4話 なぜか刺客に襲われてるんだが
冒険者登録試験ではとんでもなく目立ってしまったが、ともあれエリシアは晴れて冒険者として認定された。
エリシアの実力は常軌を逸しているが、Bランク以上になるためには実績が必要だ。
そのため、エリシアは実績がない現状で最高到達点のCランクと認定された。
しかし、これで良かったのかもしれない。
より高いランクとして認定されでもしたら、より目立ってしまうところだった。
「Cランクになった。もっと私を頼るといい」
エリシアは少し得意げな様子で胸元をぽんと叩く。
「確かにエリシアは強いけど、ちょっと目立ちすぎるから……できるだけ大人しく立ち回ってね」
「む、了解。主様」
不機嫌そうな顔をしつつもエリシアは承諾した。
「それはそうと、なぜ主様がGランク? 納得いかない。ランクを上げさせてくる」
そう言って、エリシアは受付へ向かって一直線に歩き出そうとする。
「待って待って、行かなくていいから! これには色々訳があるんだって」
慌てて止める僕。
「だとしても主様がGランクなのは明らかにおかしい」
「いやいや! 別にエリシアは強いけど、僕は実際まだまだだからね!? 魔法も使えないし…!」
必死に引き止めていると、困惑気味の受付嬢が苦笑いを浮かべながら声をかけてきた。
「あ、あの……ロストさん。エリシアさんがCランクになられましたので、早速お二人で依頼を受けられてはいかがですか?」
「あ、はい。ぜひそれでお願いします! 何か簡単なのを探してみます!」
「それでしたら、こちらの依頼はどうでしょう。森での魔物退治です」
渡された依頼書は、森でのゴブリン討伐(Fランク相当)。
本来Gランクの僕は受注できないが、Cランクのエリシアに同行する名目で行くのなら問題ないらしい。
そして、森の中。
「ギィッ!?」
襲いかかってきたゴブリンの群れに対し、エリシアはただ小さく手を一振りにしただけだった。
ドゴォォォン!!
森の一部が吹き飛び、肉片すら残らず消滅する。
「依頼完了。主様の手を汚すまでもない」
「ねえエリシア、Fランクの依頼で地形変えるのやめてもらえる……?」
胃の痛みに耐えながら依頼を終え、ギルドへ戻ろうとした、その時だった。
――ズズズズ……ッ!
突如、僕たちの頭上から赤黒い不気味な魔力の壁が垂れ下がり、周囲の空間を取り囲んだ。
「主様、気をつけて。強力な結界で閉じ込められた」
その頃、木々の影では黒装束の男が醜い笑みを浮かべていた。
(組織から渡された高級魔導具、空間封鎖の呪檻……! どんな大魔導士とて、この絶対不可侵の結界からは脱出できな――)
「何だって、本当か!?」
(試しに触れてみるか……)
僕は気になって、目の前の禍々しい魔力の壁にペタリと手を触れた。
――バチッ!
「うわっ!?」
一瞬、静電気のような痺れが走る。
次の瞬間、パリィィィィン!!とガラスが粉々に砕け散るような音が森に響き渡った。
赤黒い結界は、まるで最初から存在しなかったかのように消えていく。
「っとと…あれ、エリシア。これ大したことないんじゃないか?」
「触れるだけで構成術式を崩壊させるなんて。やはり主様は凄い」
「いやいや、僕にそんな芸当できるわけないって。多分何かのまぐれだよ」
「主様は謙遜しすぎ。もっと誇っていい」
そんな会話をしている最中、後ろから人影が襲いかかってきた。
「お、恐ろしい男だ……だが死ねぇぇ!」
「主様、伏せて」
「えっ…?」
言われるがまま地面に平伏した僕の頭上を、凄まじい熱量と圧力が通り過ぎた。
エリシアの手から放たれた青白い光線が、襲いかかってきた男を後ろの木々ごと焼き払う。
「……は?」
「ごめん主様。でも危なかったからこうするしか無かった」
待て待て待て!
完全に人間一人を塵一つ残さず消し飛ばしたよね、大丈夫なのこれ!?
「ひぃぃ!?」「化け物だー!」
「怯むなっ、行くぞ!」
悲鳴を上げながら襲いかかってくる他の暗殺者たちを、エリシアは無表情のまま薙ぎ払っていく。
「何なんだよ、こいつら……っ!」
「分からない。でも、こいつに吐かせればいい」
エリシアは、唯一息のある男の襟首を掴み、ズルズルと引きずってきた。
「ぐっ、うう……」
「目的を話して、私たちを狙う理由は何?」
「ひ、ヒィ! 組織の命令だ……お前たちを」
直後、エリシアは男の顔面を迷わず殴りつけた。
ドカッ! ズドン!
「ごほっっ!?」
「待っ、エリシアやめっ! 今喋ろうとしてたでしょ!?」
エリシアは男の口を塞ぐ勢いで、容赦なくボカボカと拳を叩き込んでいく。
「どこの組織の差し金?」
「がはっ……話す、わけ……っ」
「答えないなら、殺すだけ」
「ダメだって!! 殺したら情報が入ってこないじゃん!!」
そのまま男にとどめを刺そうとするエリシアを、僕は慌てて止めに入る。
その後もエリシアの尋問(という名のリンチ)は続いたが、男は血を吐いて白目を剥き、気絶してしまった。
完全にボロ雑巾だ。
(これは……本格的にヤバいことに巻き込まれてるかも……)
僕は頭を抱えながら、気絶した男を担ぎ、重い足取りでギルドへ向かうのだった。
第4話を読んでいただきありがとうございます。




