第44話
既に電気は消され、外から漏れる僅かな月明かりだけが、狭い客室を照らす。
カノンもラックも既に眠っている。だが、ツバサは眠れなかった。
今日の新聞では、昨日と同様〝人魚の涙〟について大きく取り上げられていた。その宝石は今、議会所で保管されているらしい。各地の研究家たちは〝人魚の涙〟が発見されたドロマ地区や、議会所のある中央区ケントロ地区へ集まってきているらしく、そのような研究家のインタビュー記事が掲載されていた。
一面の左側半分は、キャンパス・シップの写真とともにWGSが到着したことが報じられていた。
ツバサはベッドで仰向けになりながら、考えを巡らせる。
なぜボルドー教官は〝人魚〟を持ち帰るように指示したのか? 〝人魚〟をどうするつもりなのか? 極秘任務扱いなのは、誰かに知られるとマズいからなのか?
どうしても心の中がモヤモヤとする。
寝付けずに、体を左に傾け、窓の外をぼんやりと眺めている時だった。誰かが通った。フードを被っていて、誰かは判別できない。だが、こんな時間に教会と隣の建物との細い空間を通るなんて、一体本人は何をしに行くのか。
ツバサはどうせ眠れないしと気になって窓を開け、外を覗いた。そして目を見開く。
背格好が似ている。しかし何より、その人物が身に付けているフード付ケープ。色ははっきりと分からないが、紺色と言って頷ける。
「セレティスさん……!?」
ツバサは窓も閉めずに、ベッド横のバッグの上に乗せていたパーカーを羽織り、急いで教会を出て行った。そのまま彼女の通った道を追いかける。
小さく見えるリリアを見失わないように、距離を縮める。
正直、今すぐ彼女になぜこんなことをしているのか、訊こうかと思った。しかし、問い質すようにしか聞こえないと思ったし、訊いたところで本人が本当のことを言うとは限らないと思った。だから、ツバサは黙ってリリアの後を追うことにしたのだ。
リリアは建物の隙間を幾つも通りながら、北西へ向かっている。
細い道を通るのは人目につかないようにするため? 道は違えど、こっちの方向は……。




