ルミナとの出会い
振り返ると、一人の女の子が立っていた。年は自分と同じくらいか、少し上に見えた。綺麗な金髪の長い髪をツインテールでまとめている可愛らしい女の子だ。俺より少し背も高いかな。
普通の女の子と違ったのは、腰にショートソードを携えており、何かを覚悟したような目をしていた。
「連れていって、ってどうしたんだい、お嬢ちゃん」
アルスはその目をみて真剣に話しかけていた。
「私はルミナと申します。昨日ギルドであなた方がゴーレムのクエストを受けると話していたので、ここで待たせて頂きました。私にも手伝わせてください」
「手伝うって言ってもこれはC級クエストだよ。大怪我するかもしれない、場合によっては死ぬ可能性だってあるんだ。そう簡単に連れていけない。何か理由があるのか?」
アルスは厳しく突き放しているようだ。
それはそうだろう。小さな女の子をわざわざ危ない場所につれていく大人がどこにいるだろうか。アルスもそこまで馬鹿じゃない。
ルミナの表情が少し暗くなったと思ったら、理由の全てを説明してくれた。
ゴーレムの討伐に向かったC級のパーティーの中にルミナの父がいるということ。
出発して三日以上経っており、失敗し、生存している可能性も低いだろうということ。
生きていないにしても、遺体を持ち帰りちゃんと奉りたいということ。
何よりこの国を守ろうとした父の意思を継ぎクエストを達成したいということ。
最後の方は我慢できなかったのか泣きながら話してくれた。確かに付いてきたいという気持ちは分かる。どうするのかとアルスを見てみるとルミナ以上に号泣していた……
「そうか、そうか辛かったねぇ。でも本当に危ないんだよ。ルミナちゃんはその剣を使えるのかい?」
「私これでもC級冒険者です。C級のクエストも既に十回以上達成しています。必要ならばステータスも教えます。戦力にはなると思います」
「「えっ」」
「ちなみにルミナさんの年はおいくつですか?」
俺はたまらず年齢を聞いてしまった。
「十三歳ですが」
これには驚いた。冒険者になれるのは十二歳からなので、少なくとも二年以内でC級まで上がっている。自分は昨日C級に上がったので半年たらずで達成したことになるが、これは百回の転生能力あってのもの。それがなければ五年たっても辿り着けるかどうかの領域である。
アルスはそれを聞いて、悩んだあげく付いてくる事を了承した。
道中、年も近いこともあり様々な事を話した。母親も冒険者だったが病で亡くなっていること、サンドラではB級以上のクエストが滅多になくC級に留まっていること、父がクエストに出掛けた日は高熱が出て付いていけなくなったこと、料理が好きだということなど。
その間、アルスも話に入りたそうにしていたが、子供同士の会話になかなか割り込めず、つまらなそうにしていた。
しかし、ルミナのステータスを聞いたのだが驚愕した。
ルミナ
LEVEL:51
HP:2010
MP:800
攻撃力:620
防御力:620
魔力:620
俊敏性:650
運:60
なにこれ……天才ですね。
十一歳にしてアルスに匹敵するとまではいわないが、B級でやっていくだけの能力は十分にある。アルスはステータスだけ見ればS級並みらしいし。ちなみに自分のステータスは運以外を二十分の1程度にして教えた。これでも一般的には高いほうなんだけどね。
ちなみに俺はこの世界に転生してから一レベルも上がっていない……まぁ、このレベルでゴブリンやスライムをいくら倒しても上がるわけがないのだが。天才が目の前にいるのに、俺まで天才なわけないよなぁと少し落胆してしまった。
まさかこのルミナとの出会いが今後の俺の人生を大きく左右することになるとはこの時は思いもしなかった。




