。

白髪の好青年で、虚ろな目をしている。

青年はふと足を止めた。

彼の脳裏には()()()の記憶が、嫌と言うほど鮮明によぎっていた。


その時、向かい側から何者かが歩いてくるのが分かった。

事実、校舎内は真っ暗でほとんど何も見えない。

だが、彼には分かった。視覚的な意味ではなく、感覚的な意味で。


「……奇しくもこの場所で君と出会ってしまうとはね」


「フン……そうだな」


教皇、そして法皇。

二つの意志が、偶然にも巡り合ってしまうのだった。


――――――――


狩人が獲物を狙いを定める時、狩人は静かに忍び寄る。

隠者は静かに狙いを定めていた。


隠者の魔術、『透明化』とでも言うべきだろうか。

ほとんどの人間には彼の気配に気づくことすらできない。


……だが、今回の敵はどうやら違うらしい。


「ふぉっふぉっふぉ、そこにいるんじゃろう?分かるぞよ」


隠者は姿を見せない。

姿を見せた途端に相手が攻撃してくるという可能性もあるからだ。


「警戒されておるんじゃなあ。まあよい……ならばっ!!」


その場に、突如として風が吹き荒れる。


(ヤツの魔術……カ)


隠者は簡単な術式を組み上げて応戦する。

風向きを変え、強風を相手の方へと受け流した。


「ほお……中々やるようじゃ」


隠者は相手と距離を取るため、その場を離れようとする。

安全な場所から術式で、自分を探す相手を追跡し、確実な一手で仕留める。


「逃げよったか……?」


それが、隠者のやり方なのだ。


――――――――


「いつまで避けてんだ!!話にならんぞォ!?」


パーシヴァルはただひたすらに、敵の攻撃を避け続けていた。

もちろん、理由があっての行動だ。


(我が国でもそうだったように、見た事のない敵と一対一での戦いは危険が伴う。まずは敵の出方を伺い、こちらの攻撃が通る最高の瞬間を見極めなくてはいけない)


錬金術師(アルケミスタ)の役職を持つパーシヴァルだが、決定的な弱点がある。

それは、自らの力をまだ良く知っていないという点だ。


知っていない、というよりは知る機会がなかった。

何より、実戦は今日が初めてなのだ。


(さて……そろそろ仕掛けてみるとしよう)


パーシヴァルは両手を大きく横に伸ばした。

すると、両手にはそれぞれ一つずつの魔法陣が出現する。


「なんだなんだ?ようやく攻撃してくれんのか?」


それを胸の前で合成し、一気に水流として解き放つ。

この水流れはとても速い。恐らく相手は避けきれないだろう。


「何が起こった!?」


避けきれなかった相手は、右脚の一部に傷を負っていた。


(錬金術……とても不可解なものだ。ほんの僅かに空気中に含まれている水素を左手の魔法陣で、そして大気中に約20%程含まれる酸素を右手の魔法陣で取り込み、それを一つに合成することで水に変える。まだまだ私も理解できていないな……)


「チッ、間合いに入れない上に遠距離攻撃ときたか……面倒だな」


(あの様子では、相手はまだ私の能力が不完全だという事に気付いていない。早い所終わらせてしまいたいが……)



ここで、パーシヴァルは事前確認の時を思い出した。

教皇が提示した写真や少しの情報。

それらを全て合わせて、一つの答えを導き出す。


(名はカルシュ。役職は執行人。武器はその大きなハンマー。そして私が見た情報は、ハンマーには一定の間合いがあって、そこに入らなければこちらの攻撃は命中する。…………だが、だからと言って地道に攻撃し続ける道理は無い)


「…………ならばッ!!」


――――――――――――


「おお?愚者派の新戦力が動き出したか。ふむふむ…………おや?」


屋上から戦局を眺める審判の背後に、再び男が現れる。


「遅刻ですよ、ミナト、リュウノスケ」


「すまんすまん、道中でちょっと厄介ごとに巻き込まれてさあ」


「…………」


宿泊研修の時に、一度愚者と対面したことのある『六王寺 水斗』。

そしてもう一人、剣術の副主任である『須賀 龍之介』。


「さて、二人共。一つだけイレギュラーがありました」


その場に緊張が走る。

二人が腰に据えている刀に、それぞれの手を伸ばした。


「しかし、私の判断で続行という形にしました。ですが……」


「分かってるさ、不測の事態の時には俺達が出れば良い。そうだろ?」


「ええ、その通りです。後は見守りましょう――――」


審判は目線を戦場に変える。


「そのイレギュラーを……ね」


――――――――――――


さて……俺のターゲットはどこだ?

先程から所々で音は聞こえるが、全て他の奴らの戦闘によるものだ。


俺は一度高い所から展望することにする。

校舎内に入り、屋上を目指そうとした時だった。


「よォ、兄ちゃん」


…………上か!!


上を見上げた時、『何か』が落下してきたのが分かった。

すかさずそれを避け、後方へと跳ぶ。

大きな音と共に、『何か』は地面へ激突する。


闇の中で少し視界は悪かったが、何とか辛うじて避けられた。


「あァ……足が(かゆ)いわ」


「まさかお前…この高さから落ちても無事なのか」


そう、落ちてきたのは何かなんかじゃない。

『人間』だったのだ。


「まァな……ちょっくら身体がイカレちまっててよォ」


そしてこの時、俺は確信する。

コイツは……法皇派の人間じゃない。


「それとお前……誰だ?法皇派じゃないな」


「ハッハッハッ!!よく分かったなァ…褒めてやるよ」


「質問に答えろ、お前は誰だ?」


男は首をゴキゴキと鳴らしながら、気さくに答える。


「俺ァ『クラウド』ってんだ。覚えとけ」



――――――――運命の『時』まで、あと15分。


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