遭遇
ケネスはマリアンと共にバイクにまたがり、砂漠の中を疾走していた。
照りつける太陽と吹き荒れる熱風によって少々喉が渇いていたが、大急ぎで王宮を、バルディア王都を出てきたので、バイクには何も積んでいない。もちろんマリアンも水も食料も持ってきているわけでは無い。マリアン曰く、一日あれば到着できるので、少々我慢して下さい、とのことだった。
しかし、その旅路は順調とは行かなかった。
バルディア王都を出発してから一時間後、後ろから巨大な人型機動兵器が飛んできたのである。王都を防衛する兵器を次々と破壊し、最後には王宮をも破壊したあの兵器。それが今、自分達を追ってきているに違いない。
そのことに気がついたのはケネス自身だった。
後ろを振り返ると、次第に近づいてきている機影。その数3機、うち1機は青色の機影だった。
マリアンもアクセル全開で、最高速度でバイクを疾走させている。それでも巨大な人型機動兵器の方が速度が速い。簡単に追いつかれてしまう。
「ケネス様、しっかり捕まっていて下さい。」
このような状況でも冷静な声がマリアンの口から発せられる。
その直後、バイクは右へとハンドルを大きく取る。ケネスが乗ってるバイクはタイヤでは無くエアロホイールで宙に浮いて走っているため、急ハンドルによって姿勢を大きく崩すことは無い。
しかし、ハンドルを切った直後、さっきまで走っていた場所から大きな砂塵が巻き上がる。人型機動兵器からの銃撃だった。
マリアンは左へ右へと次々とハンドルを大きく切る。その度に振り落とされそうになるが、しっかりとマリアンを抱きしめては話さないケネス。そして同時に行われる銃撃と巻き上がる砂塵。
だが、そのような逃走劇も長くは続かなかった。人型機動兵器の銃撃が、バイクを直撃しなかったものの、バイクのすぐ近くに着弾し巻き上がる砂塵によってバイクは大きくバランスを崩す。それによってバイクは横転。ケネスはマリアンと共に大きくバイクから振り落とされてしまった。
幸い地面は砂漠なので、ケネスの体には大きな怪我は無い。意識はまだしっかりとしている。だが、吹き荒れる砂塵で周りが見えない。かろうじてマリアンの姿が確認出来る。 ケネスは這うようにマリアンの元に近づく。巻き上がる砂塵で目が痛い。口の中がじゃりじゃり言う。体中は砂だらけだ。それでもマリアンの側に寄りそう。とにかく一人では不安だった。
しだいに砂塵は薄くなり、周りの視界が明らかになる。マリアンに寄り添うケネスの目の前に現れたのはあの巨大な人型の、バルディアの司令部で見た、バルディアの戦闘機や戦車を次々の撃破していった、あの恐ろしい機動兵器が砂の上に立っていた。それも3機。そのうち1機は青い色の機動兵器だ。
距離はかなり開いているもの、その人型の機動兵器の手には巨大な銃を持っている。その銃口はケネスに向けられていた。
もはやこれまでか。逃げだそうにも砂に足を取られて思うように動けないだろう。そもそもバイクとの距離はかなり離れている。バイクまで移動するのに銃撃で撃ち殺されるだろう。それでも生きたい。まだやらなければならない事がある。
「マリアン!逃げよう!」
無理だと分かっていても最後まで諦めない。ケネスはマリアンと共にバイクの元へと駆け出した。
そのとき。
巨大な人型機動兵器の後ろから、巨大な光の束が人型機同兵器を貫いた。
とてつもない轟音があたりに響き渡る。そして、人型巨大兵器は前に倒れ砂塵が舞うと同時に大爆発を起こす。再び大きな砂塵が舞い、周りの視界を奪う。
「な、なんだ今のは!?」
青い人型機動兵器、グラディオンに搭乗していたエレマ・マイアナーは叫び、周りを見渡す。だが、有視界では砂塵で何も見えない。エレマはレーダーを確認する。レーダーには二つの機影の反応が見つかった。一機は隣にいる僚機だろう。そしてもう一機はエレマの背後から高速でこちらに向かってくる。
次第に砂塵が収まり視界が明らかとなる。エレマの視界に入ったのは一機の飛行機であった。先ほどのビームはあの飛行機から放たれたものなのか?だが、この星にある戦闘機ではあのようなビーム兵器は装備されていないはずだ。それは先ほどのバルディアでの戦闘で明らかだった。この星の全ての戦闘機は実弾兵器しか使用していなかった。ではあの戦闘機は何なのだろうか?
