決戦
アスティ達は一隻のシャトルを発見した。その周りは緑も何も無い、見渡す限りの黄色い砂漠が広がっている。そのシャトルの周りには数人の人影が見える。おそらくシャトルの乗組員なのだろう。その数はおよそ50人程度だ。
アスティはその姿を確認すると、その近くにグラディオンを飛行形態のまま着陸した。シャトルの周りの人影はみなグラディオンに視線を集中させる。それに続けてケネスのエターナルブレイドもその近くに着陸した。
アスティはグラディオンのコックピットのハッチを開ける。強い日差しと熱風がアスティの体を襲う。そして、グラディオンを降り、砂漠の上に降り立った。
その姿を見て駆け足で近づいてくる一人の人影、見覚えのある女性があった。その女性はアスティに飛びついて強く抱きしめる。その勢いでアスティ共々後ろの砂の上に倒れてしまう。
「よかった・・・アスティ・・・無事で・・・」
その女性はミリアだった。
「ちょ、ちょっと、ミリア、落ち着いて・・・離れてください・・・。」
しかし、ミリアはアスティに抱きついたまま泣き続け、一向に離れる気配が無い。
その近くに近づく別の人影。アスティと同じグラディオンに搭乗していたマリアンと、エターナルブレイドに搭乗していたケネス。そして、戦艦バーミリアの艦長ファルボだった。
「艦長・・・。」
「お前は良くやってくれた。ただちょっと遅れてしまったがな。」
「申し訳ありません・・・。」
「気にするな。こうやって生き残った奴だけでもこの地に降りられただけマシだ。ところでこの人達は・・・?」
アスティはミリアを抱え、立ち上がる。そして、ミリアを抱きしめながら
「こちらはケネス。クレストルニアに存在する国家の一つバルディアの王子です。そしてこちらがメイドでアンドロイドのマリアンです。ここまでこれたのは彼らのおかげです。」
「初めまして。ケネス・アル・バルディアと申します。」
「穏健派の代表ファルボです。事情が事情とは言え、いきなりの訪問で申し訳ありません。」
「いえ、皆様はアスティさんをはじめ、この星の住民を守るために尽力して下さいました。クレストルニアを代表してお礼申し上げます。」
ファルボとケネスは固い握手をする。
「しかし、まだ戦いは終わってはいない。」
「そうですね。」
ケネスとファルボは同じ方角へ視線を向ける。その視線の先にはうっすらではあるが2隻の巨大な宇宙船が見える。強行派の戦艦だ。あの船を沈めない限りは戦いが終わったとは言えない。
「この星の国家の軍隊があの戦艦に向けて進行中です。明日には戦闘が開始される物と思われます。」
マリアンが告げる。
「このままではこの星の多くの人間の命が奪われてしまいます。その前に決着を付けようと思います。このエターナルブレイドがあれば・・・。」
「永遠の刃・・・ね・・・。」
ファルボがつぶやく。
「1機で勝てるとは思えない・・・な。」
「ならば私も戦います。」
アスティが告げる。そのまなざしには強い意志が感じられる。あそこには倒すべき敵がいる。オルオニアス・ケルディローム。強行派のリーダーであり、アスティの実の兄。彼を倒すためにこの星に降り立った。戦いに参加しない理由が無い。
「まぁ、気持ちは分かるが何の作戦も無しに突っ込むのは危険すぎる。まずは飯でも食おうぜ。」
次の日。ついに両軍は衝突した。
ウルジットを代表としたクレストルニア連合軍とプルセリア強行派の軍である。連合軍の部隊は他にザラマトラ、エールクロン、ラクシュア、ウィツェレの国家が軍隊を派遣している。主に戦車や戦闘機が主戦力だ。それに対してプルセリア強行派は戦艦2隻とグラディオンが10数機。戦力差は10倍以上の差がある。もちろんクレストルニア連合軍の方が数は多い。しかし、以前行われたバルディアとの戦闘では同じくらいの戦力差があったにもかかわらず強行派が勝利している。この10倍の差はほとんど無いも同然だった。
その戦火の中に猛スピードで飛び込もうとしている機体があった。アスティの搭乗する飛行形態のグラディオンとケネスの搭乗するエターナルブレイドである。
「本当にコレで良かったのですか?」
ミリアはその姿を見送り隣にいるファルボにつぶやく。
「しかたねぇよ。俺たちに出来るのはもう何も無い。あとは奴らに賭けるしかないさ。俺たちはここで見守ることしか出来ねぇよ。」
