25.審判 『ジャッジ』
パーシヴァルと合流した俺達は、教皇の間を目指した。
既に、校舎内には人気が無かった。
静まり返った校舎内に、俺達の足音だけが静かに響いていた。
――――
「さあ、それじゃあ最終確認といこうか。エリアは学園内全体。とても広いから気を付けてくれ」
東京ドーム〇個分、という比較の方法をよく聞く。
俺個人の意見ではこの学園は1.5個分ぐらいはある気がする。
「それぞれが相手をする人物は分かっているね?」
教皇の最終確認に全員が頷いたり、返事をしたりする。
この様子を見る限り、特別緊張しているなんて訳ではなさそうだ。
「なら構わない。もうすぐで目的地だよ」
俺達は今、屋上へと向かっている。
そこは法皇が指定した場所だった。
「教皇、あとの二人はどうした?」
「彼らなら、もう既に向かっているさ」
俺達は一歩一歩、確実に歩みを進めている。
ゴールはどこだ。
勝利か、それとも敗北か。
俺の前を歩くこの男の眼には、一体どんなビジョンが写っている?
様々な思惑が交差する中、屋上への扉が開かれる。
そしてそれは、俺にとってとても大きな扉を開いてしまうのだった。
――――――――
屋上には、既に三人の人物がいた。
騎士団長、隠者、そしてあともう一人の男。
金色の髪に、紅の瞳。
背丈は平均男子の平均より小さいだろうか。
「紹介しておこうか。彼は『審判』、この戦争の審判だ」
「初にお目にかかります、愚者派様御一行。私が審判でございます」
やっぱり礼儀正しいのな。
堅そうな男だ…。
「公平なジャッジをよろしく頼む」
「大丈夫だよ、愚者。彼の目は誰にも誤魔化せやしない」
教皇がここまで言う事もあるんだな。
こいつの前でイカサマなんてしたらとんでもない事になりそうだ。
「騎士団長、隠者。法皇派はまだ到着していないのかい?」
教皇が問いかける。
「ええ。どうやら未到着の様ですね」
「イヤ……何人かは潜んでいるゾ」
……!!
その瞬間、全員に緊張が走ったのが分かった。
開戦まではあと数分。
既に、法皇派の何人かはこの学園内のどこかにいる。
「どうやら、そうみたいだねえ。ボスのお出ましみたいだよ」
次の瞬間、屋上のドアがゆっくりと開いた。
扉の奥には、一人の人影が見える。
言わずもがな、その人影は開戦の合図だった。
「やあ、法皇」
――――――――
「彼が法皇…凄まじいオーラだね」
「アイツとも戦ってみたかったが……まァいい」
「さっさとカラスってヤツ倒して、アイツの首取りに行くぞ」
三人とも、特別法皇に怯えている様子もない。
まあ流石といった所か。
…………それに、今回急遽参戦になったパーシヴァル。
真剣な眼差しで法皇を睨んでいる。
これは……やる気だな。
「どうやら揃ったみたいですね。………それでは、始めましょうか」
審判の一声が、その場に更に緊張感を走らせた。
教皇派は皆慣れているのだろうか、涼しい顔をしている。
「最終確認です。互いの派閥が勝利した後の事をお話しておきましょう」
「僕は法皇派の解体だ」
「私も同じだ。教皇派の解体を要求する」
教皇と法皇が言葉もなく睨み合う。
それぞれの眼には、静かに、しかし激しく闘志が燃え上がっていた。
「双方の要求確認は終了しました。それでは開戦致します……よろしいですね?」
「異論はない」
「分かったよ。それじゃあ始めよう」
教皇と法皇は、それぞれ反対方向へと歩き出した。
教皇はこちらに目配せをする。
それを合図だと判断した俺は、四人へ指示を出す。
「天使、悪魔、死神。お前たちはカラスを探せ。パーシヴァル、お前は俺と来い」
「健闘を祈るよ、愚者」
「あァ、任せとけ」
「死ぬんじゃねえぞ」
「それはこっちのセリフだ。生きて帰ってこい」
それぞれの意志を胸にして、三人は一気に飛び立つ。
辺りを見回してみると、既に教皇も法皇もいなかった。
………というか、意外とあっさりとした開戦だな。
「俺達も行くぞ、パーシヴァル」
「はい!参りましょう」
こうして、教皇派と法皇派のアルカナ戦争は幕を開けた。
学園の敷地内に潜む法皇派。
それを探す教皇派。
個人的な意見では、どうも法皇派の作戦に上手く乗せられているような気もする。
だがしかし、それも本当かどうかなんて事は分からない。
分からない以上、俺達から探し出すしかない。
――――運命の『時』まであと20分




