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呪われていた勇者は世界を喰い尽くす ~殺すたびに増える魔力と記憶、そして死者の議席~  作者: 祐祐
第1章

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第14話:第2回

「それでは、ただいまより第2回円卓議会を開始します」


 気がつくと、俺は再びあの円卓議会の座席に座っていた。

 もうあれから7日が経ったという事か。第2防衛拠点に行って、そこから人類軍へ戻るだけで終わってしまった。まぁ距離が離れているのだから仕方ないだろう。



「まずは議長。7日間の活動お疲れ様でした」


 俺を労ってくれるのか。いい人……じゃなくていいスキルだな。というかスキルに人格があるんだな。今さらながら不思議なスキルだ。他のスキルに人格があるなんて聞いた事が無い。


「それでは、本日の選挙結果をお伝えします」

「人類側得票数11、魔族側得票数20でした」


 前回は人類側が10で、魔族側が6だったよな。魔族側が沢山増えているのは、殺して魔喰いスキルで吸収したからだと思うが、人類側も1増えている……?


「本日の有効得票総数は31。円卓議会の定数は10のため、ドント方式による議席按分の結果、人類側議席数3、魔族側議席数7となります。それぞれの代表議員は円卓へお座り下さい」


 魔族を殺した事で魔族側の得票数が増えて、議席数も魔族側の方が多くなったのか。

 すると、右側には前回と同じく俺と同じ見た目の……いや、1人だけ知らないやつがいるな。こいつが1増えたやつなのか?

 そして、左側には魔族たちが座っていく。隣には小隊長が座る。


「この7日間はちゃんと至上命題を守っていたみたいだな。次の7日間もちゃんと守れよ。ハッハッハ」


 耳障りな笑い声を上げる小隊長の向こう側には教官が座っていた。その他にアルフの姿もある。

 そうして、魔族側が7体、人類側が3人座った。前回よりも左側からの圧がある気がする。教官のせいかもしれないが。


「それでは、本日の円卓議会を開始します。議長、議事進行をお願いします」


 前回同様に俺が議事進行をするしかないのか。



「議会を始める前に1つ確認したい事がある」


「はい、何でしょうか」


「得票数は俺が魔喰いスキルで吸収した奴の数だと理解している。だが、この7日間で俺は人間を殺した記憶はない。それなのに、どうして人類側が1増えているんだ?」


 気になって仕方ないのだ。確認せずにはいられない。


「それは議長が人類を1人殺して吸収したからです」


「は? いや、だから人間を殺した記憶は無いと言っているだろう!」


 アナウンスの淡々とした声に、俺は不快感を感じた。


「それでしたら、本人にお聞きしたらどうでしょうか」


 本人か。そう言われて思いつくのは人類側で俺そっくりの人以外の知らない奴だよな。

 

「人類側の新入りのお前。お前はどうやって死んだか覚えているか?」


 その知らない奴に俺は問いかける。


「私は、勇者として防衛拠点から出撃した日の夜に、野営地で見張りをしていた。そこまでの記憶はあるが、そこから先は分からない。気づいたらここにいたのだ」


 という事は、あの部隊に俺以外の勇者がいたのか。何も教えられてないぞ。


「教官、それは本当なのか?」


「あぁ、そいつは勇者としてあの部隊にいたぞ。確か、お前とは違うテントにいたはずだ」


 見張りをしていて、気がついたらここにいた……ってあの見張り中に寝ていた奴か!

 つまり、あれは呪いによって魔族の姿に見えていた人間だったという事か……

 マジで人間と魔族の差が分からない。どう見ても魔族だったし、そいつも首を刎ねたはずだ。それでも俺の時とは異なり、首輪には当たらずに死んだって事か。

 クソっ。見分けるのなんて無理じゃねえか。やっぱり首輪を作ったクソ野郎を探して、どうにかして首輪を外す方法や見えるようにする方法を教えてもらわないと家族を救えない。

 とりあえず、助けられなくてすまない。俺は心の中で彼に謝った。



「はぁ……ひとまず事情は理解した。それじゃあ今回の提案内容だが」


 これ以上彼について考えるのは止めた。

 それよりも、この先の行動指針と目標か。今の流れをそのまま継続する形だろうな。


「人類軍の防衛拠点へと戻り、魔王軍の第2防衛拠点の情報を提供する。そして、少し休んでから再び魔王軍の第2防衛拠点へと侵攻する。今度はレイブン司令官の側近を殺して、呪いの首輪や勇者がどこから連れてこられたかの情報を得る事を目標としたい」


