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呪われていた勇者は世界を喰い尽くす ~殺すたびに増える魔力と記憶、そして死者の議席~  作者: 祐祐
第1章

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第2話:作戦会議

「魔王軍へと攻め込んでもらう前に、お前の知っている情報を全て教えてもらおうか」


 戦場でのやり取りを終えた俺は、人類軍の防衛拠点へと連行された。

 武器は没収されたままであり、部隊長がすぐ後ろに付いてきているから、もし俺が魔族になっても抑えられる、いや討伐できる体制であるのだろう。

 部隊長は常に剣を手にしていたし、目の鋭さも戦闘時と変わっていなかった。


「明日、事情聴取を行う。今日はここで大人しく飯を食って寝てろ」


 防衛拠点に設けられていた地下の牢屋へと入れられた俺は、食事を与えられてから硬いベッドの上に横になる。

 魔王軍で食べていたものは栄養があるだけで味のしない物だったが、ここで出された飯はものすごく塩辛かった。これが人間の食事の味なのか。


 それにしても、今日は頭の痛い一日だった。

 早く眠りにつこうと瞼を閉じたが、戦場の光景が、俺が殺した人類軍の兵士の死体が脳裏から離れず、眠れない夜を過ごした。




 翌日は、部隊長とその部下の方たちと情報交換をする事になった。

 場所は変わらずに牢屋の中。檻の向こうでは手際よく机と椅子がセットされていく。


 準備が整い、まず初めに俺の持っている魔王軍の情報を伝えていく。


 とはいえ、俺は魔王軍を人類軍だと思っていたので、認識が間違っている可能性は高い。それでも構わないと部隊長が伝えてくれたので、覚えている限りの事を話していく。


 俺が生まれ育った場所と地形。どんなものを食べて、どんな生活をしていたのか。

 15歳から勇者となり、戦闘訓練が始まった事。教官からどのような教えを受けたのか。その場所と地形。

 今回の戦場に来るまでの道のり、スケジュール、作戦内容、兵力、装備などの物資、補給経路、上司の見た目と名前や戦闘の特徴。



 半日ほど聞かれた事に答え続けて、ようやく人類軍からの質問が止んだ。


「ひとまず聞きたい事は全て聞き終わった。後はお前が魔王軍から戻ってこれた時に追加で聞かせてもらうぞ」


 部隊長のその言葉に、ようやく終わったのだと胸をなでおろした。


「昼飯を食った後は、お前からもらった情報と俺らが知っている情報を元にして、これからどう行動してもらうかの作戦を伝える。資料にも残しておくつもりだから安心しろ」


 午後からは本格的な作戦会議という事か。早く魔王軍を倒しに行きたくて仕方がない。




 昼食後、しばらく誰もやってこなかったので、昨夜の寝不足を解消するために寝ていると、階段を降りる足音が聞こえてきた。

 そのまま寝ていると、やってきた兵士たちは俺が寝ていると思い込んだまま話し始めた。


「どうして部隊長はあいつを生かしたんだ。魔族が擬態している可能性が高いだろ」


 そう思っている兵士も沢山いるだろうな。もし味方を殺していた敵が、魔族じゃなくて人間だとしても処罰したいと思うはずだ。


「部隊長もそんな事は分かっているだろ。ただ、このまま今の戦況が続いてもジリ貧だ。部隊長は、それをどうにかするための奇襲策というか、賭けに出たんだろうさ。あいつが人類軍の味方なら、魔王軍へのトロイの木馬になるんじゃないかって」


 ……トロイの木馬とは何だろうか。魔王軍を倒す存在という事だとは思うけど。


 会話に聞き入っていると、更に階段を降りる足音が聞こえてきた。


「あいつはどうしている?」


「部隊長! 奴は寝ています!」


「そうか。おい起きろ!! 午後の作戦会議を始めるぞ!!」


 閉鎖空間である地下に、部隊長の大声が響き渡る。そんな大声を出さなくても起きてるっての。

 先ほどの兵士の会話を聞いていたと思われないように、あたかも今起きたかのようにゆっくりと身体を起こす。


「ようやく来たか。じゃあ魔王軍への攻撃方法について教えてもらおう」


 檻へと近づきながら、部隊長を見つめる。


「作戦を考えていたからな。説明するから一度でしっかりと理解しろ」




 午後の作戦会議は夕飯前まで続けられた。一度でこれを理解しろというのは無茶だ。今まで剣を振ることしかしてこなかった俺には理解できない言葉も多く、もらった資料に書いてある文字も分からない。魔王軍では文字の読み方は教えてくれなかったが、騙していた人間に知識は必要ないということか。

 結果、資料は文字ではなく、地図と線だけで書かれたものに修正された。

 資料に書かれた道筋で進んでいけば、人類軍の部隊と鉢合わせにならないらしい。この部隊長とその部下は俺を知っているが、他の人類軍に見つかったら正体不明の謎の人類と思われ、無用なトラブルを招いてしまうだろうから、わざわざ遠回りをしていくようにとの事だ。


 そして、魔王軍の拠点に着いたら、そこからは魔族を討伐しながら、何か有益な情報を持ち帰って欲しいと言い渡された。

 その拠点には魔王はいないと分かっているので、拠点にいる魔王軍を全員倒す事も重要だが、魔王を倒すための足がかりとなる情報を得る事が先を考えると重要らしい。

 拠点の魔王軍を倒して、そのまま次の拠点へ向かってそこの魔王軍を倒せばいいじゃないか。何とも面倒だとは思うが、情報を提供してくれた、そして俺を生かしてくれた恩には応えるべきだろう。





 その翌日、ようやく牢屋から出されて、昨日の作戦会議で指示されていた出発場所へと到着した。

 向かう先には俺の剣が置かれている。


「同胞を殺した俺を受け入れてくれて、そして情報を与えてくれて感謝する。その恩に報いるため、しっかりと魔王軍を殺してくる」


 ここまで送ってくれた、いや監視を続けてきた部隊長へと礼を述べた。


「勘違いするな。利用価値があると思ったから受け入れたまでだ。ここからは、本当にお前に利用価値があるのか証明してもらうぞ、蘭」


「部隊長、少なくともあんたの期待には答えてみせるよ」


「お前に期待などしていない。

 それとあんたじゃない。俺は尾田武蔵だ」


 無骨な感じの名前だな。


「そうか。じゃあ行ってくるぞ、尾田部隊長」


 部隊長たちから離れて、人類軍の拠点から離れていく。そして置かれた剣を拾い上げ、左腰にぶら下げる。

 1年間訓練をしてきた場所。人類軍だと思っていた魔王軍。俺が見ていたものとは違う景色が広がっているだろうが、しっかりと役割を果たしてみせる。


 そして、魔王をこの手で殺す。


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