俺が勇気を出すらしい
少年と少女は、ウルフの一団と戦っているようだ。
剣を必死に振り回して、ウルフの接近を防いで、少女を守っているのだろう。
それでも、ダメージを食らっているようだが、少女が魔法を唱えると、白い光が傷を癒す。
回復した少年は、必死に攻撃をして、ウルフを倒そうとしている。
しかし、大振りされた剣は、ウルフにかすりすらしない。
「時間の問題だよなぁ…」
このままでは、魔法が使えなくなって、少年が死に、少女も死ぬ未来しか見えない。
見た感じ武器も、初期武器なので、レベルも高くはないだろう。
助けてもいいものか、こういう時の判断は困る。
マナー上、戦闘中の敵を横から攻撃するのはよくないことなのだ。
助けたつもりで、余計なお世話だったら、目も当てられないし、正直恥ずかしい。
訊いてみればいいのだろうが、話しかけるのがなぁ…。
「いっそ助けてとか言ってくれたらなぁ」
毎度のことながら、こういう場面は苦手だ。
助けたほうがいいと思う反面、求められていないので、助けるべきではないと思う。
現実でも、何かあった場合、考え込み、悩み続けて、行動は起こせない。
いつも考え込んだすえに、諦める事が大半で、後悔するのだ。
どうして勇気を出して、声をかけなかったのか?と。
しばらくは、罪悪感に押しつぶされるハメになる。
しかし、性分みたいなものなので、どうしようもない。
遠巻きから眺めているのも、虐めを傍観しているみたいで、気分が悪いな…。
だからといって、ここで放置して帰るのも、目覚めが悪くてできない。
他に人はいないのだろうか。周りを見渡してみるが、このエリアにはいない。
ウルフが怖いんだよ、誰か助けてあげてくれよ。
そうこう考えていると、左腕を噛まれて、少年が地面に倒される。
地面に倒されて、噛みつきで拘束されたら、どう足掻いても無理だろう。
死の記憶が蘇る…怖い…怖い…怖い…。
相手が悪かったのだ、助けを求めないのが悪いのだ、俺には助ける勇気がない。
言い訳ばかりが、頭に浮かぶ。
俺は、物語の主人公ではないのだ。
そこで、涙を浮かべる少女と目が合ってしまった。
「・・・・・」
何を言っているか、聞こえたりはしなかった。
それでも…助けてと聞こえたような気がした。




