13.宣戦布告
ここはどこだ?
辺りを見回すと、そこには一面の花畑が広がっていた。
少年は、その花畑の中に一人の少女がいることに気がついた。
不思議そうな顔をして、しばらく少女を見つめていると少女もこちらに気がついたようだった。
無邪気に笑い、こちらに手を振る髪が橙色の少女。
少年は駆けだそうと思った。
しかし、足は動かない。
まるで何かに抑えつけられているかのように。
すると、辺り一面の花畑は突如として火の海に変わっていた。
あの子はどこだ——あの子は無事か!?
焦燥を覚えた少年は、今一度辺りを見回す。
何も見つかることは無かった。
やがて、全てを燃やし尽くす炎が彼をも包んでいく———
—————
学園の屋上には今、二つの翼が現れていた。
それらは人間が出現させたものであり、人工的なものではない。
対峙する天使、悪魔、そして死神。
「よお、久しぶりだな雑魚共」
死神の挑発。
頭に血が上りやすい悪魔は乗ってくるだろうと考えたか。
「お前は間に割って入っただけだろうが」
どうやら悪魔は天使が想像していた以上に冷静なようだ。
悪魔に視線を送り、次は天使が話し始める。
一秒でも長く時間を稼ぎ、彼の登場を間に合わせるため。
「それで……ボク等の前に現れた理由は何なんだい?」
分かり切ったことだが、それを敢えて質問する。
死神は灰色に染まった髪をかきながら気さくに返答する。
「決まってんだろ、お前らを殺しに来た」
「お前が負けるって事は考えなかったのか?」
死神はまさかと高笑いを上げる。
どうやら完全に天使や悪魔を下に見ているようだ。
大アルカナ、死神。
今まで学園の中で目立った行動は起こしていなかったはずだ。
それがここに来て、満を持して大アルカナである悪魔の首を取りに来た。
彼の狙いは何だと思考する天使。
それに対し、悪魔は正直我慢の限界だった。
目の前にいる死神という敵をこの手で……倒したいと。
「なァ天使、俺が殺っちまっちゃダメなのか?抑えンのも辛いぜ」
「もうすぐ彼が来るはずだ……」
天使は死神に気づかれないよう、周囲に視線を集中させる。
しかし、目に見える範囲で彼はいない。校舎の中か?
「んじゃまあ……悪く思うなよお前ら」
死神は右手を横に出し、地面から大鎌を取り出した。
それを軽く振った後、戦闘態勢に移る。
頼むよ———騎士君。
天使は一人の騎士を名乗る男へ祈る。
————
天使と悪魔は空へ飛翔し、空中からの攻撃を試みた。
しかし、悪魔の波動や天使のエネルギーの弾丸も、死神には未来が見えているかのように躱されてしまう。
「チッ、ラチがあかねえなァ」
「まるで彼は僕らの攻撃を読んでいるかのようだね」
天使がそう言うと、死神はにやりと笑みを浮かべる。
右手に持つ大鎌を大きく一振り。次の瞬間大気をも切り裂く斬撃が走る。
天使と悪魔は辛うじてそれを避け、反撃を叩き込む。
しかあし天使の放った一撃を死神は軽々と切り裂いた。
「もういいよお前ら。次で終わりだ」
失望したような表情で死神は嘲笑った。
そして、死神を中心に突如として闇が覆う。
やがてその闇は死神の右手、大鎌に纏わりついた。
「何だあれは……?」
「アレを喰らっちまえば流石にヤベェぞ」
「確かにそのようだね……」
「終わりだよ、お前らは」
死神が大鎌を大きく振り上げようとした、まさにその時だった。
ガタン!!という大きな音とともに、屋上のドアが開く。
そして出てきたのは————
「君は!!」
「遅ェぞ!!」
「待たせたな」
そう、『愚者』だった。
「ああ?誰だお前…」
睨み合う死神と愚者。
死神は愚者の言葉を待っている様だった。
「俺は『騎士』だ。騎士はこの学園の争いの仲裁が出来るからな」
愚者の腰には騎士が使う剣が見えた。
騎士のこの役割は事実であり、以前に騎士団長から聞いたものだ。
「あっそ、じゃあ死ね」
死神は天使と悪魔に向けるはずだった攻撃を愚者に向かって放つ。
無数の影が愚者を襲った。
それに対し愚者は剣を抜き、死神の攻撃を退けるように剣をふるう。
「そうか…その身体能力、んでお前のその面。お前、『愚者』だな?」
天使や悪魔が驚きの表情を浮かべる。
死神の口から出るとは思ってもいなかったその単語に、俺は少し反応した。
「だったらどうする?」
俺の返答を聞くや否や、死神は笑みを浮かべた。
「ハッハッハッ!!面白え…。なあ愚者、俺に考えがある」
「聞いてやるつもりはない」
「まあそう言うな、こんなのはどうだ?」
次に語られる死神の考え。
それは後に俺の学園での生活を大きく狂わせる物となる。
「愚者と死神の大アルカナ戦争だ」




