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永遠

 次の日、アスティとケネスは簡単に缶詰による朝食を済ませるとグラディオンに搭乗した。さすがに3人もコックピットに乗ると少し窮屈な感じがする。操縦はもちろんアスティが行う。ケネスとマリアンは立ったまま座席の後ろに待機している。マリアンには目標地点までのナビゲートをしてもらう必要があるため、少し前のめりの体勢になっている。

 3人が搭乗するとグラディオンはブースターをふかして少し上昇し、飛行形態へ変形する。まずはマリアンが指し示す座標、ケネスが言っていた、封印された兵器が保管されているという場所へと向かう。

 到着した場所は、周り見渡す限りの荒野にぽつんと立っている一つのラボラトリーのような施設だった。

 「こんなところにこんな施設があったなんて。」

 思わずケネスからこんな言葉が漏れる。

 「実は私も中の様子についてはメモリーに残されていません。」

 「そうか、マリアンもここに来るのは初めてなんだね。」

 施設の入り口近くに飛行形態のままグラディオンを着陸させる。アスティ達はグラディオンを降りるとマリアンを先頭にして施設の入り口と思われる、頑丈そうなドアの前に移動する。その脇にはカードリーダーと思われる装置が備え付けられていた。

 「ケネス様、そのカードをこの穴に入れて下さい。」

 ケネスはマリアンに促され、手にしているカードを装置に差し込んだ。ピーという音と共に鍵が開いた様な音が聞こえた。

 マリアンは頑丈そうなドアを静かに開ける。その向こうには長い廊下があった。明かりは付いているので、施設自体は生きているように見える。一番奥にはまた頑丈そうな扉があった。アスティとケネスは緊張した足取りで廊下を進む。先頭はもちろんマリアンだ。周りはシーンと静まりかえっている。聞こえてくるのは3人の足音のみ。

 一体ここにはどのような兵器が格納されているのだろう。そんな事を考えつつ、3人は廊下の一番奥、頑丈そうな扉の前までたどり着いた。ドアの脇には再びカードリーダーが設置されている。

 ケネスはカードリーダーにカードを通した。そして、ケネス自身が頑丈そうな扉を開ける。扉は思いの外重かった。それだけ施設自体が頑丈な造りになっているのだろう。

 扉の向こうには大きな格納庫があった。ケネス達の目に一番最初に入ったのは巨大な人型機動兵器。そして数人の人の姿だった。

 「これは・・・グラディオン?」

 アスティの口から思わずこぼれる。アスティや強行派の持つグラディオンよりは一回り大きい様に見える。そして、その機体は大昔の兵器とは思えないくらい綺麗に磨かれ、その背中には巨大な片刃の剣が装備されている。

 「この機体はエターナルブレイドと呼ばれています。」

 話しかけてきたのは格納庫にいた、入り口に一番近い人間。いや、よく見てみると人間ではなかった。なぜなら衣服などは着ていない。見た目でロボットであるという事がすぐに分かるような姿形をしている。

 「私は貴方をお待ちしていました。貴方の持っているカードがこのエターナルブレイドに搭乗する資格のある方。」

 「あなたは・・・ここで何をしているの?」

 ケネスが話しかけてきた人型のロボットに話しかける。

 「私達はここでずっとこのエターナルブレイドの整備を行っていたアンドロイド。大破壊の日この施設にこの機体が運ばれてから今までずっとここにいました。」

 「大破壊?」

 ケネスが訪ねる。その問いにマリアンが答えた。

 「大昔この星を荒野と砂漠の星に変えてしまった大規模な戦争の事です。」

 「ということは、この機体は、その戦争で生き残った機体の一つということですか?」

 「その通りです。この機体は巨大な破壊力を持つ機体であるとしてこの施設に封印されてきました。それ以来もメンテナンスとアップグレードを繰り返し、今すぐにでも使える状態となっています。そして、この機体を操縦できる資格を持つのはそのカードを持つ貴方です。」

 そう言ってアンドロイドはケネスの持つカードを指差す。

 「さあ、準備は出来ています。こちらへどうぞ。」

 「ちょっと待ってください。」

 止めたのはアスティだった。

 「この星を荒野に変えてしまった兵器の一つですよね?装備の方は大丈夫なのでしょうか?この兵器を使用する以上、再びこの星を破壊してしまっては元も子もありません。そのあたりはどうなっているのでしょうか?」

 「安心してください。その様な装備は取り外してあります。その代わり、装備は背中に取り付けたあの剣だけですが。」

 アスティは少し安心した。少なくともこの機体を使うことでクレストルニアがプルセリアと同じ道を通ることはなさそうだ。


 「ここに貴方の持っているカードを挿入すればこの機体は稼働します。」

 ケネスはエターナルブレイドのコックピットに乗り込み、エターナルブレイドを整備していたアンドロイド達に操縦の説明を受けている。その様子を遠くから見ているアスティとマリアン。