その戦闘機はエレマの頭上を通過しエレマとケネスの間で速度を落とし空中で制止する。そして、その戦闘機は人型の機動兵器へと変形した。
「穏健派のグラディオンか!?」
エレマ達は突然現れたグラディオンに対して銃撃を行う。だが、標的のグラディオンはこちらを振り向いたと同時にシールドを構え、エレマ達の銃撃を受け止める。そしてそのままブースターをふかし、エレマの僚機へと急接近する。それと同時にビームサーベルを取り出し僚機の胴体へ突き刺した。ビームサーベルを突き刺されたグラディオンは後ろに倒れ大爆発を起こす。
再び舞う砂塵。
「なんだあの機体は!?ビームの威力といい、機動力といい、こちらを遙かに上回っている!」
エレマは素早く上昇し砂塵が舞い上がるその場から素早く抜け出す。そして、敵のグラディオンの姿を確認すると素早く銃撃を開始する。
敵のグラディオンはシールドを構えたままビーム兵器で応戦する。エレマはスラスターで左右に機体を動かし、ビーム兵器をかわしながら銃撃を続ける。しかし、スラスターを動かすながらの攻撃は機体が安定しないため、敵の機体にはなかなか命中しない。
このままではやられる。
僚機もやられてしまった。このまま戦闘を続行するのは不可能だ。
そう判断したエレマは機体を反転させ、戦線を離脱して行った。
「た、助かった?」
ケネスはその一部始終を見てつぶやいた。
「しかし、あの機体は何でしょう?バルディアを襲った物とは若干違うようですが。ですが、油断はしないでください。」
「うん、わかっている。」
『けがはありませんか?』
その声は女性の声だった。目の前の人型機動兵器の外部スピーカーから発せられているようだ。
そして、人型機動兵器はしゃがみ込む姿勢をとり、胸に当たる部分、ハッチが開き、中からパイロットスーツを着た人が現れた。ヘルメットを取るとそれは長い髪の女性の姿だった。呼吸が荒く、ひどく汗をかいている。そして、その女性は突然力が抜けたように前に顔から砂の上に前から倒れてしまった。
アスティが気がつくと、目の前には一人の若い男性の姿が映っていた。
「ここは・・・!?」
急に体を起こすアスティ。周りを見渡すと、自分の体は砂の上だった。日はすでに沈みかけており、自分が乗っていたグラディオンの日陰となる場所に寝かされていた。
「大丈夫ですか?まだ横になっていた方がいいんじゃ・・・?」
目の前の男性は心配そうに顔をのぞき込む。しかし、アスティはそんな事を気にせず、何が起こったかを思い出す。
彼女の乗るグラディオンに3機の強行派のグラディオンの機影が映っていた。
彼女はそのうちの1機に向かってビームを発砲。撃墜に成功する。
そして、彼らの前に立ち、ビームサーベルを手にしてもう1機を撃墜。
最後の1機はビーム砲で攻撃を仕掛けるも逃げられてしまった。
彼女は無我夢中だったためそれまでの記憶を一瞬失っていた。というのも、ここで強行派との戦闘は想定外であり、なにより、グラディオンによる実戦そのものが始めて初めての経験だった。きっとそのときの過度のストレスから意識を失ってしまったのだろう。
自分は今生きている。それだけで安心して再び砂の上に横になった。まだ意識は少し朦朧としている。
「あの、失礼ですが、貴方は何者ですか?」
目の前の男性が声をかける。
そういえばこの人は誰だろう?そうだ、あの強行派から攻撃を受けていたバイクにまたがっていたあの人だ。
「私の名前はアリスティア・ケルディローム・・・。あなたは・・・?」
「僕の名前はケネス・アル・バルディア。バルディア王国の王子です。そして、彼女はマリアン。」
そう言ってケネスは遠くの方を指差す。その先にはメイド姿の女性の姿があった。その側にはあのときのバイクが横たわっていた。バイクの修理を行っていた。
アスティは立ち上がろうとする。しかし、まだ朦朧とする意識のなかで体がふらつき思うように立って歩くことが出来ない。
「大丈夫ですか?まだ無理しない方がいいのでは。」
ケネスはアスティの今にも倒れそうな体を支えようとする。
「・・・そうですね。ありがとうございます。」
アスティはケネスに支えられながら自分のグラディオンの側まで歩き、そこに座った。
