24.カラス
学園内、女教皇の間。
「報告致します。今夜、教皇派と法皇派のアルカナ戦争が開戦。それに伴い、全校生徒は18時には完全下校となっています」
「…分かったわシルヴァ。もう一つ頼みたい事があるのだけれど」
「はっ、何なりとご申し付け下さい」
「アナタも分かっている通り、愚者の力はまだ未完全よ。万が一、彼の命を危険に晒すような者がいればアナタが抹殺しなさい」
「……よろしいのですか?私が手を出す事で、女教皇派に疑惑の目が向けられる事にもなるでしょう」
「構わないわ、彼の命が最優先よ。言い訳なんて後でどうにでもなるわ」
「………背に腹は代えられますまい。承知致しました」
シルヴァは壁に立て掛けていた大剣を一本取り、それを大きく降ってみせた。
女教皇は紅茶を飲み、こう一言。
「……あのコは一体何を考えているのかしら?」
――――――――
「言ったよな?恩は必ず返すって」
「まあそうは言ったが………」
「随分と強引だねえ、愚者」
「…………愚者!?貴方が!?」
パーシヴァルは随分と大げさに驚いて見せた。
俺ってそんなに有名人だったか?
「『アルカナ戦争』の話聞きましたよ!!謎多き大アルカナ……一度でいいからお会いしてみたいと思っていたんですよ!!」
ぐっと俺の両手を握り、輝かせた両目をこちらに向ける。
あの戦争で、そんなに憧憬の目線を向けられるような事はしていないが。
そしてさっきから、どうも死神が具合悪そうにしている。
「あ…………ああ、そうか」
「そうでしたか………貴方が。この私、微力ながらお力添えさせていただきましょう!!」
そしてよく分からないけど、愚者派に仮加入。
何か……疲れた。
「何なんだァ?アイツは」
「どうやら、愚者に惹かれる何かがあったんだろうね……」
「ひとまず、だ」
教皇は足を組み、俺達に座るよう促した。
用意された席は4つ。
教皇にも、パーシヴァルという存在は流石にイレギュラーだったか。
「さて、今夜に行われるアルカナ戦争のために少しだけ事前確認をしておこう。君たちも知っているだろうが、法皇派には『執行人』という部隊がいる」
執行人、その実態はほとんど知られていない。
人数や顔はもちろん知られていないし、学園外部の人間だというウワサもあるぐらいだ。
「執行人の情報は学園内にはリークされていない、それもそのはずだよ。法皇は彼らを使おうとしないからねえ」
執行人を使おうとしない?まさかいつも法皇本人が戦っているとでも言うのか?
「まあ大丈夫だよ。僕は彼らの情報を持っている」
教皇がそう言った途端、即座に反応した人物が二人。
「早く教えやがれ」
「どんなヤツらなんだァ?」
死神と悪魔である。
天使は良いとして、この二人はとても不安である。
自我が強いが故、協調なんてことはできないだろう。
「まあそう焦るなよ……とは言え、悠長にしている暇もないか」
そう言うと、教皇は一枚の写真を取り出した。
そこには、顔に奇妙なお面をつけた人物が写っていた。
「この人物は執行人のトップである『カラス』。そのお面、少し先がとがっててカラスみたいだろ?」
「まあ言われてみれば見えなくもないけれど……」
「ンな事で名前付いちまうのか?」
まあね、と教皇は笑みを浮かべる。
「それはともかくだ。教皇、まさかとは思うがコイツの相手をしろと?」
「その通りだよ。君たち5人のうち……そうだね、少なくとも2人は必要だろう」
「「俺一人で十分だ」」
悪魔と死神がシンクロする。
お前ら息ピッタリじゃないか、二人で行け。
「見事なまでのシンクロ……!お二人のキズナはそれほどにも強いというのですね……」
感心したようにパーシヴァルは言う。
まあ少しズレてるような気もするけどいいか。
「キミたちだけではどうも心配だ、ボクも着いて行こう」
「あァ?お前は他の雑魚とでも戦ってやがれ」
「お~い、一応法皇直属の部隊だよ?」
割り込んできた天使に対し、強気な言葉を返す悪魔。
更にそれに対して釘を刺す教皇。
「まあとりあえずお前達三人でそのカラスとやらと戦え。残りの奴らは俺とパーシヴァル、後は教皇派の人間で片づけるしかない」
あまり長引かせるのも面倒なので、ここらで話をまとめておくことにした。
教皇によると、執行人は全員で五人。
騎士団長や隠者を含め、一人に対して一人が相手をするといった形だ。
あと、騎士団長の意向で騎士達はアルカナ戦争に参加させないようだ。
鍛え抜かれた騎士達は戦力になるだろうが、万が一騎士の中に内通者がいたら?という可能性を考慮したらしい。
無きにしも非ずだと俺は思った。
なんせ連勝が途絶えただけで生徒を利用して人を殺そうとした奴もいたんだから。
そうして時間は過ぎていき、いよいよ開戦の二時間前。
俺達は愚者の間にいた。
死神はイヤホンを耳に、フーセンガムを食べていた。
大きな風船を作っては器用にもしぼませて、また作っての繰り返し。
天使は鏡を見ながら自慢の金髪を整えている。
悪魔は……
「オイ天使、この『必要十分条件』ってなんだ?」
うん。いつも通りだな。
ちなみにパーシヴァルはまだ来ていない。
まさか校内を迷ってるんじゃないだろうな。
まあ時間にさえ間に合えば何でもいいが。
…………さて、いよいよ開戦か。
今思えば急に巻き込まれた戦争だった。
突然の教皇の来訪。
そして議会で判明した北条の事実。
謎の『錬金術師』、ウィル・パーシヴァル。
イレギュラーにイレギュラーが重なっている。
………まるで誰かが操作をしているかのように。
——――――
「もうそろそろかなっ」
一人の女が校舎の中を弾むようにして歩いていた。
「しかし驚いたなあ……まさか―――」
「空君が戦争を受けちゃうなんてなあ」
更新の期間が空いてしまい申し訳ありません!!!