 「ケネス王子はうまく操縦できるでしょうか。」

 「ケネス様なら何とかやってくれると思います。私はそう信じています。昨日からケネス様の気持ちが大きく変わっているような気がするんです。この星を救わなくちゃ、と。」

 「気持ちだけでは・・・。」

 そう言いかけて、アスティは考え込んでしまった。自分はどうなのだろうかと。

 アスティが穏健派に参加したのも、今まで操縦したことも無かったグラディオンの操縦訓練を受けたのも、今回のクレストルニアへの単独での降下も、全ては強行派のリーダーであり、自身の兄、オルオニアスを倒すためだった。そう考えると、自分もケネスも似ているような気がする。

 「・・・いえ、何でもありません。」

 ケネスの側にいたアンドロイドがケネスの側を離れた。一通りの操縦説明は終えたようだ。アスティはコックピットに座っているケネスに前のめりになって近寄る。

 「貴方にこれを渡しておきます。」

 アスティがケネスに差し出したのはインカムだった。

 「これを耳にかけてください。」

 そう言って、アスティはケネスの耳にインカムをかける。そしてアスティももう一つのインカムを自分の耳にかける。

 『王子、私の声が聞こえますか?』

 『なにこれ!?アスティの声が聞こえてくるよ!』

 『私も王子の声が聞こえます。これがあれば操縦中でも連絡を取り合うことができます。搭乗中は常にかけておいて下さい。』

 『うん、わかった。』

 そう言ってアスティはコックピットを出た。そしてマリアンの方へ向かい同じものを差し出す。

 「念のためマリアンにも渡してきますね。」

 「了解です。」

 マリアンは差し出されたインカムを自分の耳元に取り付けた。

 『私の声が聞こえますか?』

 念のためマリアンもインカムが正常に動作しているかを確認する。

 『わっ、今度はマリアンの声だ!』

 驚くケネスの声が聞こえる。

 『ええ、私もしっかりケネス様の声が聞こえますね。』

 『私も皆さんの声も聞こえます。これで準備は大丈夫ですね。』


 『一通りの準備は終わりみたいですね。出撃できますか?』

 インカムを通じてアスティはケネスに話しかける。

 『はい、やってみます。』

 ケネスはコックピット内にあるカードリーダにカードを差し込み、エターナルブレイドのハッチを閉じる。コックピットの電源が入り、目の前のモニターに格納庫の内部の映像が映し出される。

 そして、格納庫の上部が開き、強い日差しが格納庫の中に差し込んでくる。

 『ケネス、エターナルブレイド、出ます!』

 そう言ってケネスはブースターをふかして空高く飛び上がっていった。




 アスティとマリアンはアスティのグラディオンに搭乗し、次の目的地へ向かって、飛行形態のまま移動していた。そのすぐ側にはケネスが操縦するエターナルブレイドが人型のまま飛行している。

 ちなみに、アスティのグラディオンは最大出力で飛行している。人型のままでもこの移動速度で飛行できるエターナルブレイド。これが大昔、この星に存在していた兵器とはとても思えない。機動力で言えば、現在存在しているグラディオンにもひけは取らない、いや、それ以上の性能を持っているだろう。アスティはそう思った。ただ、武装が背中の巨大な剣のみというのが心配なところだが。

 「永遠の刃・・・」

 アスティの口から思わず言葉が漏れる。この剣の存在がエターナルブレイドと呼ばれる所以なのだろう。

 「アスティ様、まもなく指定ポイントに到着します。」

 アスティのコックピットの後ろでマリアンがデータ端末を見ながら告げる。地上を見下ろすと切り立つ崖に囲まれた一つのラボラトリーのような施設があった。その屋根には巨大な衛星通信用アンテナが設置されている。おそらくこれが衛星兵器のコントロール施設なのだろう。

 しかし、切り立つ崖の中にあるため、飛行形態のままでは着陸することは出来ない。アスティは飛行形態から人型に変形し、地上に着陸した。続けてその隣にケネスが操縦するエターナルブレイドも着地する。

 「アスティからバーミリアへ。衛星兵器コントロール基地と思われる施設に到着しました。これから内部に入ってみます。」

 「こちらバーミリア。」

 その声はファルボの声だった。通信の向こう側が慌ただしく聞こえる。

 『急いでくれ。こちらはどうやら強行派の索敵に引っかかってしまったようだ。まもなく戦闘状態に入る。持って2,3時間といったところか。』

 「了解しました。直ちにコントロールの掌握に向かいます!」

 そう言ってアスティは通信を切った。




 施設の中は先ほどのエターナルブレイドが保管されていた施設とは大きく異なっていた。まず、入り口にはロックがかかっていなかった。いや、ダイヤルロックと思われる装置は設置されているのだが、電源が入っていないのか機能していなかった。そのためか難なく施設の中に入ることが出来た。

