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幕間 マモンの日常と裏側

 ここは誠の精神世界と言うべき場所、そこに『強欲』ことマモンはいた。厳密に言えば意識が存在していると言うのが正しいだろう。

 マモンは大抵のことでは誠へと干渉はしない。するとすれば、他の邪神が近くにいる場合か話しかけられた時くらいだ。

 だから基本的に一人で黙っている。一人なのは封印されていた時から慣れているので大した苦ではない。

 今日もその例に漏れずに同じように過ごす。そのつもりだった。


「……誰だ」


 何もいないはずの虚空に向けてマモンは話しかける。

 本来なら他に誰も居ないはずのこの場所で、マモンは何者かの気配を感じた。


「……あら、バレてしまいましたか。大丈夫ですよ〜、悪い人じゃありません。そもそも人かどうかも怪しいですけどねっ」

「……誰だ?」


 マモンはその人物に懐疑の声を向ける。

 それは人形のような白い肌に、さらに白い羽衣を着た女性に見える。しかし、生身の人間はこの世界には居られないはずだ。


「あれれ? もしかして私の事忘れてます?」

「貴様の事など知らぬ。疾くこの場から立ち去るがよい」

「いいえ、何処にも行きませんよ。それに初めにここにいたのは私なんですから、出ていくなら貴方が出て行ってはどうですか? ()()()さん?」

「……貴様に名乗った覚えはないが、何処で知った」


 いきなり名を呼ばれたマモンは少しばかり動揺するが、それでも引こうとしない。

 しかし、その問いはどうやら謎の人物を困らせるものだったらしく、首を傾げたりして考える素振りを見せていた。


「んんん、この時点で言っていまうと未来が変わってしまうかもしれないんですがねぇ……でも言わないと納得して貰えそうにありませんし」

「当たり前だ、主は我にとって無くてはならない存在だからな。そこにいる異物となれば尚更だ」

「異物、ねぇ。ある意味では的を得ている表現ですね、ですがハズレです。なら、私のことは守護者(ガーディアン)とでも名乗っておきましょうか」


 守護者(ガーディアン)と名乗ったその人物は、柔らかく微笑んだ――ように見えた。


「それで、何の用だ。まさか挨拶をしに来た、という訳ではないのだろう?」

「いえ、今日は挨拶だけのつもりだったんですが――あっ、嘘! 嘘ですからそんなに殺気を振りまかないでっ!」


 謎の守護者(ガーディアン)と言っている存在に腹を立てていたマモンは殺気を軽く飛ばした。それだけなのにこのザマだ。

 正直こっちとしてもやりづらいが、話が進まないので直ぐに止める。


「……消えるかと思いましたよ、割と真面目に。と、そうではなく、私の用事は確認に来ただけですよ」

「確認?」

「えぇ、どうやら記憶が()()()()()改竄されているようだったので」


 守護者(ガーディアン)が言っているのは誠のことだろうか、それともマモンのことなのだろうかその眼からは読み取れない。


「それは我のことか、それとも主のことか?」

「誠さんのことでは無く、貴方()のことです」

「それはどういうことだ」

「残念ですがこれ以上喋ると消されてしまいかねないので無理ですね」


 どうやらそれ以上は話せないらしい。上とやらが制限を掛けているのだろうか。

 マモンにはそれを知る術は無いので仕方なく諦める。この手の相手は何を言ってもダメだと知っている。


「そうか、用件が聞けただけでも良しとしよう」

「そう言って貰えると助かりますかね〜。それではっ、用は済んだので帰りますね」


 その言葉で終始マイペースだった守護者(ガーディアン)は消え去った。

 再び平穏が訪れた空間でマモンは考える。


 我の記憶は何なのだろうか、何が嘘で何が本当なのだろうか。少なくとも主と出会ってからの記憶は本物だと思いたい。それに何千年という時間を生きた邪神の記憶を全て洗うなんて無茶な話だ。


「だがしかし、気には留めておくとしよう」


 そうしていつも通り主を観察することにした。



 ◇



「神様〜、何処ですか〜! 貴女の忠実なる下僕が戻りましたよ〜」

「五月蝿いッ! 私が今何をしてると思ってるのッ!」

「何やっているんです?」

「魔法生物ケサランパサランの最新話を見ているのよ! 次邪魔したら消すからね」

「はっ、はい……」


 威圧的な態度で声を荒らげる少女――もとい守護者(ガーディアン)に神様と呼ばれていた人物は床に敷かれた布団にダイブして、また何も無い空間に映し出されるアニメーションに視線を向けた。

 時折『いけー!』とかなんとか聞こえてくるが、気にしていたらこの職場はやっていけない。

 もう慣れたものだと感慨深く思いながら、そのアニメーションが終わるのを隣で一緒に眺める。というか、そうするしかない。自分の時間を邪魔された時の神様は本当に怖いのだ。


 エンディングが終わって神様は背筋を伸ばして立ち上がる。

 見た目としては10歳くらいだが、実年齢なんてあってないようなものだ。しかし、背格好相応の姿をするようにしているらしく、Tシャツとホットパンツといったラフな格好だ。

 これでも神様なのだから敬いを持ってだとか色々あると思うが、この神様はそういうのは嫌いらしいので堅苦しい言葉は使わない。


「それで、どうだったの?」

「どうやら記憶には改竄が見られました。それ以外は問題ないかと」

「ふぅーん。でもこれでようやく本来の形に戻せる可能性が見えたんだ」

「そうですね、あとは彼が折れないようにしないとなりませんね」

「もしそうなったら今回ばかりは手を出させてもらうよ。今のチャンスを逃したら先何万年と待つことにもなりかねないからね」


 少女らしからぬ顔で言う神様には、確かに先を見据えているようだった。


 長い時の中で待ち望んだ瞬間を掴むために、世界の裏でそれは動き出す。

短いですがこの話で1章完結となりますっ!

ここまで呼んでいただいた皆様ありがとうございます!宜しければこれからもよろしくお願いしますっ!

評価等付けて頂けると非常に嬉しいですので良ければ……

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