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呪われていた勇者は世界を喰い尽くす ~殺すたびに増える魔力と記憶、そして死者の議席~  作者: 祐祐
第1章

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第7話:防衛拠点

 第2防衛拠点に向かって移動していく。

 人類軍からもらった地図を元にここまで移動してきたが、ここからは魔王軍の偵察部隊小隊長の記憶を頼りに進んでいく。地図も悪くないけど、敵の拠点近くなら偵察部隊員の方が正確に決まっている。




「っ! 魔王軍か」


 昼食を食べて、少し進んだ所で1体の魔族を発見した。咄嗟に木陰に隠れて周囲を確認する。どうやら周りに他の魔族はいなそうだな。

 手元を見て、魔族の姿になっている事を確認してから、その魔族に向かって平然と歩いていく。


「おっ。見ない顔だな。こんな所でどうしたんだ?」


 魔族の男は、怪しむ様子もなく声をかけてくる。


「戦場から逃げのびて、拠点に戻る所だよ。第2防衛拠点はこの先で合ってるよな?」


「あぁ。このまま進めば1日ちょっとで着くと思うぞ」


 努めて自然に、味方のフリをして言葉を交わすと、この魔族は親切に道を教えてくれた。


「そうかそれは良かった」


「戦場って、まさか人類軍との最前線に行ってたのか?」


 こいつ、普通に人類軍って言ったな。という事は小隊長では無さそうだ。


「あぁ。何とか敵から逃げてきたんだよ。じゃあ俺は行くよ」


「おう、気をつけろよ」


 お前が気をつけろよ。油断しすぎだ。

 そいつの脇を通り過ぎた所で剣を引き抜き、後ろから首を斬り落とした。


「小隊長じゃなさそうだから、大した情報は持ってないだろう。あとは、こいつがどれだけ魔力を持っているのか、どれだけ俺を強くしてくれるのかだけど、それも期待薄だな」


 倒れた魔族の心臓に剣を突き刺しとどめを刺すと、数秒後に魔力が流れ込んできた。憎い魔族を倒して流れ込む魔力は格別だな。

 じゃあこの後に記憶が来るな。身構えていると、予想通りに記憶が脳に叩き込まれる。


 ……ハァハァ。

 まだまだこの頭痛には慣れないな。記憶は夜に確認しておくか。小隊長じゃないとは言え、何か知ってるかもしれないし。そうなると、あの2体の記憶からも幹部の情報を確認しておくべきか。

 ……面倒だな。




 その日はもう2体の偵察部隊と遭遇した。どちらも1体で行動していたので、最初のはぐれ偵察部隊の奴と同じ小隊だったのかもしれない。だがそんな事は俺には関係ないので、どちらもすれ違いざまに殺した。

 同じ小隊だったら、3体のうち1体は小隊長クラスの可能性が高いし、そこも含めて寝る前にしっかりと記憶を確認しておこう。






 昨日寝る前に記憶を確認をしたが、3体とも新たな情報を持っていなかった。あの最初の小隊の隊長以外の2体も新情報は持ってなかった。

 小隊長クラスでも、これ以上の新たな情報は持っていないのだろうか。


 今日は人類軍の防衛拠点を出発してから6日目だ。はぐれ偵察部隊からも1日ちょっとで着くと言われたし、今日の夕方には防衛拠点に到着できそうだな。

 俺は素早く朝食を食べて、防衛拠点へと向かって進み出す。



 防衛拠点か。あの小隊長の記憶を元に考えると、正面から入れそうだよな。特務部隊は全滅したと噂されていたが、俺の見た目を覚えている奴もいるだろうし。何か証明しろと言われると困るけど、その時は教官でも呼んでもらうか。

 逆に門番に気づかれずに入ったら、それがバレた時に何か問題が起きそうだ。ここはたまたま逃げのびて生還したと言って正面突破するのが最善策だろう。



 そうして進み続け、空がオレンジ色に染まり始めた時間に、ようやく防衛拠点に到着した。途中で魔族には1体も遭遇しなかったが、もう少し倒しておきたかったな。

 見えてきた門が特務部隊のエリアに近いか分からないけど、まぁ違ったら教えてくれるだろう。

 ここまで会った魔族にはバレなかったんだ。大丈夫だ。大丈夫。


「そこの奴、止まれ! 所属と名前を告げよ!」


 どこから声が聞こえてきたのか分からず、周りをキョロキョロと見回してしまった。


「上だ、上! お前、どこから来た!」


 塔の上からだったか。門番はまだはっきりと見えない距離だから驚いてしまった。


「すみません! 第15特務部隊所属の蘭です!」


「……第15特務部隊だと? ちょっと待っていろ!」


 待てと言われたがどうしようか。動くと怪しまれるのか? 門までは進んでもいいかな?

 するとすぐに門から数体の魔族が走ってくるのが見えた。


「おい、もう一度所属と名前を告げろ」


 塔の人から聞いてないのか? それとも声が届かなかったのか?


