第84話
既に落ち着いたらしいティーナが、マザーを支えながらも盗人が入った部屋に案内する。そこはキッチン隣の修道女たちの寝室。カノン班が泊めてもらっている部屋より少し幅が広い。ドアを開けると横長の部屋。正面にはガラスが割られた両開き窓。右奥にリリア、左奥にマザー、左手前にティーナのベッドがそれぞれ置かれている。木でできたベッドサイドチェストは三人分全て乱暴に開けられている。
「ティーナさんはどうして誰かが教会に侵入してきたと分かったんですか?」
ツバサの問いかけに、ティーナは迷わず答える。
「私はキッチンで昼食の準備をしていたんですが、突然ガラスの割れる音が聞こえて……。不思議に思って音が聞こえた寝室の扉を開けると、丁度犯人が箱を持って窓から出るところでした」
「因みにマザーはその時どこに?」
「私は礼拝堂にいました」
キッチンの椅子に腰かけたマザーが回答する。
「ってことは、犯人は〝忍び足超絶得意人間〟ってことだな!」
ラックが腕を組みながら自信満々にうんうんと頷くのを見て、ツバサは訊くのもバカバカしいと思いながらも一応低い声を振動させる。
「何で犯人は〝忍び足超絶得意人間〟なんですか?」
するとラックはヘヘンと鼻を擦りながら、胸を張って推理を披露した。
「ティーナはキッチンにいたんだろ? この寝室はキッチンの隣。ってことは、窓が割れる音がしてからティーナが寝室のドアを開けるまで、そんなに時間はなかったはずだ。でも部屋は荒らされてた。ということはだ! 目的のブツを入手した犯人は窓からの脱出するためにガラスを割ったと考えられるわけだ。つまり! 寝室に入ったのは正々堂々正面から! でも寝室に行くには礼拝堂とキッチンを通らなきゃなんねぇ。マザーもティーナもいたのに犯人に気付かなかったってことは、ツバサの国に伝わる忍者みたいな〝忍び足超絶得意人間〟ってわけだ!」
完璧と言わんばかりに自信に満ち溢れていると、ラックの脳内は本当に大丈夫なのかと若干心配になる。ツバサは深い呆れの溜息を吐いた。
「ラック先輩……、では訊きますけど、犯人が逃走する時、どうして窓を割る必要があったんですか?」
「え……」
「窓の鍵を開錠施錠できるのは通常室内です。脱出の際だけ窓を通るのであれば、窓を割る必要はありませんよね?」
「それはアレだ……、きっと犯人は窓の開け方を知らなかった……。だから窓を割るしかなかった……。そうだ! そうに違いない!」
「…………」




