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不器用な冒険者、最凶の遺物を拾う  作者: 夏悠


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7/11

7話 洞窟調査なのに異変に巻き込まれたんだが

来た道を戻りながら洞窟内の形を、地図に書き起こしていく。

そんな中、洞窟内の途中に分岐した道があることに気づいた。

(こんなところに道があったのか、行くときは反対側に見えてたから気づかなかったのかな?)


「みんな、ここを見て、道が分岐してる」

僕の声にみんなが足を止めてこちらを振り返る。


「道? そんなの見えないけど。目でもおかしくなったんじゃないの?」

ミュナは変なものでも見るような目で、こちらの問いかけに答えた。


「いや、でもたしかにここに道があるんだよ。ほら。」

そう言って、見つけた分岐路を通り抜けて見せる。


「待っ、待ってください、そっちは壁…」

メリーの制止も間に合わないうちに、僕は通路の先に足を踏み入れた。


「えっ、嘘でしょ!?」

「壁を貫通していったぞ…ロスト、大丈夫か!?」


壁…?

何のことだろう。よく分からないが、みんな揃って驚いたような顔をしている。

「僕は大丈夫、調査するならこっちの道も調べたほうがいいんじゃない?」


「そうか…それは良かった。だがそうは言ってもここは壁だぞ?」


困惑しているフロウの横から、ミュナがこちらの通路の方に近づいてきた。

「ちょっと待って、私が調べてみるわ」


「これ、確かに高度な偽装の魔術が掛けられてる。こんな術式を見破ったなんて… ロスト、あなた一体何をしたの?」


「いや、普通に道が分かれてたから通ってみたんだけど… 偽装の魔術なんてあったのか?」


「…は? 気づいてなかったの!? ますますわけが分からない…」

ミュナがため息をつく。


「ともあれ、ロストが道を見つけてくれたんだ、俺も何が起きてるのかよく分からないが、ひとまず進んでみよう。おお、本当に通れたな!」


「ええ、色々と聞きたいことはあるけど、今は聞かないでおくわ」

そう言って、フロウとミュナがこちらの通路へ入ってきた。


「わわっ、待ってください…ええぃっ!」

遅れてメリーが意を決したような様子でこちらに飛び込む。


通路の先はかなり複雑で、いくつも通路が分岐し、マッピングしていなければ簡単に迷ってしまいそうだ。


「きゃっ! す、すみません…」

近くを歩いていたメリーが唐突に何かを避けようとして壁にぶつかった。


「おっとと、どうしたの?」


「いえ…大きな、虫みたいな…いえ、何でもないです…」


「そう? 何か困ったら言ってね、僕じゃあんまり役に立たないかもしれないけど…」

「あっ、ありがとうございます…」


ちょっとよろけただけかな?

何かを避けているような気がしたけど…気のせいだろう。


「…何か人の声がしないか? 右手の通路の方だ」

フロウは足を止めて、声が聞こえた方へ視線を向ける。


「心配なら行ってみたらいいんじゃない?」

ミュナは肩をすくめ、つっけんどんに答えた。


フロウに示した通路を抜けて行くと、少し開けた空間に出た。


「あっ、見てくださいっ、あそこに人がいます!」

メリーが指し示した先に、傷を負った冒険者らしき人物が倒れていた。


冒険者のもとにメリーが慌てた様子で駆け寄る。

「あわわ、大丈夫ですか? どうしよう、私の魔法でなんとかなるかな…」


「ぐっ、うう…」

見た感じ、腹部に一か所の切り傷があり、身体のあちこちにも魔物の攻撃を受けたような痕がある。このまま放っておけば危ない、僕でもそれを判断できるくらいの状態だ。


「ひっ…! い、今助けますからねっ」

メリーは少し怯えた表情をしながらも、冒険者の傷口に向けて治癒魔法の詠唱を始めた。


治癒魔法によって冒険者の傷は数十秒で塞がった。

まだ苦しそうではあるが、動くことくらいはできそうだ。


「すごいな、多くのパーティと組んできたが、ここまで早く治る治癒魔法なんて初めて見た」

フロウが感心したようにつぶやく。


「あっ、ありがとうございます。少しは、活躍できたでしょうか…」

メリーは少し気恥ずかしそうに俯いている。


「ううっ…ハッ、お前たちは?」


「俺たちは冒険者だ。洞窟の調査依頼を受けて来た。あんた、かなりひどい傷を負っていたみたいだが、一体何があったんだ?」


「そうか…助かったのか。あんたたちが治療してくれたんだな」

「まず何から話したもんか…そうだ、俺たちは巨大な虫に出会ったんだ……奴には攻撃しても、まるで幻のようにすり抜けて当たらなかったんだ。それだけじゃない、何故かは分からないが、いきなり仲間に切りつけられたんだ…! さっき治してもらった腹の傷はその時に付けられたんだ…」

「まだ、俺の仲間が戦っているかもしれない… 助けに行かなければ…」

冒険者はそう言って立ち上がり、歩き出そうとする。


フロウは冒険者の肩を押さえて落ち着かせる。

「待て待て! そんな状態じゃ返り討ちに遭うのがオチだ! 俺達が様子を見てくるから、そいつのいた場所を教えてくれ」


「ああ、分かった。すまない、任せるような形になってしまうが…」

冒険者は僕たちが作った地図を見ながら、危険な魔物に遭遇した場所を指し示す。


「ふーん。ここ、結構近いわね。これならすぐ行ってこれるんじゃない?」


「そうだな、一刻を争うかもしれない。急いで向かおう」

フロウは真剣な面持ちで目的地へ移動を始める。


…なんだか凄いことになってきたぞ。

これって僕もそのヤバい魔物と戦う羽目になるんじゃ…

やっぱり、あの時分かれ道があるなんて言うんじゃなかったな…


僕は内心戦闘にならないようにと願いつつも、3人の後ろをついていく。

そして、前方から岩壁が砕けたような音が響いてきた。


「今の聞こえたか!? 急ごう!」

「ええ、急ぎましょう!」

「本当に大丈夫でしょうか…」

フロウの声を合図に、三人は音のした方へと駆けていく。

戦いたくはないが、離れると危険なのでついていくしかないだろう。


ああ、これはマズい。絶対面倒なことになる。


―――目の前の光景を見て僕は後悔した。


再び開けた空間に出た僕たちが目にしたのは、派手に打ちのめされて怪我を負った数名の冒険者だった。

その先には、その惨状を作り出したであろう、虫のような魔物が目にも留まらぬ速さで動いていた。


やっぱりマズいじゃないか…!

7話を読んで頂きありがとうございます。

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