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第10話:炎上と炎上 - 野坂エリ視点

「明日のレースはねぇ、1頭だけ負担重量で55kgになってる子がいるんだけどね、多分その子くるよ〜

 今日夢に見たから、多分くるんじゃないかな〜?」



 時間は21時を回ったところ。

 日曜夜で、20時過ぎから配信を始めて、1時間枠の予定で、終わり間際で予言をぽろり。

 多分もうそのパターンが覚えられ始めちゃったからか、45分過ぎた頃から視聴者数がグッと増えた。



 >おぉ、ここにきての予言ありがたい〜!

 >とすると、すでに重賞勝ってるあの馬か!

 >1kgの差ってそんなにすごいの?

 >いや、流石に不利すぎるんじゃ?



「ん〜、まぁ、信じるもはっけよーい♪だねぇ。

 まぁ、前にG3勝ってるし、能力はある子だと思うよ〜」



 >それでも俺はヒップちゃんにかけたい

 >ソースィちゃんは、単勝の予言だけなの?

 >馬連とか3連複まで予言はできないの?



「基本、お馬さんは好きな子に掛けるのがいいと思うんだよねぇ

 推し活的な?

 ヒップちゃんのパパ、キタサンだったかなぁ?

 アプリのゲームでもちょうど話題だよねぇ。その関連で推しちゃうのもありだよねぇ」



 >リアルだとパパなのに、アプリだと娘になる世界

 >それにしても、ソースィはウマのゲームにも詳しいのか

 >なんだ、俺たちの仲間か



「まぁ、とりあえず、明日はヒップちゃんの日じゃないと思うんだよねぇ。

 負担重量チェックしてみてね〜」



 >よし、今日の見どころ終了

 >むしろこれだけでいい説

 >競馬予想師ソースィとなってくれても一向にかまわん。



 まじで、勝ち馬の情報しか求めてないって感じ、腹が立つね。

 思わず眉間に皺がよる。

 ある意味、フェイストラッキングを細かく反映できない安いモデルでよかった。

 今度は発言タイミングを前半に変えてやろうか。



 >まじで、中の人、競馬関係者だろ?

 >負担重量とか知ってる女子高生っている?

 >ガチで競馬やってる人しか知らなそうではある



「あたしはただの女子高生だよ〜

 まぁ、でもあたしも、競馬の用語とかを知ったのはつい最近でねぇ

 擬人化のゲームだとわからないけど、レトロゲーだと結構そのあたりの設定重要視されてたんだよね〜」



 >やばい、今度は年齢詐称疑惑になるやつ

 >中の人アラフォー説

 >やばい、流石にやばいw



「も〜、だから女子高生だってば〜」



 気がついたら同時接続者数が400人以上減っていた。


 思わずイライラが溢れて、ボールペンでノートにグリグリと渦を描き殴ってしまう。

 こういう「いじられ」は好きじゃない。

 利用されている感じはもっと好きじゃない。



 >他に予言ないの?

 >馬専門すぎてな、予言者の肩書きだとな



「……」



 少しばかり話題に出すかを悩んだけど、まぁいいや。

 手元のノートに書いたメモ。



「……予言……。

 あるよ、予言。


 湾岸エリア工場地域で、多分今夜かな?

 大きめの冷凍倉庫が見えるんだけど、そこ火事になるよ。

 電気設備がショートして、火が出たところで、今夜の風の強さで火が結構広がるよ。」



 >は?

 >え、まじ?

 >流石に適当すぎるだろ、どこの倉庫だよ



「K市の臨海部」



 >え



「K市の臨海部の、マリンフロスト 臨海冷凍倉庫」



 >まじか?

 >流石に笑えんって

 >これ、流石に実在するやつじゃねぇの?

 >そう言うのはちょっとどうかとおもうよ



「黒い煙と、報道で映ったニュース画像が見えたよ。

 まぁ、あたしは見えたものしか予言できないから、嘘か本当か、今はわかんないよ」



 チャット欄が批難めいてきて、すぐに配信を終了した。

 それでもアーカイブのコメント欄がうるさくなってきたので、面倒になってアーカイブを非表示にして、PCの電源をオフにした。


 なんだか、モヤモヤする。


 その後間も無く、今日の配信の切り抜きが、誰かに勝手に投稿されて、不謹慎だとたたくコメントがついていた。


 なにこれ、まじでムカつく。

 勝手に切り抜くなって言ってあるのに。

 SNSでのコメントも荒れ始めてきて、あ〜、これ炎上じゃんって気がついたところで、一気に冷めた。



 ばかみたい。

 明日になれば、嘘か本当かわかるのに。



 ーーー



 1月9日AM2時


 K市の臨海部の埋立地で、火災が発生。

 巡回中の警備員により、119番通報があったものの、沿岸部からの暴風により火の勢いが増し、消防車が到着する2時20分頃には鉄骨造4階建ての施設の1/3に延焼していた。

 AM3時半には、応援要請された消防車6台による体制での消火活動となり、高速道路にも黒煙がかかり、明け方のニュースではその第一報が報じられた。



 ーーー




 明け方、スマホのコメント通知の振動で目を覚ました。

 立て続けに振動するスマホを操作して、通知をオフにした。



「まじでうざい」



 次に目を覚ましたのは朝9時。

 恵子さんが朝ごはんを用意していた。

 せっかくの休日なのに、もう少し寝ていてもいいかと思ったものの、今日のレースを購入してもらう予定だったので、渋々起きた。


 テレビをつけると、予言通りに火災のニュースが流れていた。



『今日未明、K市の臨海部にある冷凍倉庫で火事があり、現在も鎮火には至っておらず、現場周辺では黒い煙が広い範囲に広がっておりーー』



「……火事、やっぱりおきたか」



 トーストにジャムを塗りながら、明け方の通知の数の原因はこれだったかと納得をした。



『倉庫には当時、作業員と警備員のあわせて5人がいましたが、全員避難して無事だということです。』



「え?」



 1人警備員が死んでたはず?



 そこで気がつく。


 ひょっとして、その警備員。

 リスナーの一人だったんじゃないか?

 自分の配信で変えてしまったんじゃないかと。



 ……ま、それならそれでいいか。




 あたしのチャンネルの登録者数は、この炎上をきっかけにして8万人を超えていた。


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