ケネスはアスティにボトルに入った水を差し出す。アスティはそれを受け取ると一気にそれを飲み干した。アスティの意識もはっきりしてくる。どうやら軽い脱水症状にあったようだ。
「水、ありがとうございます。」
「貴方の、この機体の中に入っていた物ですけど。でも、無事で良かった。貴方は僕の命の恩人です。こちらからも言わせて下さい。ありがとうございました。アリスティアさん。」
「・・・呼びづらいでしょう。アスティと呼んでください。」
「では、アスティさん。」
そう言って、ケネスは一息ついて
「僕はあなたに聞きたいことがたくさんあります。とにかくわからないことが多すぎるんです。」
「・・・私が答えられる範囲であれば。」
「まず、この星で何が起こっているんですか?」
「・・・私たちが生まれ育った星、惑星プルセリアは戦争によって人の住むことが出来ない死の星へとなってしまいました。そのため、私たち生き残ったプルセリアの人々は、祖先が暮らしていたという惑星クレストルニアへ戻ろうという結論に達したのです。しかし、その手段によって、意見が対立してしまいました。」
アスティはケネスの方を見ず、まっすぐを見つめたまま、話し始める。ケネスはアスティの顔を見つめながらその話を聞いていた。
「残された時間が少ないため、強硬手段に出ても帰還を果たそうとする強行派、そして、そんな時でも現地の人間と話し合った上で帰還を果たすべきという穏健派です。私たちは十分な議論が交わされないまま強行派が一足先にプルセリアを発ってしまいました。私たち穏健派はその後を追うようにこの星へやってきました。」
「じゃあ、今朝バルディアを攻撃してきたのは・・・。」
「・・・間違いなく強行派の行動です。」
「彼らの攻撃で、バルディアの市民や王宮の人間、僕の父親も殺されてしまいました。」
その言葉にアスティは絶句した。まさか、強行派がそこまでやるとはアスティも想像はしていなかった。そして何よりケネスにかける言葉が思いつかない。
しばらくの沈黙。
「・・・申し訳ありません・・・私たちのせいで・・・。」
それがアスティの口から出てきた精一杯の言葉だった。元はといえば自分達の惑星で起こった出来事であり、この星への帰還は自分達の勝手な都合だ。たとえ今回の事態が強行派が起こしてしまった行為だとしても。
マリアンがケネスの元へと近寄り話しかける。
「ケネス様、申し訳ありません。やはりあのバイクは部品がいくつか破損してしまいまして、これ以上あのバイクで進むことは出来ません。」
「そうか。まだ半分も来ていないんだよね。どうやって移動しようか。食料も水も無いし。」
そういった途端、ケネスのおなかの虫が鳴る。マリアンやアスティにも聞こえるような大きな音だ。そういえば朝から何も食べていない。あまりにも大きな音だったのでケネスの顔が赤くなる。と、同時にアスティのおなかも鳴った。
「きょ、今日はここで野営しましょうか。」
同じく顔を真っ赤にしたアスティからの提案。
「そ、そうですね。で、でも僕たち、何も食料を持ってきてないんです。」
「私が余り多くはありませんが、少し分けて差し上げますよ。それにあなた方の事についてもっと知りたい事が沢山あります。」
「僕もです。食事しながらお話ししましょうか?」
日はすでに沈んでいた。
夜の砂漠は昼間と異なり気温が急激に下がる。たき火を囲んでアスティが持ち込んできた食料、数に限りがあるので、少量の缶詰を分け合い、残り少ない水を回し飲みながら、お互いの情報を交換する。
「あら?あなたは食べなくても大丈夫なのですか?」
アスティはマリアンに話しかける。
「私はアンドロイドなので。人間では無いので、食料を頂かなくても大丈夫です。」
「・・・人間かと思いました。」
「いえ、私は人間にはまだほど遠い存在です。まだまだ改良の余地はあると思っています。」
「いや、マリアンは十分人間より人間っぽいよ。なにせ、僕の母親みたいな存在だから。」
「ケネス様からそういう言葉をいただけるとは光栄です。」
アスティはケネスとマリアンとの一連の会話の様子を見ている。特にマリアンの表情。常に冷静で喜怒哀楽というものが無いようにも見える。なるほど、確かにアンドロイドなのだろう。
