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この世界ではお金で生きています三章5

 三章ロストアイ討伐5


 勇樹達が湖でロストアイの討伐を行なっていた頃、プロットの街の代表者であるアレックは神殿へと向かっていた。


 神殿の前には立ち入り禁止の立て札があり、見張りの兵士が神殿の警護に当たっていた。


「何か変わったことはあったか?」


「これは代表お疲れ様です。今の所は何も起きてはいませんですし、住民の避難が完了した街の中は静かなものです」


「そうか、破壊された女神像を見たい。中に入らせてもらうぞ」


「分かりました。ですが、女神像は破壊されているので怪我をしないようにお気を付けください」


 見張りの兵士の横を通り過ぎ、アレックは神殿の中に入る。


 神殿内は静かであり、祭壇の上にある破壊された女神像以外はどこも変わった様子はない。


 祭壇を上り、上半身を失った女神像の中を覗く。ガルドの話した通りに、女神像の中にあった結界の核は木っ端微塵に壊されていた。


「疑っていた訳ではないが、ガルドの奴が話していたことは本当のようじゃな。しかし、一体誰が何の目的で結界を破壊したのか」


 世界中で起きている災害や、外来魔物の移住などを考えると、魔王が現れたことが関係しているとしか思えない。


 この街には結界が張ってあり、魔物が街に潜入することは不可能となっている。


 やはり、マッシュの言う通りに街の住人の誰かが魔王軍と繋がり、ここに来て結界の核を破壊したのだろう。


 だけど一体誰が破壊したのだ。


 破壊された女神像を調べてみると魔法が使用された痕跡が残っていた。


 もう少し、詳しく調べてみると、残った女神像の下半身の縁には凍った痕と、熱された痕が残っており、犯人は火炎系魔法と氷系の魔法を交互に使い、女神像を脆くさせたのだろうと推察することができる。


 しかし、脆くしただけでは女神像を破壊することはできない。この現場に証拠となる物は残されてはいないが、おそらく女神像を脆くさせた後に、鈍器のようなもので上半身を木っ端微塵にしたのだろう。


 魔法と鈍器のような物を使用し、女神像を破壊したことは分かった。だが、この街の住人は自分以外は魔法を使用できない。


 となれば、誰かが魔法を使用することができる人物を使って女神像を破壊させたと考えるしかない。


 つまり、犯人は二人組の可能性が出てくる。


 一人はこの女神像の秘密を知っている街の住人、もう一人は魔法が使えるこの街の住人以外の人物だ。


 一番に頭の中に思い浮かぶ人物は、勇樹とその仲間である榛名だが、あの二人の可能性は極めて低いだろう。何せ自分が直接対談しているのだ。彼等からは悪しき心を感じなかった。あの二人以外の人物で間違いないだずだ。


 後で、この街を訪れた余所者がいなかったか、門番の兵に尋ねてみることにしよう。


 次にアレックは犯人の侵入と逃走経路について考えた。


 犯人はどのような手段でこの神殿内に侵入することができたのだろうか。この神殿は結界の核の隠し場所、大切な場所なので警備は厳重にしてある。交代制で二十四時間神殿付近には見張りの兵士を二人配備しているのだ。怪しい人物がおれば確実に見つけ、報告が上がっているはず。


 侵入したのが夜ではなく、昼間だったとしたら侵入すること事態は簡単だ。何せ昼間は気軽に女神像を参拝してもらおうと一般の人に公開しているのだ。それならば、昼間に一般客として神殿内に侵入した後に、どこかに身を潜め、夜になるのを待てば、犯行は可能となる。


 だが、それならば犯人は何処に身を隠していた。この神殿内は祭壇と女神像があるだけの只広いだけの空間である。隠れられそうな場所など探してもどこにも見つからない。それに神殿を封鎖するときは神殿内を くまなく調べ、残った人物がいないか確認したのちに封鎖を行う。上手く隠れたとしても見つかる可能性の方が高い。やっぱり昼間に潜入したという線はないだろう。


 となれば、先程の考え事態が間違いなのだ。犯人は昼間潜入したのではなく、夜に潜入したのだ。だが、その方法が分からない。


 悩みながら歩いているとアレックは祭壇前で躓き、前方に転倒してしまった。


「あたたたた、躓いて転んでしまったか。やはりもう年であるな。ワシがフゥーランドのように若かった頃は、例え躓こうと転倒するなどの醜態をさらすことなどなかったというのに」


 アレックは独り言を呟く。独り言が多くなってしまったのも年によるものなのだろう。


 躓く原因となった物を見ると、一つの床のタイルが劣化によるものなのか、傾いており、段差になっていたのだ。


「この場所が段差になっておるとはな、祭壇前ということもある。早く業者の人にでも頼んで直してもらうとしよう」


 傾いている段差の具合を調べていると、このタイルは他タイルと比べると二回り程小さく、横にズラすと手が入るぐらいの隙間が空いていることに気付いた。


「このタイル、動かすことが出来る。もしかして取り外すことが可能なのか」


 床のタイルを取り外そうと試みる。床のタイルは一メートル四方の大きさで、重さも一枚十キログラムある。しかし、老体であるアレックにはそれすらもとてつもなく重く感じた。


