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呪われていた勇者は世界を喰い尽くす ~殺すたびに増える魔力と記憶、そして死者の議席~  作者: 祐祐
第1章

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第8話:円卓議会

 眩しっ!

 突如として照明が付いたのか目の前が明るくなり、俺は反射的に目を細めた。


 俺は椅子に座っている事に気づいた。目の前には大きな丸いテーブルが明かりに照らされている。そして、そのテーブルの周りにも椅子が沢山置かれて、それらも1つずつ照らされている。1、2、3……10脚か。俺の座っているのと合わせると11脚。俺の座っている椅子が一番豪華な感じがする。


「まず、本日の選挙結果をお伝えします」


 先ほど聞こえたのと同じ声が聞こえてくる。

 この声……魔喰いスキルや人魔両性スキルが発動された時に聞こえる声と同じだな。という事は、ここもスキルに関係するものという事なのか?

 そして選挙結果? 最初の声では円卓議会と言っていたな……どういう事?


「人類側得票数10、魔族側得票数6でした」


 得票数……?


「本日の有効得票総数は16。円卓議会の定数は10のため、ドント方式による議席按分の結果、人類側議席数6、魔族側議席数4となります。それぞれの代表議員は円卓へお座り下さい」


 ドント……?

 円卓というのはこの大きな丸いテーブルの事だろうか。

 すると、俺の両隣の椅子へ人影が座っていく。


 右を向くと隣の席には人間が……俺? と思うほどそっくりな人間がいる。その右隣の人間も俺にそっくりだ。そのまま6人の人間が座っていくが、全員同じ顔に見える。

 気持ち悪っ!


 その気持ち悪さから目を逸らすために、今度は左側へと目を向ける。

 左隣は人間じゃなくて魔族だな……小隊長!?

 何度も記憶の間で見ているから見間違えるわけがない。小隊長がそこにいた。なんで?

 その奥には小隊長と一緒にあの小屋で殺した2体の魔族、その奥には今日殺した3人のうちの1人が座っている。


 どういう事だ?

 俺が殺した魔族がここにいるという事は、やっぱりここは俺のスキルの中で、脳内って事か?

 人類側の6人は俺自身と考えれば、同じ顔でもまぁ分かる。理解できても見たくはないが。

 そして魔族側の得票数6というのは、俺が殺して吸収した記憶の数か?


「それでは、本日の円卓議会を開始します。議長、議事進行をお願いします」


 円卓議会なるものが始まるらしい。何が始まるのか、不安しかない……




 ……何も始まらないんだけど?

 周りを見ると、10人全員がこちらを見ている。

 えっ? 何?


「議長、議事進行をお願いします」


 議長って誰?


「……もしかして俺が議長?」


「はい、蘭が議長になります」


 えぇ……勝手に議長にさせられたんだが。

 議長って議事進行って何すればいいの? 何も知らないし聞いてない!


「では議事進行をお願いします」


「その前にこの円卓議会の事を説明してもらえないか? そうじゃないと具体的に何をすればいいのか分からない」


 もうなるようになれ。というか脳内なんだからどうにでもなるだろうし、俺にとって悪い事にはならないだろう。


「円卓議会は蘭の行動の方向性、行動指針や目標を決める最高機関です」


 俺の行動の方向性を決める? ここにいるメンバーで決めるの?


「議会メンバーは7日ごとに、蘭の中にいる全人格による投票数に応じて、人類側と魔族側で議席を按分します。そして、その議席数分の人格が代表議員として円卓議会に参加して、蘭の行動の方向性を決めていきます。議長はその円卓議会の円滑な進行をして『至上命題』としてまとめ上げる事。そして、その決まった至上命題に基づいて7日間行動する事が役割となります」


 えーと。ちょっと整理させて。

 俺の中にいる全人格が投票して、それで選ばれた人格が俺の行動の方向性を決めて、議長である俺はその決まった方向性で行動するって事か。


 ……うん、意味がわからない。俺の行動は俺が考えて決めるものだろう。それが円卓議会の決めた方向性になるって、俺の人格が変わるのか?