「第15特務部隊所属の蘭です」


「蘭……お前勇者か?」


 俺が勇者だと知っているか。小隊長クラスかな。


「はいそうです」


 余計な事は言わないように、聞かれた事に慎重に答えていこう。


「じ、敵との戦闘で第15特務部隊は全滅したと聞いていたが」


「何とか敵から逃げのびまして」


「どうしてこんなに戻ってくるのに時間がかかるんだ。今までどこで何をしていた?」


「逃げる途中で道に迷いまして。途中で偵察部隊の方にも助けていただき、何とか戻ってこられました」


「そうか……とりあえずこの門からは特務部隊は入れない決まりになっている。城壁沿いを右に進んでいけ。そっちの門からなら入れるはずだ」


「分かりました、ありがとうございます」


 とりあえずは乗り切ったか。ただ、何か怪しい所があったのか詳しく聞かれた気がするな。

 んー、分からん。


 そうだ、小隊長! 特務部隊は決められた門以外は通れないようになっているのか教えてくれ。

 ……そういう決まりなのか。じゃあ仕方ないな。

 俺が入れる門まで進むとするか。




「止まれ。所属と名前を告げよ」


 今回は塔の上からではなく、門番から聞かれた。塔の人が声をかけてきたさっきが特殊だったのかな?


「第15特務部隊所属の蘭です」


「おぉ! 全滅したって聞いてが生存者がいたのか!」


 なんか、ここまでの魔族と反応が違うな。


「えぇ。何とか逃げのびまして」


「いやぁ。送り出した奴が戻ってきてくれるのは嬉しいものだよ。お前の顔も覚えているぞ。よく帰ってきた、おかえり」


 門番が顔をほころばせ、親しげに俺の肩を叩く。

 門番って全員の顔と名前を覚えているのか? まぁそれが仕事ではあるだろうけど。


 それにしてもおかえり、か。

 こいつがただいい奴なのか、それともまた戦力として頑張れよ人間、という皮肉なのか。呪われていた時は優しく聞こえていたんだろうな。


 門番の言葉の後、門がゆっくりと開いていく。

 ようやくここまで辿り着いた。とりあえず今日は部屋でゆっくりさせてもらうか。

 明日からの行動の計画も立てないといけないしな。



 遂に魔王軍第2防衛拠点へと足を踏み入れた。

 城壁も塔も門も全て俺の記憶通りだったが、その先に広がる景色も変わらなかった。

 本当に帰ってきたんだな。今度は呪いが解けて人類軍の一員としてだが。


 宿舎へと向かっていくと、訓練場の脇を通りかかった。ここも記憶通りだ。

 そして、そこでは魔族が訓練をしていた。ここは特務部隊のエリアのはずだし、だとしたらあの中には勇者がいるはずだ。たが、俺の目ではどれが勇者かは分からない。人間のはずなのに魔族に見えているのは、あの呪いの影響という事なのだろうか。

 ただ、どの魔族にも首輪は見当たらない。勇者の呪いを解くには見えない首輪を砕かないといけないのだが、尾田部隊長にも首輪は見えていなかった。

 見えない首輪を砕く、そんな事できるのか? 失敗したら首を飛ばして殺してしまう……ダメだ。もっと首輪の事を知らないと。付けられたなら外す方法だってあるはずだし、見えるようにする方法だってあるはずだ。

 やらなきゃいけない事が多すぎる。



 そうして宿舎へと戻ってきた。


「寮母さん、いますか?」


「はいはい、何でしょうか」


 俺が戻ってきた事を教官には伝えた方がいいだろう。あの人が実質的に俺の特務部隊に指示を出していたし。帰還を知らせないでいるのは不自然だし、門番から情報がいくとは思えないから、ここは寮母さんに依頼しておこう。


「蘭です。戦場から戻ったので、その事を教官に伝えてもらえますか? ヘトヘトなので、飯食ったら寝ます」


「あら! 無事だったのね! ええ、伝えておくわ。しっかり休みなさい」


 この寮母さんはどこまで知っているんだろうか。というか、寮母さんってこういう見た目だったのか。呪いがかけられていた時は、人の良いふくよかなおばさんに見えていたけど、魔族の姿だとその片鱗は全く無い。ふくよかを大きく超えたブクブクに太った贅肉に、肌は黒くて凸凹だらけの化け物だな。


 あれ? そういえば教官って見て分かるのか?

 小隊長! 教官の顔を知っていてくれ!




 部屋の場所も部屋の中も俺の記憶通りであり、いつも通りに食事をして、風呂に入って眠りについた。

 ちなみに小隊長は教官の顔を知っていた。教官は特務部隊の隊長であり、防衛拠点では有名人、いや有名魔族のようで助かった。


 明日になれば教官から呼び出されるだろうし、早く寝て備えよう。












 ん? ここはどこだ?

 目は覚めているはずなのに周りが薄暗い。まだ真夜中なのかな。


「それでは、ただいまより第1回円卓議会を開始します」


 円卓議会?


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