21.大アルカナ議会
「さあ、始めようか」
学園内の最も大きな会議室で、その議会は開かれた。
そう……。悪夢のような議会が。
—――――
事の始まりは昨日。俺の部屋に押しかけて来たあの男だ。
そう、白髪頭の……。
あの男が俺達に明かした計画は、法皇派をアルカナ戦争で倒すというもの。
そして俺達愚者派も、その渦の中へと巻き込まれていくのだった。
「冗談じゃない、面倒事過ぎるだろ」
「君と死神をくっつけるのを手伝ったのは僕だぜ?」
「それで恩を売っているつもりか……」
「いいじゃねえか、面白そうだからな」
死神、お前……。
「法皇だと?俺がブッ潰してもいいのかァ?」
悪魔、やめろやめろ乗り気になるな!
「ぶっ潰す役割は僕のだから、置いといてほしいんだけど」
「いいじゃないか愚者。教皇派はこれ以上にない、心強い味方だと思うよ」
「お前ら……あのなぁ……」
俺以外の3人は全員賛成。こいつらどんな頭してんの?
結局、俺の意思は尊重されず、教皇派に手を貸すことでその場は決定した。
もうこうなったら仕方ないと言うか、何と言うか。
「決まりだね。それじゃあ明日に議会を開くよ」
「議会……?何のだ?」
「4大アルカナは普通の大アルカナと違って、アルカナ戦争を行う時には22の大アルカナに予め話を通しておかなければならない」
「それってつまりよォ、全ての大アルカナが揃うというかァ?」
悪魔が教皇に質問する。
教皇はああ、と返事をして続けた。
「しかし、大体の大アルカナは代理を立てることが多い。下手な接触はしたくないのさ」
「なるほど。明日は俺と死神、それに悪魔を連れて行けばいいってことだな?」
「そう。天使には悪いけれど、君は出席する事は出来ない」
「分かりました、明日はここで愚者達の報告を待っています」
かくして、不本意ながら俺達愚者派は本格的な参戦を表明することとなるのだった。
—――――
そして数分前。
会議室の中には少しずつ人が入って来た。
彼らも大アルカナなのか、はたまたその代理人なのか……。
そして、俺にとって本当に意外だった人物が姿を見せた。
「あいつは…北条 悠馬?」
俺のクラスのクラスリーダー、北条 悠馬だった。
北条もこちらに気づいたようで、おお!愚者かと手を振った。
「あいつはまさか?」
隣に座っていた教皇に話しかける。
「ああ、彼は大アルカナ11番。『正義』だ」
は!!?おいおいおいおい、聞いてないぞ?
だから言ったんだよなあ……北条の役職聞いてないな、って。
「初耳だ……」
北条は既に着席していた。
そんな時、ふと思った事がある。
昨日、教皇は『22の大アルカナ』と言った。
しかし、0番の俺を合わせると23になるはず。
俺は聞いてみることにした。
「おい」
「次は何だい?」
「ここに来るはずの大アルカナの数って23じゃないのか?」
「いいや。22番の『世界』が空いているんだ。だから22なんだよ」
大アルカナの席を開けてもいいのか、と思いつつ他の大アルカナ達を待つ。
そう言えば、女教皇と戦った吊るされた男はどうなったんだろうか。
そして円形になっているこのテーブルで、俺の向かい側に座っている女。
その後ろにいる大男。あれはどっかのお嬢様か?
そうして、会議の開始時刻になった。
しかし依然として空席の椅子は多い。
「やはり今日も女帝派は来ない……か。まあいい。さあ、始めようか」
「忙しい所集まってくれてありがとう。さて、早速だが本題に入らせてもらう」
教皇はゆっくりと立ち上がった。
そして辺りを見回してから一言。
「教皇派から法皇派への宣戦だ」
教皇の視線の先には、眼鏡をかけた男が鋭い目つきで座っていた。
(なるほど。あの人が法皇か……)
「……質問させてもらおう。何故このタイミングで俺に宣戦を?」
「僕も触発されてしまったのさ、後輩達のアルカナ戦争にね」
「戯言は不要だ」
「つれないなあ?まあいいや。宣戦する理由なんて、いつだって単純だろ?」
教皇は机の上に置いてあった資料を一枚手に取った。
それを両手で勢いよく引き裂いて言う。
「教皇派が勝利した暁には、法皇派の解体を要求する」
「ほう……邪魔者を消しておこうと。そう言いたいのか」
法皇も静かにその場に立ち上がった。
眼鏡の位置を直し、こう一言。
「面白い……良いだろう」
「決まりだね」




