第42話
《………………》
「何で黙ってんだよ! ほらさっさと吐け!」
ラックがダイスを上下に振るが、だんまりを決め込むダイス。ラックからはプチッという音が聞こえてきた気がしたようなしなかったような。
「テメェに黙秘権はねんだよ! 中はどうだったのかって訊いてんだよ! オラオラ!!」
《お主らは我がいない間に楽しそうにトランプをしていたのであろう!》
ラックに詰められて出てきた回答に、メンバーは顔を見合わせ、眉根を寄せる。
《我が湖に放り投げられた後、我のことを忘れてトランプに没頭していたのであろう!? だから引き上げが遅かったのだろう! なぜ我だけ扱いが雑なのだ! なぜ我だけ!!》
いじけている。一緒にトランプやりたかったのか……。通常であれば呆れるところだが、しかしこの必死さは、いくら見た目は球体と言えども、少々の憐憫を誘われてしまう。ツバサからは吐息とともに言葉が漏れる。
「ダイスさん……」
だが、そんなツバサの前にいるラックからは、ふざけんなよ……、と低い声が聞こえてくる。
「なーにが『我だけ扱いが雑』だ! じゃあ訊くが、テメェは俺たち生身の人間に湖の底まで行けってのか!? あ!?」
《……そそそそこまでは、もも申してないであろう!》
「だよなぁ? ってことは、やっぱり湖に潜って探索すんのはテメェの仕事だったってことだ」
《…………》
「因みに言っとくがな、テメェの扱いが雑なのはテメェが望んでっからだ! ダイス、お前はそういう立ち位置大好きだろ? 俺知ってんだぜ?」
《…………》
ドヤ顔を球体のレンズに近づけ、ラックは随分とご満悦である。対するダイスは沈黙を貫いているが、これは驚きの台詞に絶句しているのか、それとも無言の肯定なのか。表情が分からないために、彼の真意を知れるものはこの場にはいなかった。
「で、ダイダイ、中はどうなってたの?」
《……後でちゃんと映像で報告するのだが、今訊かれたので答えるとだな、実は……》
「実は……?」
ツバサはダイスの言葉に唾を呑み込む。
《……特に何も見えなかったのだ》
「テメェは何しに潜ったんだよ!!」
ラックが容赦なくダイスを上下に振りまくる。
《懐中電灯の光だけでは、底など照らしきれぬであろう! これは我のせいではない!! ただ……》
「ただ、何だよ」
《薄らと何か見えたような気がしたのだ。例えるなら……巨大魚の尾ひれのような……》
「それを早く言えよ!」
《我の見間違えかもしれぬではないか!》
ラックとダイスは、振り、振られ、を続けている。
「うーん、今日は取り敢えず教会に戻ろっか」
カノンが地面に放置されていたトランプを集め、ポシェットに仕舞う。
「ボルボルが〝ある物〟を教えてくれなかったから、これ以上手がかりないし。今はダイダイが撮ってくれた映像だけが頼りだから、教会に戻って見てみよー」
エンジェルスマイルを披露し、カノンは一人でずんずん街の方へ向かって行く。ツバサは地面に転がった昼食のゴミを、ラックはロープと重りを回収し、彼女の後に続いた。