 施設の中も大きく異なっていた。廊下には明かりは無くマリアンが持っていた、というか、マリアンの腕に内蔵されていたライトを点灯させて廊下を歩いていた。

 廊下の一番奥には窓が付いた扉があった。鍵はかかっていない。その扉の向こうには沢山の機材とモニターが備え付けられた部屋があった。しかし、その機材全てに電源が入っているようには見えない。明かりも真っ暗のままだ。

 「これは・・・まずは電源供給を行う必要がありますね。」

 マリアンがそう告げる。

 「そのようですね。このままでは衛星兵器は使うことが出来ませんね。」

 「それよりも・・・我々とは違う、人の気配を感じます。」

 そのマリアンの声と同時にアスティも部屋の中を覗いている何者かの気配を感じた。

 「誰ですっ!?」

 アスティはパイロットスーツの、腰の拳銃を取り出し部屋の入り口に向ける。マリアンはすぐさまケネスの盾となるように立ちふさがる。

 部屋自体が暗いので、その相手が何者なのか全く分からない。しかし、この場所はアスティ達しか知らないはずだ。先ほどの施設の様にアンドロイドがいるのではとも考えるが、このほとんど機能していない施設ではその可能性は低い。ということは、相手は敵である可能性が高い。

 アスティは部屋に入り口に向かって発砲しようとする。だが、その前に相手が発砲してきた。すぐさまマリアンがアスティ達の上に覆い被さるようにして敵の銃撃をかわす。敵の銃弾が後ろの機材に当たる音がする。数発銃弾を発射した後、その何者かは逃げるように廊下を走って逃げていく。

 アスティもその後を追いかけて部屋を飛び出し、廊下の暗闇に向かって銃弾を発砲する。しかし、攻撃は命中せず、入り口のドアが閉じる音がする。扉が開いた時の逆光で、その一瞬だけ敵の後ろ姿が確認できた。

 アスティも急いで入り口の外に出た。強い日差しと熱風がアスティを襲う。周りを見回しても誰の姿も確認出来ない。アスティ達が搭乗していたグラディオンもそのままだ。念のため起動するキーは抜いておいていたのだ。爆発物が仕掛けられたなどの、細工をされたような形跡も見当たらない。

 『逃げられたようですね。』

 インカムを通じてマリアンとケネスに状況を伝える。

 『強行派に先ほどの会話を聞かれたとしたら、彼らは必ずここに来るはずです。急いで電源を復旧させましょう。』

 『そうですね。状況は厳しいですがやってみましょう。』

 『ケネス王子は見張りをお願いできますか?敵の姿が見えたらすぐに知らせて下さい。』

 『わかったよ。』




 「そうか。報告ご苦労だった。あとはこちらに任せて帰還してくれ。」

 そう言ってヴァラートのブリッジにいるオルオニアスは通信を切った。相手はアスティ達の後をつけていた偵察部隊だ。

 「衛星兵器・・・やっかいな物が出てきたな。早めに手を打っておく必要があるな。穏健派もとんでもないやつを用意していた物だ。」

 衛星兵器と聞いて、彼の口調は今までとは明らかに変わっていた。それだけ事態は深刻になってきている。クレストルニアの上空にいる部隊は穏健派を索敵で存在を発見し、彼らの駆逐に向かっている。もし駆逐が成功したとしても、このまま衛星兵器の起動を許してしまえば壊滅的な損害を受ける可能性がある。そうすればオルオニアスが描いていた計画は台無しになってしまう。大きな計画変更、最悪の場合、帰還の失敗という結果が待ち受けているだろう。

 それだけは避けなければならない。オルオニアスは側にある受話器を取る。通話の相手はエレマだ。

 「エレマ、申し訳ないがまた出撃してくれないか?」

 『何かあったのでしょうか?』

 「穏健派が衛星兵器の起動を試みているという情報が入った。衛星兵器を使用を許してしまうと上空にいる部隊に甚大な被害が出るだろう。君には9機のグラディオンを引き連れてその衛星兵器のコントロール施設を破壊してもらいたい。相手は例の新型グラディオンだ。また正体不明のグラディオンの存在も確認されている。」

 『・・・はっ、了解しました。準備でき次第出撃いたします。』

 「目標ポイントは後ほどオペレータから伝えてもらう。・・・今回は失敗は許されないよ。心してかかってくれ。」

 そう言ってオルオニアスは通話を切った。それから数分後、10機のグラディオンが飛び立っていった。


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