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プロローグ

 いつの間にか私の世界は色が消えた一本道だった。

 後には戻れず、先に進んで別の道がある訳でもなく。


 虚ろな瞳で歩いて辿り着いた場所は、とても温かい場所だった。


 こうして平和に優しさに包まれて過ごすのも良いなと、心から思っていた。


 ……だけど、世界は何処までも残酷だ。


 何もかもを見失って、ようやく手に入れたと思ったものですら直ぐに壊れてしまって。

 手を伸ばしても掴めるものは何も無くて。


 それなら私は何も知りたくなかった、都合よく塗り固められた世界のままで良かった。


 どうして見てしまったの? 

 どうして聞いてしまったの?


 見てしまったら、聞いてしまったら戻れなくなると分かっていたのに。


 彷徨い続けて、辿り着く終着点はこんな所……?


 粉々に砕けて散った私の新しい大切は、もう二度と帰ってこない。


 見えなかったものが見えた。

 知るはずではなかったことを知った。


 砕けた心はグチャグチャに混ざり合い、高温で溶け落ちた金属のようにどろりとしたそれを残していった。

 それはやがて固まって、歪な私を作った。


 その時にはもう遅かった、何もかも。

 悔やんでも、悔やんでも、時は巻戻らない。


 運命という鎖は私の体も心も締め上げていた。

 その時間は永く、木綿で首を絞めるようにゆっくりと過ぎていった。


 そして、そんな私にもわかったことがあった。


 それは、憎しみという感情。

 全てを呑み込む深い闇は、一つ、また一つとそれ以外の感情を私から奪い去っていった。


 憎悪の色で染め上げられた私はもう止められなかった。


 私の大切を奪ったアイツを、嘲笑ったアイツを、食い物にしたアイツを――殺したい。


 どうしても譲れなくなった一線がそこにはあった。

 質の悪い毒のように全身を巡るこの血が、その未来を渇望した。


 私を縛る鎖は足掻く体に二度と消えない烙印を焼き付けるように。

 でも、不思議と痛みは感じなかった。


 どうにもならない世界で私は願った。


 ――私にアイツを奈落の底へ突き落とす力を。


 始めは幻想だと思った。

 けれど確かにそれは目の前にいて、私と同じ地獄の住人だった。


 彼との出会いで、ただ何も無く死に損ないのような体で生きる現実が、意味をもって地獄を巡る本当の現実へ移り変わった。


 元々化け物のような存在が、自らの意思で生き血を啜り、命を刈る化け物になった。


 それにどの道まともな化け物にすら戻れずに、弄ばれるだけの人形になるくらいなら。


 ――手を取ってもいいと思った。それが、悪魔の手だとしても。






これからもなるべく2〜3日に1話ペースでやっていければと思います。よろしくお願いします

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