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呪われていた勇者は世界を喰い尽くす ~殺すたびに増える魔力と記憶、そして死者の議席~  作者: 祐祐
第1章

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第13話:情報整理

 これがあの教官の記憶か。

 記憶を見終えて、ゆっくりと開けた俺の目の前にあるロウソクはほとんど溶けていない。これだけの記憶を見ても、現実世界では数分しか経っていないらしい。このまま全部の記憶を見てもいいけど、これ以上の有益な情報は無いだろう。入隊前の話とか軍に関係ない個人的な嗜好や日常生活についてなど知りたくもない。


 それにしても、教官の記憶の中で気になった点がいくつかある。羅列すると、

 特務部隊は勇者のための部隊であり、小隊に必ず勇者が1人はいる事。

 勇者は魔王軍にいる人間であり、人類軍との戦いで使える兵士として育てられていた事。

 勇者には呪いの首輪という見えない呪具が付けられていて、周りからは魔族の姿に見えている一方、本人は魔族が人間に、人間が魔族に見えている事。

 俺は魔喰いスキルでは、教官が思ったほど強くならなかった事。

 そんな所か。


 呪いの効果は予想していた通りの内容だったが、確信に変わった。そして、俺の家族も俺が人間だと認識していたのだから、呪いの首輪を付けていた事になる。

 という事は、呪いの首輪は勇者だから付けられていた訳ではなく、魔王軍の元にいる人間は全員付けられているのか。

 それだと、今の呪いが解かれた俺は魔族と魔族に見える人間の違いが分からないという事になり、家族かどうかを見ても分からない事になる。人魔両性スキルで魔族の姿となっていれば、家族からは俺だと分かるだろうが、俺が家族を探すのはかなり難しい事になりそうだ。



 いや、分からないなら聞けばいい。

 目を閉じて、自分の脳に語りかける。


(教官、呪いが解けた俺は、呪いのかけられている家族を認識できるのか?)


『できないと思うぞ。そのように説明されたからな』


 俺の目の前に現れた教官は、首を横に振りながらそう答えた。それだと、もし再会できたとしても、俺は家族をこの手で敵として斬ってしまうかもしれないのか……


(じゃあ、呪いの首輪を作った奴なら分かるのか?)


『分かるかも知れないが、俺は誰が作ったか知らない』


(呪いの首輪について、効果以外に知っている事はあるか?)


『お前の認識以上の事は知らない』


 ダメか。知っていればそいつに解かせたり、何か方法が見つかるかと思ったが。教官には思ったよりも情報が伝えられていないな。重要な機密情報だったのだろうか。


(あともう1つ聞きたい。俺も含めて、勇者がどこから第2防衛拠点に連れてこられたのか分かるか?)


『いや、俺は知らない。いつの間にか第2防衛拠点にいたからな。レイブン殿なら知っているかもしれないが』


 場所が分かればそこに行ってみたかったが、呪いの首輪と同様に、教官では知っている事に限界があるな。

 そうなると、次は教官よりも情報を知っていそうな魔族を殺す必要がある。


(教官より首輪や勇者について知っていそうな奴って誰だ?)


『レイブン殿とその側近だろう。私は特務部隊のトップだったから、それ以上となると防衛拠点全体のトップ陣だろう』


 レイブンの強さは教官の記憶で見た。年をとっていても、あれより弱くなっているとは考えない方がいいだろう。

 どれだけ殺して魔喰いスキルを発動させれば、俺はレイブンを超えられるだろうか。


 レイブンを狙うのは自殺行為だ。そうすると次の狙いはレイブンの側近か。

 確実に力をつけると同時に、レイブンの側近と一対一で会う機会を作らないといけない。その上で側近を油断させるような状況でなければ殺せないだろう。側近ならそれなりに偉いはずで、軍でそのポジションになるためには強くなければ無理だろう。



 それにしても、俺は勇者と言われて、敵軍を倒す事に喜びを感じていたが、対人類軍の使える兵士として育てられていたのか。

 こんな事を考えたのは誰だ……少なくとも教官は知らない。レイブンの言葉を思い出すと、レイブンより上、魔王あたりが考えていそうだったな。ますます魔王は殺さなければいけない存在になったわけだ。時間はかかるかもしれないが、必ずお前まで辿り着いて、その息の根を止めてやる。



 とりあえず、教官の記憶で知りたいものは知れただろうか。ひとまず、重要な情報については人類軍にも伝える必要があるため、紙に書いてまとめていく。その最中、ペンを握る手が時折不自然に震えている事に気づく……恐怖ではない。これは怒りだ。俺を、家族を、人間を呪いの首輪で操っていた奴らへの、腹の底から湧き上がる殺意だ。



 全ての情報を書き終えた所で、俺は眠りにつく事にした。






 翌朝。起床して、朝食を食べてから出発する。


『スキル人魔両性を発動します』


 魔王軍の第2防衛拠点から人類軍の防衛拠点までは最短4日の距離であり、ここまで2日経過したので、このあたりが中間地点だろう。そして、ここからは人類軍の偵察部隊の方が多くなっていくはずだ。

 そのため、ここからは人間の姿に戻って進んでいく。魔族の姿で進んでいった場合、近接戦闘なら人間の姿に戻って説明すればいいが、遠距離攻撃とかで不意打ちを喰らったら人間の姿に戻る前に殺される可能性があるからな。

 逆に魔王軍の偵察部隊に遭遇した場合は、どちらの姿でいても殺すだけなので、まぁ人間の姿でいて問題は無いだろう。



 だが、その日は誰にも遭遇せずに夜を迎えた。

 いよいよ明日の夕方頃には人類軍の防衛拠点に到着できるだろう。そこまで辿り着けば、今回の魔王軍への潜入任務は終わりだ。到着したら、少しゆっくり休ませてもらおう。

 任務の終わりが近づいている事に安堵しながら、今夜も眠りについた。





「それでは、ただいまより第2回円卓議会を開始します」


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