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この世界ではお金で生きています二章

ついに第二章まで話しを進めることができました。この第二章でやっとメインヒロインが登場し、勇樹も本格的な冒険、魔物との戦闘シーンが多めに出てくると思います。戦闘シーンは私なりに力を入れて書いているつもりですので、その辺も楽しんでいただければと思います。

 二章住み着いた魔物


 森の入り口の門番に依頼書を見せ、森の中に入る許可を貰う。


 門番の話では、門から半径百メートルの範囲は特殊な結界が張られており、結界内に入れば魔物はそれ以上侵入することができないらしい。その目印として、結界との境目に等間隔で石柱が設置されているとのことだ。


 その情報はありがたい。もし、自分よりも強い魔物に襲われてしまっても、結界内に逃げ切ることができれば安心できる。


 しかし、この結界にもメリットばかりではない。結界内での攻撃を行うことができないのだ。銃撃を行なっても、魔法を放っても結界が遮り、結界の外へ貫通することがないとのこと。つまり安全地帯からの攻撃は不可能ということになる。


 門を潜る前に念のためにアスハが言っていた女の子がここに来たのか聞いてみた。すると、そのような子は見ていないという。しかし、門番はこの門に来る前に門が開けられた痕跡があったと言い、もしかしたら門番のいない時間帯を狙って森の中に入ったのだろう。


 情報提供をしてくれた門番にお礼を言いつつ、勇樹は森の中に入った。


 借りた森の地図を開き、薬草の生えていると言われる場所を確認する。


 地図には数ヶ所に赤丸が付けられ、分かりやすいように記されていた。


「ここから一番近い場所は崖の下みたいだな。取り敢えずはそっちに向かってみるか」


 一番近い場所にある可能性はおそらく低いだろう。安全な場所であれば、遠くまで探しに行くが、この森には魔物も住みついている。危険を冒してまで遠くで探すよりも、安全地帯である結界の近くで探す方を選ぶだろう。


 地図を見ながら森の中を歩いて行くと等間隔で設置されている石柱が見えた。


「ここからが結界の外になるのか」


 マジック袋から天空鳥の剣を取り出し、鞘を抜くと鞘をマジック袋の中に収納する。


「できることなら魔物と対面することは控えたいがな」


 森の地図を折り畳み、片手で地図を見やすくしながら森の中を歩く。


 暫くすると、目的の場所である崖の下に着いた。しかし案の定、薬草は全て取り尽くされているようで、何処を探しても見つかることはなかった。


「やっぱり安全地帯に近い場所は取り尽くされているか」


 ここに薬草が生えていない以上、次の場所へと向かわなければならない。薬草がある場所を記されているのは残り三ヶ所、ここから近い岩場付近、森の中央に位置する大樹付近、そして一番離れている湖のほとりだ。


 この三ヶ所の内、勇樹は一番離れている湖のほとりにするべきだと判断した。


 まず、大半の人なら更に近い場所を探し、順番に遠くの方へと向かって行くだろう。しかし、この地図を見る限り、岩場から大樹の方へと移動しなければならない状態になれば、一度結界付近まで引き返して森の中央に向かわなければならない。そうなれば時間と体力を無駄に消費してしまう。


 それならば、最初に遠くとも湖へと向かいそこで薬草を探せば、薬草がある確率も高いし、落ち着いて休憩を取ることもできる。


 湖へと向かうことを決めた勇樹は地図でルートを確認し、歩き始める。


 早朝に比べると今の時間帯は気温が高くなっている。額からは汗が流れ、喉の渇きさえも感じ始めた。


 湖へと続く一番早い道を選びながら進んでしまったからだろう。最初は凹凸のない真っ平らな地面を歩いていたが、現在は周囲の樹木により天からの光を遮断され、雑草が生い茂り、大小様々な石が転がっている獣道と化した場所を歩いている。


 急がば回れという言葉があるが、まさにこのこと。しかし、今更引き返すと更に時間を消費してしまう。この道を選ぶと決めた以上、この獣道を通り、目的地である湖へと向かわなければならない。