アスティのグラディオンは強行派の戦艦の頭上を猛スピードで通過した。その時、機体の上から人影が戦艦の艦橋の上に飛び降りた。それは強行派のブリッジからでも確認出来た。メイド服を着た、両手にマシンガンを持ち、ファルボ達から受け取った武器で完全武装した女性の姿、マリアンだった。
マリアンは着地と同時に両手のマシンガンを乱射する。突然の出来事に動揺する戦艦の乗組員。拳銃で反撃を試みるも、マリアンの体は人間の物では無い。アンドロイドであるため、そのボディは金属で出来ている。普通の拳銃ではその動きは止まらない。マリアンは銃を乱射しながら戦艦内へと突入する。
「新たに猛スピードで接近する機体を2機確認!」
アスティ達の機体はウルジットの司令部からでも確認された。
「戦闘機型1機と人型・・・敵の人型機動兵器より大型の機体です!」
「なんだ!?新たな敵か!?」
アスティは両軍の間で機体を静止させると機体を飛行形態から人型へと変形した。そして機体を連合軍の方を向き、外部スピーカーのスイッチを入れる。
『私たちは敵ではありません!私たちもバルディアのケネス王子と共に、クレストルニアの皆様と共に戦います!』
そう叫ぶとアスティは機体を反転させ、強行派のグラディオンに向けてビームライフルを発射する。そのビームライフルから発射された光の束は敵の強行派のグラディオンを捕らえた。グラディオンの機体を貫通し炎上、爆破し地上に墜落する。
同じくケネスのエターナルブレイドも強行派のグラディオンに猛スピードで急接近し、手にしている唯一の武器、巨大な片刃の剣を振るう。強行派のグラディオンはその刀で真っ二つに引き裂かれ墜落、爆破する。
「あれは・・・エターナルブレイド・・・バルディアの奴め・・・ふん、そういうことか。」
ウルジットの指揮官であり国王であるワラスニア・ディオン・ウルジットはその光景を見てつぶやいた。
「まあいい。今はこの戦闘に勝利することが先決だ。全軍!あの2機の機体を援護せよ!」
戦艦内に突入したマリアンは一人銃を乱射しながら船の中を疾走していた。
目標は戦艦のブリッジ。そこを破壊してしまえば艦はコントロールを失い、墜落する。敵のグラディオンと敵の戦艦を同時に相手していてはグラディオンの数で劣るアスティ達は圧倒的に不利である。しかし、マリアンが船の破壊を担当することでアスティはグラディオン撃破に集中することが出来る。
元々マリアンは戦闘用のアンドロイドでは無い。しかし、その体は金属で出来ており、多少の銃撃ならばはじき返すことができる。ファルボの苦肉の策だった。
とは言っても、集中攻撃を受けてはいくらマリアンの体と言っても限界はある。なるべく銃撃を受けることは避けなければならない。
通路の先からマリアンに向けて激しい銃撃が行われ、マリアンの侵攻を妨げられていた。マリアンは手榴弾の安全ピンを抜き敵の中へ放り投げる。激しい爆発と共に敵の銃撃は止み、その隙をついてマリアンは爆風の中を疾走。そして残る敵をマシンガンで銃撃した。そして再びブリッジへと疾走する。
「なぜだ!なぜたった一人の人間にこんなに手こずるのだ!?」
戦艦エインウルのブリッジでは艦長が叫ぶ。このままではこの艦が落ちる。その声には焦りの感情がこもっていた。
そのとき、後ろのドアが開く。ブリッジのクルー全員がそちらの方を振り向く。そこにはボロボロとなった布きれを纏ったアンドロイドが立っていた。かろうじてその布きれがメイド姿だと言うことがみて分かる。その手にはマシンガンが構えられている。それはマリアンそのものだった。
「貴様!もうここまで・・・!」
「申し訳ありませんが、この艦を沈めさせて頂きます。」
そう言うと同時にマリアンは銃を乱射する。そして手榴弾の安全ピンを抜いてそれを放り投げると、そのままブリッジの窓を突き破りブリッジの外へと飛び出す。その直後ブリッジから大爆発が起こった。それと同時に戦艦エインウルはコントロールを失い、艦の至る所から爆発を伴いながら横に傾き始める。
「戦艦一隻を撃沈しました。残りの一隻へと向かいます。」
マリアンはそのままの勢いで高いジャンプを繰り返し、隣の戦艦ヴァラートの艦橋へと飛び移ろうとしていた。