「流石に老体であるワシには重い。だが、負けはせぬぞ。老骨に鞭を打ってでも退かせてみせる」


 力一杯に両手で持ち上げると火事場の馬鹿力が発揮されたのか、タイルは僅かに持ち上がり、少しずつタイルをズラしていく。


 タイルがズレたことにより、隙間ができて奥の方を見ることができた。どうやらタイルの下にはタイルと同じ大きさの穴が隠されており、地下へと降りることができそうである。


 残った力を振り絞り、タイルを完全に退かすと地下へと繋がる穴の奥を見下ろす。


「まさかこのような穴があったとは、おそらく犯人はここを経由して神殿内に潜入すると、女神像を破壊し、その後に結界の核を破壊して再びこの中に入り、この場から去っていったのだろう」


この方法なら、神殿が封鎖された後の夜間に神殿に侵入して結界を壊すことは可能だ。


 だが、ここでまた疑問が生まれる。侵入方法と逃走経路はわかり、女神像を破壊した方法もある程度は予測が付いたが、もし、魔法を使った場合は神殿内ということもあって音が響き、見張りの兵士が気付くはずだ。それでも報告がなかったとなると、見張りの兵士がこの街の結界を破壊するように指示を出した首謀者である可能性が高くなる。


 地下へと繋がるこの空間は気になるが、先に兵士達から情報収集をすることにしよう。


 そのように決めると、アレックは神殿を出て目の前にいる兵士に尋ねようとすると、兵士の方から話しかけてきた。


「代表、何か分かりましたか」


「ああ、新に分かったことがある。この神殿にはワシの許可がない限り、誰も入れないようにしておいてくれ」


「分かりました。まぁ、殆どの住民が避難をしていますし、動けれる兵士は魔物の進行を止めるために森にいます。なので、ここを訪れる人は多分いないでしょう。ですが、ご命令には全力で応えさせていただきます」


 見張りの兵士は敬礼をすると笑みを浮かべ、白い歯を見せる。


「そうだ。一昨日の夜、神殿の見張りをしていた兵士は誰かわかるか」


「一昨日の夜、見張り役だったのは私と私の親友ですが、彼は魔物討伐に出ています」


「そうか、一昨日の夜は何か変な音とかは聞こえなかったか。例えば女神像が破壊される前に神殿内から変な音が聞こえたとか」


 兵士の表情に注意を払いながらアレックは尋ねる。もし、彼が首謀者だった場合は質問の最中に僅かながらでも表情に変化があるはずだ。


「いえ、私がここで見張っていた限りだと何も聞こえませんでした」


 兵士の今の発言にアレックは疑問に思った。何故彼は『見張っていた限り』と言ったのだ?普通であれば見張っていたが、何も聞こえなかったと発言するはず。


 限りと言うことは、見張っていなかった時間帯があると言うことだ。


「限りと言うことは、見張っていなかった時間帯があると言うことで間違いないな」


「あはは、代表には隠し事ができませんね。そうなんです。一昨日の夜なのですけど、私と親友は気が付くと神殿から離れた宿屋付近にいたのですよ。慌てて直ぐに持ち場に戻ったのですが、二人揃って何であの場所にいたのかわからないのです」


 見張りの兵士の発言が正しいのかを確認するには、もう一人の見張りをしていた兵士に確認を取る必要がある。


 だが、彼の言葉を信じるのならば、二人は犠牲者だ。転移魔法などは聞いたことがない。だが、暗示をかける魔法であれば、医療目的で存在している。それを悪用し、二人に暗示魔法を掛け、宿屋まで移動させれば、その時間帯は神殿周囲には誰も見張りがいなくなり、誰にも気付かれずに犯行を行うことが出来る。


 神殿から宿屋までは歩いて五分、往復で十分だ。それだけの時間があれば犯行を行う時間としては十分すぎる。


「見張りをしていた際に、誰かここを訪れた者はいなかったか」


「いえ誰もいませんでした」


「そうか」


 もし、ここに誰かが訪れておれば、その人物が犯人だ。兵士二人に暗示魔法を掛け、扉を開けさせた後に神殿内に進入、犯人が侵入した後に扉を閉めさせて宿屋に向かわせた。その間に女神像を破壊し、本命である結界の核を破壊した後にあの地下へと続く穴の中に逃げ込み、逃走がばれないようにタイルを元に戻したのだと考えていたがそうではないようだ。


 犯人は夜になる前から兵士と接触し、そこで時間差で発動する暗示魔法を掛けたのだろう。


「一昨日は誰と会っていたか思い出せるか」


「思い出すも何も、私達は兵士ですよ。毎日のように仲間の兵士達と行動してみますし、街の住人とも交流しているのですよ、一々覚えて入られませんよ」


「それもそうか。犯人への手掛かりになるかと思って訊いてみたのだが」


「そうですね、敢えて言うのであれば、私も所属しているグループのメンバー、それにサンスさん、ガルドさん、ミーシャさん、フゥーランド隊長、マッシュさんですね」


 兵士が言った人物は、兵士の所属するグループのメンバー以外は全員アレックの知っている人物である。


 まさか、このメンバーに犯人がいるのか。


 まだ可能性があると言うだけであって、確信ではない。決め付けるのはまだ早い。それに彼が思い出せないだけであって他にも人物がいる可能性だってある。


 特徴的で印象に残りやすい人物ではない限り、接触したとしても忘れてしまう方が多い。


 今ので少しは犯人探しに近付いた。次はあの穴の先が何処に繋がっているのか確かめよう。


「そうか参考にさせてもらう。ワシはもう一度神殿内を調べてくる」


「はい、分かりました」


 踵を返すとアレックは再び神殿内へと入り、もう一度穴を調べる。


 穴には縄梯子がかけてあり、上り下りをするのには苦はないようだ。


 縄梯子に足をかけ、三段程下に降りた所で、タイルを元の位置に戻し、そのまま地面に辿り着くまで降り続けた。

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