 不幸中の幸いか、今の所魔物と遭遇してはいない。もし…………。


 勇樹は悪寒を感じ、これ以上のことは考えないようにした。あれ以上先のことを考えては、考えたことが現実に起きそうな気がしたからだ。


 足場を気にしながら慎重に歩みを進め、時には邪魔な木の枝や、伸びきった雑草を天空鳥の剣で斬りながら進む。


 三十分程獣道を歩き続けると水の流れる音が聞こえてきた。目的地の湖に近付いているのだろう。


 眼前には光が見え、獣道の出口が見えた。


 勇樹は駆け出し、出口を目指す。


 光は次第に大きくなり、やがて勇樹は獣道から抜け出した。その刹那、彼は足に地面を踏む感覚がないことに気付き、下を向く。


 視界に入ったのは数メートル先に見える湖の水面。今、空中に浮いている状態であることを悟った勇樹はその瞬間、重力により身体を引っ張られる感覚を味わうと背中から落下し、水面に身体が触れた瞬間、湖の水面は弾け、勇樹が中に沈むと水柱が立った。


 湖の中へと沈んでいく。勇樹はそれ程泳ぎが苦手な方ではないが、普段起きないような出来事に遭い、脳が思うように両手両足に指示を出せず、身体の動きがぎこちない。勇樹は頭の中がパニックになりながらも、もがくように必死に両腕を掻き上げ、両足でバタ足を行い水面へと上昇していく。


 次第に息苦しくなり、身体が酸素を求めてくる。苦しむ中、両手両足を動かすとどうにか水面から顔を出し、思い切り酸素を体内に取り入れる。


 岸へと向けて泳ぎ、力を振り絞って陸へと上がろうとするが、水分を含んだ衣服は重く、なかなか陸に上がることができない。しかし、このまま湖の中にいても体力を奪われるだけだ。


 何か方法がないかと周囲を見渡すと十メートル先に浅瀬になっている部分を発見。あそこなら上がることができると判断した勇樹は、できるだけ体力が奪われないように服の中に空気を入れて、浮き輪替わりにすると浅瀬に向かって泳ぐ。


 時間はかかったが、どうにか浅瀬経由で陸へと上がることができた勇樹はそのまま地面に横になり、失った体力を取り戻すために休憩を取る。


 濡れた衣服が身体に張り付き、気持ち悪さを感じるが、今衣服を脱ぐような体力は勇樹には残されてはいなかった。


 幸いにも本日は晴天だ。少し我慢していればそのうち濡れた衣服も乾くだろう。


 なれないことの連続により、勇樹の疲労は限界に達していた。睡魔に襲われ、両の瞼は重くなり、やがて勇樹は瞼を閉じ、眠りについた。


 一時間後、勇樹は息苦しさを感じ、目を覚ます。勇樹の顔面は柔らかく、もふもふとしたものに覆われており、驚いて上体を起こす。


 勇樹の顔面に乗っていたもふもふの正体は野兎だった。野兎はいきなり動いた勇樹にびっくりしたのだろう。後ろ足で地面を軽く蹴り、僅かに跳ねながら彼から離れていく。


 濡れた衣服を来たまま眠ってしまったのがいけなかったのか、勇樹は身体のだるさを感じ、身体の節々が痛む。


 風邪でも引いたのだろうか。だけど、このままこの場所に留まる別けにはいかない。早く薬草を見つけ、街へと戻り、依頼を完遂しなければ。


 立ち上がると周囲を見渡す。すると十メートル先の岩付近に薬草らしき草が生えているのが見える。


 近くとそれは間違いなく薬草だった。


「良かった。それにこんなにも」


 この場は薬草の宝庫みたいで、ここだけで籠一杯分の薬草を手に入れることは可能性だ。


 マジック袋から籠を取り出すと摘んだ薬草を入れ、籠一杯になるとマジック袋の中に収納する。


 作業が終わり、一安心すると空腹を感じ、お腹が音を奏でる。


「そろそろ昼にするか」


 マジック袋から一つの小型の箱を取り出すと蓋をあける。中には白米に野菜や肉などが敷き詰められているお弁当だ。


 勇樹は依頼を開始する前に不慣れのため、長期に渡り依頼を完遂することになるだろうと考え、アイテム屋で30Qで購入したものだ。


 空中から湖に落下し、湖の中に入っても弁当の中身は崩れてもいないし、水が侵入してダメになっている様子はない。普通の袋なら確実に水を吸収して食べられない状態となっている。魔力で収納するマジック袋の性能の良さに勇樹は驚かされる。