「そういえば、お二人で何処へ向かおうとしていたのですか?」
アスティに聞かれたケネスは一枚のカードを取り出してアスティに見せる。
「僕たちは過去に封印された、この星を変えた兵器を入手しようとして移動していました。このカードはその封印の鍵となるものらしいのですが・・・。その兵器があれば、バルディアを攻めてきた敵に対抗できる力を得ることが出来ると思うんです。」
「ケネス様、そのようなこと、お話ししても良いのですか?」
「大丈夫、彼女は少なくても敵じゃ無いよ。僕たちを助けてくれた命の恩人だし。それで、アスティさんはどこに向かわれようとしていたのですか?」
「私は・・・衛星兵器のコントロールを掌握するために宇宙から一人で降りてきました。空の上ではまだ強行派の戦艦が数隻待機しています。それに対して私たち穏健派は1隻だけ。この状況を好転させるには、衛星兵器を私たちの物にする必要があるんです。」
「あのような恐ろしい船がまだ空の上に・・・。」
「その衛星兵器の情報は私のメモリーの中にも残っています。よろしかったらその情報をいただけませんか?ご協力できることがあるかもしれません。」
マリアンからの提案だった。今アスティが持っている情報といえば、衛星兵器のコントロールセンターがあるとみられる場所の座標が記録されたデータ端末だけだ。これ以上の新しい情報を得られるとならば穏健派にとっても都合がよい。
アスティはマリアンにデータ端末を手渡した。そのデータ端末に目を通すマリアン。
「この位置からでしたら、私どもの目的地の方が近いですね。アスティさんの目的地もそこからあまり遠くない位置にあります。それにこの施設はアスティさん一人では入れない構造になっていますね。私がいれば中に入ることが出来ますが。」
それはアスティにとって貴重な情報だった。どのような仕掛けが施されているかは分からないが、単独で施設にたどり着いても中には入れず途方に暮れていただろう。穏健派の勝利のためにも彼らの力が必要だ。
「でしたら・・・よろしかったら私のグラディオンで一緒に行きましょうか?」
「グラディオン?」
「あ、この機体の名前です。いろいろ種類はあるのですが・・・私のグラディオンは飛行形態に変形できるので、バイクで移動するより早いかと。」
「そうですね。バイクが使えない以上、この提案を受け入れるのが得策かと思います。」
「そうだね。よろしくお願いします、アスティさん。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
すでに日が沈んで数時間が過ぎた。ケネスはグラディオンのコックピットの奥の方で眠っている。あまり広いスペースでは無いが、人間一人入るには十分なスペースが確保されている。マリアンはアンドロイドなので眠る必要はない。そのため、マリアンは自ら見張りと買って出た。アスティもグラディオンのコックピットの中にいる。
「アスティからバーミリアへ。」
アスティは旗艦であるバーミリアへ音声による無線通信を入れた。状況報告のためだ。
「こちらバーミリア。アスティ、大丈夫だった?」
その声はミリアだった。
「ええ、なんとか。」
「ファルボ艦長はいまお休み中よ。報告は後で艦長に伝えておくわ。」
「わかりました。私は惑星クレストルニアへ降下後、強行派グラディオン3機と遭遇し、戦闘に突入、2機撃破しました。」
「過激派と戦闘!?機体は大丈夫?」
「多少の銃撃を受けましたが、任務遂行に支障は無いと思われます。それと、その強行派グラディオンに追われていた現地の人間を救助。クレストルニアにある国家の一つ、バルディア王国の王子ケネスとその従者でアンドロイドのマリアンです。現在私は彼らと行動を共にしています。」
アスティは報告を続ける。
「彼らは強行派に対抗するため、この星を荒野に変えたと言われている、封印された兵器を入手しようとして行動しています。私は彼らと共にグラディオンで向かってみようと思います。」
「アスティ、分かってる?私たちの目的は、」
「わかっています。しかし、衛星兵器のコントロールを掌握するには彼らの力が必要だと聞かされました。彼らの協力を得るためにもここは彼らに協力するべきと考えます。」
