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呪われていた勇者は世界を喰い尽くす ~殺すたびに増える魔力と記憶、そして死者の議席~  作者: 祐祐
第1章

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第6話:記憶の確認

 人類軍の防衛拠点を出発してから5日目の朝。目を覚ますと、窓から部屋の中に日が差し込んでいた。

 寝る前に記憶から確認した通り、誰もやってきていないようだな。


 ベッドから起き上がり、剣を右手に持ち、部屋の外へと向かう。他の人がいる気配も音もないが念のためだ。

 静かに小屋の中を一部屋ずつ確認していくが、2つの死体がそれぞれの部屋にあり、外に出るとすぐに1つの死体を見つけた。あの戦いから特に変化は無さそうだな。

 小屋の中に引き返し、必要な物資をカバンに詰めて、早足で死体の転がる小屋から離れていく。

 すぐには誰も来ないだろうと思っているが、万が一誰かに見つかったら面倒だからな。




 しばらく森の中を歩いていき、座りやすい切り株を見つけたので、腰を下ろして小屋から持ってきた食料で朝食にする。

 うん、やっぱり味がしない。魔王軍の食事はこういうものなんだろう。だが、こんな食べ物ばかりだと兵士の士気が上がらないんじゃないか?

 まぁ俺がその食事でも勇者として頑張っていたから関係無いのか。




 朝食を食べ終えて胃袋を満たした所で、魔王軍の拠点に向かう前に記憶の確認をしておこう。

 知りたいのは防衛拠点の弱点と、拠点にいる魔王軍幹部の情報だ。他に知りたい事……あの首輪についても何か知っているだろうか。あと、あいつらは俺の事を勇者だと知っていたが、具体的な内容と他の勇者についても知っておいた方がいいかもしれない。勇者と言われるくらいなら強いだろうからな、戦闘になる可能性もあるだろう。



 そっと目を閉じて、自分の脳内の暗闇へと意識が沈んでいく。


 辿り着いたそこは、見渡す限りの本棚が並ぶ静かな空間だった。

 昨日殺した3体の魔族が、本棚と俺の間に立っている。


(まずは魔王軍の防衛拠点について教えてくれ)


 そう伝えると3体の魔族がそれぞれ後ろを向き、本棚から本を取り出して俺に差し出してくる。


 魔喰いスキルによって記憶を取り込めるようになったが、俺自身の記憶として取り込んだというよりは、相手ごと取り込んだように感じる。まぁ俺の指示には従ってくれるようだから、そのまま取り込まれていても問題はない。

 そして、脳の中に取り込んだ相手がいて、その後ろには本棚がある。そいつに知りたい事を聞くと、棚から本を取り出して渡してくれて、その本に必要な絵が記載されており、口頭で説明をしてくれる。

 寝る前に一度使って、まだまだ全てを理解できている訳では無いが、概ねそんな感じなのだろう。


 知りたい事を聞くのではなく、全ての記憶を見せるように言えば丸ごと見れると思うが、時間もかかるだろうし、それは今ではない。落ち着いてからにしよう。



 右端の魔族から差し出された本を受け取り、本を開く。


『それが第2防衛拠点です』


 そこには俺の記憶にもある、城壁と高い塔に囲まれた拠点が描かれていた。やはり俺がいたのは第2防衛拠点なのか。拠点は四角い土地になっており、それを城壁が囲っていて、四隅に高い塔が立っている。各城壁の中央付近には外へと通じる門があり、俺もそこから行軍してきた。


『城壁も塔も、この拠点を人類軍から奪った時からあったものです』


 この拠点は元々人類軍のものだったのか。人類軍は劣勢って事か?


 その城壁の内側に様々な建物があり、俺が鍛えられた訓練場は四隅のうちの一つに設置されていた。訓練場の側には宿舎もあり、そこが特務部隊のエリアだった。

 そこ以外にはほとんど立ち入る事ができなかったが、他には偵察部隊や補給部隊のエリアがあり、拠点の幹部クラスのエリアも中央に設置されていたようだ。

 そして弱点については無い、という答えだった。


 他2体の魔族からの情報もほとんど同じであり、つまり、俺の記憶にある防衛拠点と同じだったのだ。

 呪いのせいで認識が偽られていたが、それは魔族と人類に関する認識だけで、無機物である建物への認識には影響が無かったのだろうか。



 それにしても拠点の説明で、人類軍から奪ったと言っていた。つまり、こいつらは敵が人類軍だと分かっていたのだ。でも俺との会話では人類軍という言葉を使わなかったのは何故だ?

