第9話:やらない偽善よりやる偽善 - 篠崎透視点
未来の知識を基に、過去に戻った俺が未来を変える!
よし、やってやんぞーっとテンション上げて始めたことは、そりゃぁ、記憶を書き出すことだよな。
悪役令嬢系のタイムリープをする主人公が必ずやるやつ。
うん、俺、こっち系には詳しいんだ、これも知識チートの一つだな。
もっと過去に戻っているなら、大地震で被害を受けた地域の津波被害を阻止とか、世界規模でものすごい死者が出てしまった感染症の蔓延を止めるとか、元首相の暗殺を止めるとか、そういうこともワンチャンできたのかもしれないけどなぁ。
今はもう全部起きちゃった後なんだよなぁ。
そこまで神様も都合よく巻き戻してはくれなかったかぁ。
まぁ仕方ない。
とりあえず、ネット小説でのあるある展開を思い出していくと、まぁ、ビットコイン出てくるよね。
何倍くらいになるのかわかんないけど、確かみんな金持ちになれていたから、まぁ間違いないな。きっと超金持ちになるやつ。
手持ちの貯金。25万円。
うん、18歳から始めるビットコインキャンペーンをやっているから、買っちゃうか。うん。大金持ち確定コースだ。やばいな、これ。
こういう泡銭で稼いだ金を、震災だとか人助けが必要になった時の支援金にする。うん。さすが俺、とても主人公っぽい。
ラノベ展開なら、金があれば貧民を救ったり、奴隷を買って解放したり、まぁそういう展開になるんだろうから、俺も人助けには金がいるんだ。ズルじゃないぞ、ズルじゃ。
異世界に行ってしまった電車の乗客のみんなは、今頃魔王を倒す旅に出たりしているんだろうか。どうか、巻き込まれ転移もののように、追放もの路線になっていないことを願う。
よし。
まぁ、一旦それは置いておこう。
まずは、大事件を覚えているうちに書き残そう。
2022年
……あれ?何あったっけ?
2023年
コロナ5類
……マスクしなくてもいいやってなったんだよな?
2024年
正月の地震と飛行機事故
テレビで家族と一緒に見てたな。
流石に地震そのものは止められないけど、事前に警告なら出せるか?
予言者になっちゃうか、だけどなぁ、う〜ん、かなり胡散臭いよなぁ。
つぅか、予言できるほど時間だとか場所だとか覚えてないじゃん。だめじゃん。
2025年
米高くなった
転売ヤーはよくない。うん。
……
うん、もっとたくさん事件や出来事を書き出そうと思ったけど、全然覚えてないもんだなぁ。
正直なところ、テレビで見たニュースの詳細よりも、米が買えなくて、母さんがヒィヒィ言ってたことの方がよく覚えてる。
う〜ん、俺、ひょっとして記憶力なさすぎ?
だって、やっぱりよそごとっていうかね、申し訳ないけどテレビの中の出来事って感じで、覚えてないんだよな〜。
やっぱり、電車の事故を止めることが役目なのかなぁ?
神様さぁー、もうちょっとヒントを与えておく必要あると思うんだよなぁ。
ーーー
一旦仕切り直そう。
身近なところだと、ちょろちょろ覚えていることもあるもんだ。
確か12月の頭に、北海道に出張に行った親父の飛行機が大雪で欠航しちゃって、泊まるホテルがなくて難儀してたとか、陽香が冬休みに夢の国にグッズを買いに行ったのに転売ヤーに買い占められちゃってて何も買えなかったとか。
ばぁちゃんがスマホを契約しに行ったら、いらないオプションいっぱいつけられてて、文句言いに行ったけど返金されなくて、半年以上無駄金払いっぱなしになってたとか。
親父のは当日最寄りのホテルを予約しておいてやるか。
陽香は、どうせウサギのキャラに乗り換えるんだから、先にそっちをお勧めしとけば夢の国に行くこともなさそうだし。
ばあちゃんは次の祝日に遊びに行って、俺がスマホを買うのに同伴すれば良さそうだしな。
……う〜ん。まぁ、身内ネタしか思い浮かばない。
これじゃぁ、かなり主人公っぽくないな。
ご近所ネタも無いわけではないけど……いや、一旦フラットに考えよう。
周りのみんなが困ってたことリストを作ろう。
ダイナミックさは足りないけど、みんなの役に立つならまぁいいか。
う〜ん、やっぱり俺って、ちょっとモブっぽいんだよなぁ〜。
ーーー
「ばあちゃん、スマホデビューしたんだねぇ!
さっきねぇ、ばあちゃんからLIMEきたんだ!めっちゃおもろいスタンプきたのよ、見てみて。
謎のセンスおもろ〜」
「ふっふっふ。
何を隠そう、俺のコレクションを紹介したんだぜ!
このゴリラ、イカすだろ?」
「えー、兄ちゃんのセンスか、クソダサ」
「なんでだよ、いいだろ、ゴリラ!」
陽香がLIMEの画面を見せながら、ばあちゃんがお土産に持たせてくれた笹団子を食べている。
この間の祝日に合わせて新幹線で新潟まで足を運んだ俺は、無事にミッションをやり遂げたぜ!
母さんと俺も笹団子にかぶりつきながらまったりお茶タイムだ。
「でも、まさか透が、お義母さんのスマホを買う手伝いするためだけに新潟に行くとは思ってなかったわ〜。」
「ま〜、老人だけでショップに行かせたら、訳もわからんオプションつけまくられるから、気をつけないとなんだよ。
あれさー、数件しかない電話帳をうつすのに5000円もとられちゃったり、聞きもしない音楽フリープラン入らされたり、結構悪どいんだぜ?」
「へぇ、透、詳しいのね。」
「ん、まぁねぇ。半年で5、6万くらい、余計になんだかんだ取られてたって言ってたし……。
あ、ちゃうちゃう。前はね、前は。
いや、そのくらい取られることになってたってやつで。」
「6万?え?1ヶ月1万円上乗せ?うわ、まじ?ぼったくりじゃん!」
「そーそー、Wi-Fi契約とか、ネット使わないのに最大のギガプランとか、有料動画プランとか、まぁまず色々お勧めしてくるんだよ。
ま、今回は俺が食い止めたんで、安心していいぜ。
格安プランで月に4000円くらいの支払いなら、ガラケーよりちょっと割高かも知んないけど、LIMEとか無料で話せる方法教えてきたから、負担少なくなったでしょ。」
「やだ、ほんと詳しいのね。」
「ま〜ね〜。」
「だけど、お義母さんからお小遣いもらって帰ってくるなら、結局あんまり支出変わってないんじゃないの?も〜、年金生活なんだから、遠慮してきてよね」
「あ、いや、まぁ、それはちょっと想定外なんですけど」
そう。
俺はお小遣いをもらってしまったんだ。
これでご飯でも食べてね〜っていうから、ありがとー!って呑気にもらってしまったら、ばあちゃんポチ袋に3万入ってんだもん。まじでびびった。
ま〜、俺の新幹線代を考えたら確かに支出は大きかったんだけど、俺バイトもしてるからいいって言ったのになぁ。
もっと颯爽と、こう、未来変えて、ばあちゃんが損しなくなったらいいとおもったんだけど、まぁすんなり上手くは行かないもんだ。
ピロリン♪
俺のスマホが鳴る。
『とおるくん すまほ ありがとうね またきてね』
短い文章と一緒に、ゴリラがバナナを持って喜んでいるスタンプが送られてきた。
……うん、まぁ、上手くいってんじゃん。
俺はモブ系主人公だからな。こう、ちょっとずつ身近なところから変えていけばいいんだよな。