「・・・そういうことなら仕方ないわね。了解したわ。これからも気をつけて行動してちょうだい。」
「了解しました。ではまた。」
そう言ってアスティは通信を切った。
アスティは深いため息をつく。そして空を見上げた。
雲一つ無い青い空に満天に輝く星。このような光景を見たのはどれくらいぶりだろうか。バーミリアに乗艦していた時も星の瞬きは見えていた。しかし、地上から見るその景色は宇宙から見るそれとは別格だった。アスティはその美しさに時を忘れて空を眺めていた。
「・・・まだ起きていたんですか?」
後ろで寝ていたはずのケネスが話しかけてきた。アスティはいきなり話しかけられたことに少々驚いたが、夜空を見上げながら話す
「ええ、この星空が綺麗だったもので。私の星ではこのような星空は見られませんでした。星全体を厚い雲が覆って、太陽の光も、星の光も、地上に届くことはありませんでした。地上はあまりの寒さに凍え、動植物も死滅してしまいました。地獄というのはああいう世界の事を言うんですね。」
ケネスはアスティの顔をずっと見つめていた。
「アスティさんって、とっても素敵な笑顔を見せることもあるんですね。」
「えっ?」
あまりの突然のケネスの発言にケネスの方を向くアスティ、照れているのか少々顔が赤い。
「アスティさんはお会いしてからずっと暗い顔をしていていました。でも星空を眺めている時のアスティさんの顔、なんというか、心から笑っているというか、ものすごく素敵な顔をしていました。・・・あ、いや、何言ってるんでしょうね、僕。」
ケネスも顔を赤くする。
「ぼ、僕はもう寝ます!アスティさんも遅くならないうちに休んで下さい!お休みなさい!」
そう言ってケネスは慌ててコックピットの裏に隠れてしまった。
アスティはその一部始終を見ていた。そして、再び夜空を見上げる。
思えばあの事件以来、心の底から笑ったことは無かった。心の奥底に深い闇を抱えたままここまで来たような気がする。その闇は今でも心の奥底に溜まっている。この闇はまだ消えることは無い。あの男を倒すまでは。オルオニアス・ケルディローム。アスティの兄にして惑星プルセリアを死の星に変えた男を。
エレマは戦艦ヴィラートに帰還し、ブリッジにてオルオニアスに報告を行っていた。
「申し訳ありません。僚機2機が撃破され、自分のみが帰還することになってしまいました。」
「しかたがないよ。しかし穏健派も強力なグラディオンを出してきたね。それも単機で降下してくるとは。きっと何か目的があるんだろうね。彼らの行動を見張るためにも偵察隊を出しておこう。君はゆっくり休んでいてくれ。これから大規模な戦闘が始まるぞ。この星を相手にした戦闘がね。」
「はっ、了解しました。」
エレマは敬礼し、オルオニアスの部屋を出て行った。
「よし、上空のグングニアに通信回線を開け。」
「はっ。」
オペレータが通信回線を開く。目の前のモニターにはクレストルニア上空で待機しているグングニアの艦長、クレイアの顔が映る。
「これはオルオニアス様。」
「そっちの状況はどうかな?」
「はっ、穏健派の捜索ですが、我が偵察隊がエインウルの報告を元に捜索を行ったところ、小惑星の影に隠れている戦艦一隻を発見しました。おそらく穏健派の戦艦と思われます。これより全艦をあげて目標ポイントに向けて移動中です。」
「うん、良い感じだね。そのまま穏健派の船を沈めちゃってくれ。」
「はっ、了解しました。」
そう言うと、通信は切れた。
「さて、エインウルの降下も完了したし、我々のグラディオンは26機ある。このこれだけの戦力があれば、この星相手にも勝利できるだろう。敵戦力がここに集結するのはいつぐらいになりそうだ?」
「はっ、偵察隊によると、およそ二日後と思われます。主な戦力はバルディア軍と同様、戦闘機、戦車、対空車両の混合部隊とのことです。ただし、その数はバルディア軍の約10倍と思われます。」
オペレータが答える。
「10倍でも二隻の戦艦と26機のグラディオンには敵わないよ。ふふ、二日後が楽しみだ。さて、我々も休める時に休んでおこう。」
そう言って、オルオニアスはヴィラートのブリッジを後にした。