 でも俺も円卓議会に議長として参加しているから、その参加者の人格が議会によって変わるのもおかしい。


 まぁ議会に決められた方向性に反対したり、言う事を聞かない事もできるだろ。


「1つ聞きたいが、魔族側の得票数6というのは、俺がこの数日で殺して魔喰いで吸収した6体って事で合ってるか?」


「はい、その認識で合っております」


「人類側の得票数が10となっていたが、俺が10人の人間を殺して吸収したって事か?

 そんな記憶は無いぞ? 呪いが解ける前も含まれていたとするなら、魔族側が少ないしおかしい」


「蘭と同じ人類側の人格が10人いる状態から開始されておりますので、10人の人間を殺して吸収したわけではありません」


 知らないうちに人間を10人殺していた訳じゃなくて良かった。


「なんで人間が10人いるんだ?」


「蘭が人間であり、円卓議会の定員が10だからです」


 まぁそう決まっているというなら、これ以上聞いても仕方ないか。


「円卓議会については、まぁ一旦理解した……と思う。それで議事進行とは具体的に何をすればいいんだ?」


 理解なんてできてないけど、習うより慣れろだろ。


「議長は、今後7日間の行動指針、目標を提案して下さい。それに対し、各議員がそれぞれの立場から行動の是非や方向性などを審議し、議長はそれを総括してください。その総括案について多数決を行い、今週の『至上命題』を決定します」


 とりあえずこれから数日やろうと思っている事を提案すればいいって事か。最後が多数決なら、人類側の議員というか俺が多いから、それがそのまま至上命題とやらになるんだろう。実質的に議長である俺が何でも決められるんじゃねえの。

 俺の考えている行動と目標は。


「じゃあ俺からの提案だが、第2防衛拠点の魔族をこっそりと殺して強くなりながら、小隊長より偉い奴を殺して、呪いや魔王軍、俺の家族についての情報を得る事を目標としたい」


 現時点で、あのレイブン司令官を殺せるとは思えない。そうなると、尾田部隊長から依頼されている通り、魔族の数を減らす事と情報を持って帰る事を優先すべきだろう。

 その両方を達成するには小隊長よりも情報を持っている奴を殺さないといけないんだよな。


「それでは、議長から提案された内容について、各議員は審議をお願いします」


 アナウンスの声が終わると同時に手を上げたのは小隊長だった。


「提案された行動は人類軍を利するものであり、魔王軍を害するものだ。そのような行動は断固として反対である!」


 そりゃそうだろ。俺は人類軍の味方であり、魔王軍と魔王を殺すために動いているんだ。


「そうだそうだ!」「反対だ!」「人類軍に攻撃するべきだ!」


 小隊長の発言に合わせて、他3体の魔族たちも発言をしていく。

 ……人類側の議員は発言しないの?


「人類側の議員たちの意見を発言してくれ」


 発言を促してみる。


「「「「「「我ら人類側議員6人は、議長の提案に全面的に賛成します」」」」」」


 そりゃ俺自身だもんな。賛成して当たり前か。

 ただ6人同時に話すな、気持ち悪い! お前ら不気味すぎるんだよ!


「それじゃあ意見を総括する。今週の至上命題として、『第2防衛拠点の魔族をこっそりと殺して強くなりながら、小隊長より偉い奴を殺して、呪いや魔王軍、俺の家族についての情報を得る事』を提案する」


 全面賛成と、全面反対の声しか無いんだから、俺の考えを修正する必要はないだろう。


「それでは議長からの総括案に対して、賛成の議員は挙手をお願いします」


 アナウンスの声に反応して、人類側議員の6人が同時に手を挙げた。


「賛成多数のため、可決されました。総括案が今週の至上命題となります」


 6人いれば可決されると。まぁ妥当だな。


「それでは、議長は至上命題に基づいた行動をお願いします。至上命題に逆らう行動を取った場合は、議長解任決議が提出される可能性がありますのでご注意下さい。

 次は7日後に開催します。それでは、これにて第1回円卓議会を閉会します。お疲れ様でした」


 これが今後7日ごとに行われるのか。やる意味があるのか?


「議長。我々の目は、貴様の行動を常に監視している。至上命題を違えた瞬間、解任を要求するからな」



 アナウンスの声の終わりと共に、円卓を照らしていた明かりが消えた。

 最後に左から小隊長が話しかけてきたが、監視しているって、お前らどうやって監視するんだ?



 とりあえず、眠って明日に備えるか。

 目を閉じると、俺はすぐに眠りに落ちていった。


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