しかし、そのマリアンを待ち受けていたのはバズーカ砲を構えた兵士達だった。マリアンがその姿を確認した時にはすでにバズーカ砲の砲弾がマリアンに向けて発射されていた。
すかさず両腕を目の前でクロスし、防御の姿勢をとるマリアン。バズーカの砲弾はマリアンに命中する。その姿は大きな爆発と共に爆風に巻き込まれマリアンの姿は見えなくなった。
「やったか!?」
しかし、マリアンは爆風の中から現れる。しかし、先ほどの攻撃で右腕を失っていた。残る左腕に持つマシンガンで艦橋にいたバズーカ砲を持っていた兵士達をすかさず銃撃。その銃撃で次々と倒れていく兵士達。マリアンは無事に艦橋に着地した。
『マリアン、大丈夫!?さっきの爆発・・・!』
インカムからマリアンを心配するケネスの声が聞こえる。
「大丈夫です。これより艦内へ突入します。」
戦艦ヴィラートの艦橋ではオペレータ達が慌ただしく叫んでいる。戦艦エインウルが沈み、戦場に展開している自軍のグラディオンも次々と敵の攻撃によって撃破されている。当初は戦艦ヴィラート側が優勢に戦局を進めていた。しかし、状況が変わったのは2機の機体が戦場に現れてからだ。自軍のグラディオンが地上の戦車部隊や空中の戦闘機部隊を相手にしている間に、その機体に狙われ撃墜されていく。見事な連係を見せつけられ強行派のグラディオンは半数以下となっていた。
戦局は確実にクレストルニア連合軍へと傾いていた。
オルオニアスはモニターに現れるその状況を静かに見ている。
「どうやら邪魔者が2機ほど入り込んでしまったようだ。彼らを何とかする必要があるね。」
そして、側にある白兵戦用のポールアックスを手にとって後ろを振り向き
「そして、艦内にも一匹ネズミがいるようだ。」
オルオニアスの目の前にはマリアンがいた。もはや着ていたメイド服は服としての役目をなしていない。布はボロボロとなり、金属の肌が露わとなっている。そして、全身は返り血で真っ赤に染まっている。左手にはマシンガンでは無くセラミック製のソードを手にしている。マシンガンの弾はすでに弾切れとなっていた。手にしているセラミックソードも真っ赤に染まっている。これまでどれだけの兵士を切り裂いてきたのだろう。
「貴方が司令官ですね。申し訳ありませんが、ここで死んで頂きます。」
「そうはいかないよ。」
マリアンは真っ赤になったセラミックソードを構えてまっすぐオルオニアスに向かってくる。
「所詮、非戦闘用アンドロイドなんかでは僕に勝てないよ。」
オルオニアスはマリアンの攻撃を横にかわす。そしてすかさず手にしているポールアックスでマリアンの首に強烈な一撃を入れる。
その衝撃で地面に倒れるマリアン。オルオニアスが一撃を加えた箇所には大きな亀裂が入り、火花が飛び散っている。そのまま動かなくなるマリアン。
そして一言「ケネス様・・・もうしわけありま」
そこまで告げたところでオルオニアスはマリアンの顔を踏みつける。マリアンの顔は完全に破壊され、金属の細かい部品が周りに飛び散った。
「さて、あとは邪魔者を排除する。グラディオンを出すぞ。クロノ、艦の指揮は任せる。」
「はっ。了解しました。」
最後のマリアンの声はインカムを通じてケネスとアスティにも聞こえていた。
「マリアン!マリアン!応答してよ!マリアン!」
インカムを通じてマリアンの名前を連呼するケネス。しかし、応答はない。
「よくも・・・よくもマリアンを!」
今まで家族同然として、母親代わりとして共に生活してきたマリアン。彼女を失ったことで怒りに震えるケネス。その怒りをぶつけるように周りのグラディオンを巨大な片刃の剣で次々と切り刻んでいく。
一方、アスティは戦艦ヴィラートから出撃する1機の白いグラディオンの姿を確認した。
「あの機体は・・・お兄様!」
アスティは自分が操縦するグラディオンを白い機体の方へと向け距離を詰める。そしてビームライフルの射程内に白い機体を捕らえると迷わずビームライフルを発射した。
「ふふ、向こうからやってきてくれるとはね。」
「貴方は私が絶対に落とす!落として見せます!」
しかし、アスティが発射したビームライフルは素早い動きで全てかわされてしまう。
「くっ、早い!」
「甘いねぇ。甘すぎる。甘すぎるんだよ!」