 7日間でそこまでやるのは難しいかもしれないが、方向性としては間違ってないのでこれでいいだろう。


「それでは、議長から提案された内容について、各議員は審議をお願いします」


 アナウンスの声が終わると同時に手を上げたのは小隊長だった。


「提案された行動は人類軍を利するものであり、魔王軍を害するものだ。そのような行動は断固として反対である!」


 前回と同じ反応だな。だが、今回はそれで終わらなかった。


「蘭は人間の姿にも魔族の姿にもなれるのだろう?

 それならば、今度は人間の姿となり、人類の防衛拠点を内側から破壊工作をするべきだ」


 小隊長の後に続いて意見を出したのはガートナー教官だった。小隊長のような感情論ではなく、具体的な内容を発言するのは、さすが教官だな。

 でも、それを参考にするかどうかを決めるのは、議長である俺の権限なんだよ。



「それでは双方の意見を総括する。今週の至上命題として、『第2防衛拠点の情報を人類軍へ提供して、休んだ後、第2防衛拠点へ侵攻して、レイブン司令官の側近を殺す事』を提案する」


 総括なんて形だけのものであって、魔族側の意見なんて聞く必要がない。俺の考えを修正するつもりは微塵もなかった。


「それでは議長からの総括案に対して、賛成の議員は挙手をお願いします」


 アナウンスの声に反応して、人類側議員の3人が手を挙げた。


「反対多数のため、否決されました。議長は新たな方針を提示して下さい」


 ……え?

 一瞬思考が停止した。魔族側の議員の方が多いから否決されるかも、とは思っていたが、否決されると新たな方針を提示しないといけないのか。

 それはつまり、魔族側が賛成するようなものを提示しろっていうのか? ありえないだろう。


「じゃあ、『第2防衛拠点の情報を人類軍へ提供して、身体をしっかりと休める事』を提案する」


 どうせ7日間で侵攻まではできないだろうから、休む所までを至上命題として提案してやった。これでどうだ?

 だが。


「反対多数のため、否決されました。議長は新たな方針を提示して下さい」


 これでも否決か。クソっ。何度だってやってやる。





 否決。否決。否決。何度やってもダメだ。言葉を変え、条件を緩め、何度提案しても、左側に座る7体の魔族どもは手を挙げない。これで10回は否決されたぞ。人類軍に少しでも有利な内容じゃダメだってのか。

 というか、いつまで続くんだよ、これ。決まるまで続けるのか? それまで俺はここから出られないのか?

 外は時間が過ぎているのか、教官の記憶を見た時のようにほぼ過ぎていないのか。後者ならいいが、前者の場合は、起きたら次の日の夜でした、とかありえるぞ。


 あぁー、もう面倒くさい!


「じゃあ、『人間の姿となり、人類の防衛拠点を内側から破壊工作をする事』を提案してやるよ!」


 半ば自暴自棄になり、教官の意見をそのまま怒鳴るように提案してやった。

 勝手にしろ。さっさとここから出して、現実に戻してくれ。


「それでは議長からの総括案に対して、賛成の議員は挙手をお願いします」


 アナウンスの声に反応して、魔族側議員の7体が手を挙げた。


「賛成多数のため、可決されました。総括案が今週の至上命題となります」


 まぁそうなるだろうよ。


「それでは、議長は至上命題に基づいた行動をお願いします。至上命題に逆らう行動を取った場合は、議長解任決議が提出される可能性がありますのでご注意下さい。

 次は7日後に開催します。それでは、これにて第2回円卓議会を閉会します。お疲れ様でした」


 さて、ようやく終わったな。これでこの空間から解放される。


「議長。貴様の行動を楽しみにしているぞ」


 椅子から立ち上がりながら、小隊長は勝ち誇ったように俺へと声をかけてから消えていった。

 楽しい事になんてなるかよ。

 至上命題なんて関係無い。俺のやりたいようにやらせてもらうだけだ。


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