6話 休日が指名依頼で潰れました
「じゃあ、行ってくるよ。エリシアも気をつけて」
(やりすぎないように、って意味だけどね)
「私は問題ない、主様こそ注意して」
「ああ、できるだけ戦わないように立ち回っておくよ」
僕はエリシアと別れ、例のEランクパーティが待っているという場所に向かった。
集合場所に到着すると、既に3人の冒険者が集まっていた。
あの人たちが今回同行するEランクの冒険者か。
僕が3人に話しかけようと近づいていくと、そのうちの1人がこちらに気づいた。
剣を装備した男は、気さくな様子でこちらに話しかけてきた。
「君が今回の依頼に代理で参加してくれる冒険者だよね?ちょうどよかったよ、参加予定の1人が欠けて困ってたんだ。俺はフロウ、よろしくな!」
「ふーん、あなたが代理?聞いた話だとGランクらしいけど本当に務まるのかな。まあいいや、私はミュナ。魔法使いよ」
黒髪の少女は少し疑うような目でそう言った。
「まあ、ちょっと頼りない気持ちもわかるけど足を引っ張らないようにするよ。僕はロスト、よろしくね」
…正直言って、本当はすぐに帰りたい。
あと自己紹介してないのは、あの金髪の少女か。ちらっとそちらの方を向くと動揺したような様子で口を開いた。
「あっ、えとっ、私はっ…メリーです。皆さんの傷を癒したり、そのっ、援護も頑張りますっ」
そう言うと、メリーは俯いて黙り込んでしまった。
一通り4人が喋り終わった後、フロウが口を開く。
「よし、みんな自己紹介も終わったことだ、早速、目的地の東の洞窟へ向かおうか」
道中。
「そういえば、ロストの戦闘スタイルはどんなもんなんだ?洞窟に入る前に聞いておきたくってな」
「戦闘スタイルかぁ、うーん、これといって決まったスタイルは無いんだよね」
「そうなのか、だとすると魔法を使ったりするのか?それとも何か武器を使っているとか」
うっ…実際に僕は弱い、ここは正直に言うしか無いだろう。
「あー、えーと、魔法はあまり適正が無いんだ。武器はこれを使ってる」
そう言って以前、武器屋で買った安物の短剣を取り出す。
「そんな装備で戦うつもり?しかも魔法も使わないって、本当に戦えるのか不安なんだけど…」
ミュナは呆れたような表情をする。
本当に、どうすんだよこれ、Eランク冒険者が戦うモンスターなんてまともに相手出来ないって…
「まあ大丈夫だ、危なくなったら俺たちがフォローする。それに今回は治療ができるメリーもいるんだからな。もし、ロストが傷ついたらメリーが治してやって欲しい」
「…っ、はいっ!頑張りますっ」
そんな感じでフロウが僕たちの間を取り持ってくれた。
今回のパーティはみんな比較的優しくて良かったとホッとする。
そんなこんなで話しているうちに、目的地である東の洞窟に到着した。
フロウは洞窟に入る前に立ち止まる。
「みんな、もう分かっていると思うが、今回の依頼内容について再確認しよう。今回の依頼はこの東の洞窟の異変の調査とその解決だ。行方不明者も出ているし、以前訪れた冒険者によると洞窟内の構造が変わっていたこともあるらしい、十分注意してくれ」
「うう、大丈夫でしょうか…」
メリーは不安そうに呟いている。
「さっさと原因を見つけ出して終わらせましょう。不安なのはロスト、あんたね。本当に気をつけなさいよ!」
「…善処するよ」
早速、僕たちは洞窟の中を進んでいく。しばらく進んだ所でフロウは何かを見つけ立ち止まった。
「これは魔物の足跡だね。ただ不可解な点があって、進む方向がバラバラなんだ。気をつけて進もう」
「ふーん、魔物が錯乱でもしたのかしらね。」
フロウは小さな痕跡にも気づいて見せた。すごいな、Eランク冒険者になるとここまで洞察力も上がるのか。ミュナも随分落ち着いた様子だ。
しばらく進んでいると前方から複数の足音が聞こえてきた。
フロウは剣を構え、足音が聞こえてきた方に視線を向ける。
「前から5体魔物が来ているな、微かだが、後ろにも数体の気配がある。前は俺がやるからミュナは後ろを頼む。」
「後ろ?確かに来てるみたいね。こっちは任せなさい。」
ミュナは杖を構え地面に魔法陣を出現させた。それは時間を少し置いて地面に溶けるように消えた。
「あ、あの…私は」
メリーの問いかけに素早くフロウが答える。
「メリーはもしも怪我人が出た時のために備えておいてくれ、ロストはメリーが襲われないよう守ってくれればいい」
「わかった、僕はここで守っておくよ」
こんな場面でいうのもアレだが、前線で戦わなくてホッとしている。
正面から来たのは5体のゴブリンだった。その手には粗末な武器を待って耳障りな声を上げて襲いかかってくる。
フロウは落ち着いた様子で前へ踏み出す。1体の脳天を貫き、後ろに飛び退きながら2体のゴブリンを横薙ぎに両断した。
続けて残りのゴブリンに落ちていた武器を投げて仕留める。見事な手腕だ、これは僕が出る幕も無いな。
一方、ミュナの方は想像以上にカオスな様相を呈していた。数体のトレントにゴブリン、魔獣型のモンスターがこちらに向けて錯乱した様子で無造作に押しかけてきた。
「うわ…思ったより数が多っ!何これ!?」
魔法陣が消えた辺りを敵の群れが通る。すると自動で魔法が作動し、無数の土柱が地面を貫き、魔物たちの殆どを貫いていく。
しかし、そのうちの数匹はすり抜けてしまう。
「ちょっと!こっち来ないでよ!…なんてね」
ミュナは何の前触れもなく目の前に氷の槍を生成したかと思うと一瞬で迫った魔物を貫く。
最後の魔物が倒れ、辺りがようやく静かになった。
「…終わったわね。それにしても、こんな無造作に魔物が群れてくるなんて。まるで何かに引き寄せられてるみたい」
「やっぱり、この先に何か異変があると見て良さそうだ。何があるか分からない、より一層注意してくれ」
フロウが注意を促す。
進み続けていると、行き止まりに突き当たる。
「行き止まりか…おかしいな、さっきまでの道に分岐は無かったはず」
フロウは困ったように壁の方を見ている。
「確かに変ね、でもこれ以上調べられるところがないなら一旦帰りましょう」
「仕方ない。調査内容として、この洞窟の中をマッピングしながら帰ろう。メリーかロストにお願いしたいんだけど」
あまり役に立っていないし、マッピングくらいはやっておかないとな…
「僕がやります」
「いいのかい?ではお願いするよ」
こうして僕たちは来た道を引き返すこととなった。
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