 岩を背にして勇樹は弁当を食べ始める。岩を背にすれば、後方からは勇樹の姿が見えない。それにここは見晴らしの良い湖だ。魔物の姿をいち早く察知することもできるだろう。


 周囲の警戒を怠らないまま弁当を味わって食べ始める。だが、道具屋で販売されている弁当だからか、ガルドの作る男の野菜炒めに比べると美味しいとはあまり言えない味付けだった。


 弁当を食べ終わるとゴミをマジック袋に収納する。


 街に戻ったらゴミ箱に捨てるとするか。


 森の地図で場所を確認しようとすると地図がないことに気付いた。マジック袋の中を確認するが、地図は収納されてはいなかった。


 考えられるのは落下の際、手から離れて紛失してしまったのだろう。このままでは紛失料が発生してしまう。どこかに落ちていないか確認すると、自分が落ちたと思われる崖付近に地図らしき紙が落ちているのが見え、勇樹は近く。


 しかし、勇樹よりも早く、全長二メートル程のオオトカゲのような生き物が駆け寄り、匂いを嗅ぐと紙の上に寝転ぶ。


 まいった。あれは恐らく魔物だ。あの魔物を退かさない限り、あの紙の真相を知ることができない。


 どうするべきか考えると一つ作戦を思い付いた。


 まず、魔物の注意をこちらに引き寄せ、その隙に魔物のいた場所へと移動し、紙の真相を確かめる。


 勇樹は近くに転がっている小石を掴むと魔物に向け投げつけた。小石は魔物の額に命中し、怒った魔物がこちらに向かって来る。


 ここまでは計算通りだったが、予想外の展開が起きた。


 紙が魔物の体に張り付き、一緒に移動をしている。


 紙は裏面が張り付いており、表側を見ることができた。紙の正体はやはり森の地図であった。


 地図がその場に置き去りになっていたのなら、回収後隙を見て逃げ出そうと考えていたが、このような事態になった以上、魔物を倒さなければ地図は手に入らない。


 マジック袋から天空鳥の剣を取り出して構えると、魔物は動きを止め、一定の距離を保ったまま対峙する。


 勇樹はガルドに教えてもらった魔物との戦闘の仕方を思い出す。


 ゲームの中と言えども、生物であることは変わらない。誰だって死にたくはないだろう。これはごっこ遊びではなく、本当に狩るか狩られるかの命の削り合いの戦いなのだ。


 お互いに警戒しているのか、どちらからも動こうとはしない。暫く時が経ち、痺れを切らして攻撃して来たのは魔物の方だ。


 跳躍し、大きく顎を開けると勇樹を頭部からを吞み込もうと突っ込んで来た。


 勇樹は後方に跳躍し、躱すと魔物の背後に回り、背中を斬りつける。


 魔物は苦痛の叫び声を上げると、尻尾で勇樹の身体を拘束し、動きを封じた。


 締め付けた状態で勇樹を上空へと放り投げ、魔物はそのまま口を開け、咀嚼する体勢をとる。


 勇樹は背中を地面に向けている体勢になっているので空中で上手く体勢を整えることができない。しかし、勇樹は諦めなかった。


 無理やり空中で身体を捻り、正面を地面へと向けると魔物の口内に天空鳥の剣の刃先を向ける。


 刀身が魔物の口内に突っ込むのと同時に、魔物は下顎を閉じて噛み付くと振り回す。その反動で勇樹の手から天空鳥の剣が離れると勢いよく勇樹は地面を転がる。その瞬間魔物はチャンスと判断し、天空鳥の剣を吐き捨て、勇樹の腕に噛み付いた。


 万力に挟まれたかのような痛みが走り、思わず悲鳴を上げた。だが、これが逆に勇樹の怒りのボルテージを上げる結果になる。


 片方の腕で生物共通の弱点である眼球に拳を叩き込む。


 魔物は今まで味わったことのない痛みに耐えることが出来ず、口を開けてると勇樹はその瞬間地面に落ちている天空鳥の剣を拾い、魔物の心臓目がけて刀身を突き刺した。


 痛みに耐えきれず、魔物は地面に倒れると痙攣したかのように手足をピクピク動かしていたが、やがて動きを止め、絶命した。


 初めての魔物との戦闘に勇樹は荒い呼吸する。両の腕には牙を突き立てられた傷がつけられ、魔物の鮮血により、赤く染められていた。


 魔物の身体に突き刺さった天空鳥の剣を取り出す。刀身も勇樹の腕同様に真っ赤に染まり、剣先から鮮血が滴り落ちていた。

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