 俺の事を勇者だと知っていたし、幹部の情報の前にその辺りを確認してみるか。


(次は勇者について教えてくれ。勇者とは何なのか、勇者についてお前らが知っている情報を全てを吐き出せ)


 すると、右端の最後に倒した魔族は本棚から本を取り出したが、他の2体は何も取り出さなかった。何か違いがあるのか?


『勇者については、特務部隊として人類軍と戦うために鍛えられた魔族であり、基本的に接触しないように、接触した場合は基本は小隊長以上の者が対応するように、と小隊長から説明されました』


 左の魔族の前に行くと、本は持っていないが口頭で説明を始めた。特に画像で説明するものが無かったという事で本が無かったのだろう。

 中央の魔族も同じような説明だったので、右の魔族が小隊長という事か。こいつは他の2体よりも情報を持っていそうだ。


 一呼吸ついてから、小隊長の本を受け取り開く。


『勇者とは、魔王軍が人類軍との戦闘によって捕まえた人類の中から、戦闘に使えると判断されて鍛えられた者に対する呼称です。そして、勇者は特務部隊に必ず配属されます。

 勇者には呪いの首輪が付けられており、呪いにより自身は人間である、我ら魔王軍は味方であり人類軍である、と認識されるようになっている。そのため、魔王軍、魔族、人類という言葉の扱いには注意せよ、敵と味方という言葉を使って話すように、とレイブン司令官から指示されています』


 本には豪華な部屋が描かれており、これがそのレイブン司令官と呼ばれる魔族に指示されたシーンなのだろう。


 それよりも!

 魔王軍の小隊長以上には、俺が、勇者が人間であるという情報は知られていたという事だ!

 そして、あの首輪がやっぱり呪いの元であり、認識が偽られていたのか!


 あと、捕まえた人類って、俺は捕まえられた記憶がない。それはつまり、両親が捕まって、その状態で俺が生まれたという事なのか? あの生まれ育った村は、魔王軍の管理下にあったというのか?


(もっと知っている情報は無いのか、呪いの首輪についてはどうなんだ)


 そう問いかけるが、他の勇者の名前しか出てこず、それで全てだった。

 小隊長クラスではここまでしか知らされていない、という事なのか。



 もっと多くの、真実の情報を持っているのは、小隊長に指示をしているこのレイブン司令官という魔族だろう。


(次はこのレイブン司令官を含めた、第2防衛拠点の幹部についての情報を教えろ)


 今度は3体とも本棚から本を取り出してきた。ただ、小隊長の情報だけで十分な気がするから、こいつの本だけを確認しよう。


「第2防衛拠点のトップはレイブン司令官です。四天王のブラッド様の信頼が厚いと言われており、第2防衛拠点を任されています。主に拠点の中央の幹部エリアにおり、部下からの報告を受けて指示を出しています。私が会ったのは小隊長任命時だけです。

 身体が大きく、どんな敵もなぎ倒してきたと言われる武闘派で有名です」


 本には先ほどと同じ画像が描かれており、本当にこの一度しか会っていないという事だろう。

 こいつ目線の情報でしか無いが、身長は高そうだし、身体は筋骨隆々で逞しい。これならどれだけ強い攻撃を繰り出せるのか、想像もできない。口元の牙も爪も他の魔族と比べて大きく太い。攻撃力だけでなく、防御力も高そうだ。


 こいつは防衛拠点の中央にある幹部エリアにいる可能性が高いのか。そこまで侵入しないといけないが、そこまでどうやって行くべきか。

 そして辿り着いたとしても、こいつは人類軍の尾田部隊長よりも強い可能性が高い……尾田部隊長にも勝てない今の状況で挑んでも負ける可能性が高そうだ。



 うーん。

 魔王軍の戦力を削りながら、魔喰いスキルで魔力と情報をできるだけ多く吸収して、確実に人類軍に情報を持って帰るべきか。

 魔王を、魔王軍を皆殺しにしたいが、死んだら全て終わりだ。




 ゆっくりと目を開き、現実の森へと意識を戻した。

 意識を周囲に向けるが、誰も来ていないな。


 それにしても、魔喰いスキルはすごいな。敵を殺せば強くなれる上に記憶という情報を得られる。記憶を確認するのは面倒だが、俺自身の記憶と混ざらないのはいいのかもしれない。

 あそこは記憶の間とでも呼んでおこうか。これから何度もお世話になりそうだ。



 さて、さらなる情報を手に入れるために、第2防衛拠点に向かって進んでいくか。


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