すかさずオルオニアスは反撃のビームライフルをアスティに向けて発射する。盾を失ってしまったアスティは回避行動を取るが全てをかわしきれない。オルオニアスが放つ光の線がアスティの乗るグラディオンの右腕の左足を捕らえる。
「きゃあああああぁぁぁぁぁぁっ!」
アスティの機体はバランスを崩し地表へと落下する。しかし、地表へ激突する前にかろうじてバランスを取り戻し、激突を回避した。
「ふふ、でもあの状態ではもう戦えまい。さて、あと1機だね。」
その様子はケネスの乗るエターナルブレイドからも確認していた。
「アスティさん!そうか、あの白い機体が!あの機体を落とせば!」
エターナルブレイドはブースターをふかしてオルオニアスが乗る白いグラディオンへと向かって行く。
「くっ、さすがに早いな!」
その動きを確認したオルオニアスはエターナルブレイドに向けてビームライフルを発射する。エターナルブレイドは巨大な片刃の剣を盾としオルオニアスのビームを受け止める。そして、そのまま速度を落とすこと無くオルオニアスへと突進してくる。
「なんなのだ、あの機体は!あの剣は!」
オルオニアスは手にしていたビームライフルを捨て、ビームソードを取り出す。エターナルブレイドはそのままの速度で片刃の剣を振りかざしオルオニアスの乗る白いグラディオンを切りつける。その一撃をオルオニアスはビームソードで受け止める。
激しい2機の衝突。
何度も離れては衝突し、エターナルブレイドの片刃の剣とオルオニアスのビームソードが交わり、一度離れてはまた衝突を繰り返す。その繰り返しが延々と続く。
「くっ、ここまで出来るとは!」
「ここでやられてたまるか!お前は僕が倒す!」
「だが、これではどうかな?」
オルオニアスは一度間合いをとり、背中に装備したバズーカ砲を取り出す。そしてすかさず照準をエターナルブレイドに合わせ、砲弾を発射する。
すかさず片刃の剣を盾とし攻撃を防ぐエターナルブレイド。砲弾が片刃の剣に命中し、爆煙が周りに広がる。
エターナルブレイドの視界は奪われた。
「しまった!」
この隙を突いてオルオニアスはエターナルブレイドの背後に回りビームソードで切りつける。だが、ビームソードの攻撃はエターナルブレイドの機体を切り裂けなかった。肩のところでビームソードが止まる。
「なっ、何という装甲だ!?こんな機体が実際に存在し得るのか!?」
この動揺に完全に動きの止まったオルオニアスの乗る白いグラディオン。この隙をケネスは逃さない。
振り向きざまに巨大な片刃の剣を横に大きく振るう。オルオニアスはその動きに素早く反応し、ブースターをふかして上空へと回避行動を取る。しかし、それよりも早くエターナルブレイドの剣は白いグラディオンの両足を切断した。
すかさず次の追撃を加えるエターナルブレイド。片刃の剣を縦に振るう。回避行動を取るオルオニアスだが、両足を失いバランスを崩した白いグラディオンはコックピットへの直撃は回避できた物の右腕を切断。そのままコントロールを失った白いグラディオンは地表へと墜落して行った。
「か、勝った・・・?」
戦艦ヴィラートのブリッジには動揺が広がっていた。
「あのオルオニアス様が落とされただと・・・!?」
クロノが叫ぶ。
「我が軍のグラディオンは全滅・・・ここままではこの艦も・・・。」
そのオペレータの声に、ブリッジの中に悲壮感が漂う。
戦艦ヴィラートはクレストルニア連合軍の物量作戦の前に、戦艦1隻ではとても対応できない状態となっていた。至る所で爆発音が聞こえていた。ブリッジには次々と被害状況の報告が舞い込んでくる。
「もはや為す術なし・・・か・・・。」
艦の指揮を取っていたクロノは決断した。
「クレストルニア連合軍に全面降伏の意思を伝えろ!総員退艦だ!」
墜落した白いグラディオン。
コックピットのハッチを開き、機体の外に出る。熱風と強い日差しがオルオニアスを襲う。オルオニアスはクレストルニアに降下してからは艦の外には出てきていない。従ってこのような体験は初めてだった。他に手段が無かったとはいえ、改めてとんでもない星に帰ってきたものだと思い知らされる。
そのオルオニアスの目の前に一人の人影が映る。最初は強い日差しのせいで誰だかわからなかったが、目が慣れてくるにつれてその姿が明らかになる。
目の前にいたのはオルオニアスの妹で穏健派の可変型グラディオンに搭乗していた、アリスティアだった。手に拳銃を持ち、その銃口はオルオニアスに向けられている。
「ふっ、こんなところでお前と再会するとはね。」
「・・・私はプルセリアが大好きでした。緑にあふれ、動物たちが飛び回り、清らかな水が流れる、自然豊かなあの星が。」
アスティの声が涙声になっていく。
「たとえ私の身分が失われても、王女という身分を失ってもその自然があれば他に何もいりませんでした。」
アスティの瞳から涙が流れだす。その涙は一向に止まる様子は無い。
「しかし、あなたはその全てを奪い去ってしまいました!私はあなたを許さない・・・!」
「しかし、今僕を殺しても何も変わらないぞ。」
「わかっています!でもあなたを殺さないと私は先に進めません!あなたは、あなただけは私の手で殺します!」
『だめだ!アスティさん!あなたはあなたの手を汚してはいけない!』
インカムの向こうでケネスが叫ぶ。
「わかっています。でもこれは私が決めたこと。そのためだけにここきました。覚悟してください!」
ケネスの乗るエターナルブレイドは墜落した白いグラディオンの元へと動き出す。しかし、その前に二つの銃声が鳴り響く。
その音はケネスのインカムを通じても聞こえた。
一発はオルオニアスの胸を貫通した、アスティが放った銃弾。
そしてもう一発はオルオニアスが放った銃弾。その銃弾はアスティの肩に命中した。
『アスティさん!』
インカムを通じてアスティの名前を呼ぶケネスの声が聞こえる。
「大丈夫・・・です・・・。これで・・・全て終わりました・・・。」
アスティは銃撃による激痛をこらえ、白いグラディオンのコックピットの中で動かなくなったオルオニアスの姿を見ながらケネスに話しかけた。
その直後、外部スピーカーから声が聞こえた。クレストルニア連合軍の指揮官ワラスニアの声だった。
『バルディアのケネス王子。ご苦労だった。そして、この戦いに貢献してくれたことを感謝する。しかし、あなたはエターナルブレイドを手にしてしまった。この意味がわかりますかな?』
エターナルブレイドを手にしたことの意味?
ケネスには全く意味がわからなかった。アスティも同様だ。ケネスがエターナルブレイドを入手したとき、その場にいた整備用アンドロイド達は何も言わなかった。クランダや父でありバルディア国王のオレオも何も言わなかった。
『・・・どういうことでしょうか?』
ケネスも外部スピーカーのスイッチを入れ、応答する。
『エターナルブレイドを手にした者。クレストルニア全土を統治する力を示さなければならない。これはクレストルニアが6ヶ国に分かれたときにできた取り決めだ。そして君は実際にエターナルブレイドを手にしている。』
この話を聞いた、この話を知らない者達はその場で凍り付いたように動かなくなる。
『すなわち、君は今ここで我々と戦わなければならない。クレストルニアと統治する唯一の王となるために。』
『僕は・・・そのためにこのエターナルブレイドに乗っているわけじゃありません!』
冗談じゃ無い、とケネスは思った。強行派の進行を止めるために、戦闘による犠牲を最小限に食い止めるためにエターナルブレイドを手にした。しかし、このままでは戦闘による犠牲が増えることになる。しかもケネス自身の手によって。当然ケネスにはそんな事が出来るわけが無い。
「冗談じゃねぇ、こんなのありかよ・・・。」
「何とか止める方法は無いのでしょうか・・・。」
ワラスニアとケネスの会話を聞いていたファルボとミリアは遠くからその様子を眺める。
そのとき、彼らの間に割って入る1機のグラディオンの姿が現れた。そのグラディオンは右腕と左足を失った半壊のグラディオンだった。そのグラディオンからワラスニアに向けて外部スピーカーで話し始める。
『・・・クレストルニアの皆様、・・・ここは私に・・・任せてはいただけませんでしょうか?』
その声はエスティの声だ。少々息が荒い。
『エスティさん、何を・・・?』
エスティの乗る半壊したグラディオンはケネスの乗るエターナルブレイドへ振り向き、残る左腕でビームソードを取り出して、外部スピーカーで話しかける。
『・・・ケネス王子、・・・貴方に・・・決闘を申し込みます。』




