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龍眼の転生者 〜内なる龍が目覚める時〜  作者: 小川 俊


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33/35

それは既に身に付けている

【前書き】


いつもお読みいただきありがとうございます!


第33話

『それは既に身に付けている』


今回は、ユウミとシルザの装備更新回です。


山で戦っていたユウミが、少しずつ冒険者としての姿を手に入れていくお話でもあります。


そして、相変わらず自由過ぎるシルザも大暴れしておりますので、楽しんでいただけたら嬉しいです!


それでは本編をどうぞ!

――翌日


ユウミ、オリオン、そしてシルザの3人は、王国でも指折りの高級武具店『ブランド・オブ・ミスリル』を訪れていた。


昨夜、ユウミとシルザの戦いの後。


2人は近くの服屋へ向かい、閉店後にも関わらず無理を言って店を開けてもらい、適当な服を購入していた。


全裸の男2人が突然押しかけてきたのだから、店主が腰を抜かしそうになるのも当然である。


だが、その内の1人がシルザだと気付いた瞬間、店主の顔色は別の意味で青ざめていた。


その後、翌朝に酒場マキシマムフレア前で待ち合わせる約束を交わし、一旦別れた経緯があった。


『ここが俺行きつけの武具屋だ。値段は手頃だし、モノも悪くねぇ。』


チリンッチリンッ――


シルザは軽く説明しながら扉を開け、中へ入る。


『いらっしゃ――……』


店主は挨拶の途中で言葉を止めた。


『また来てやったぜオヤジ。ちょっと防具を見せてくれや。』


『……ッ』


店主の顔がみるみる青ざめていく。


店内には他にも客がいたが、シルザの姿を見るなり、誰もが一目散に店を飛び出していった。


一瞬にして静まり返る店内。


ユウミは妙な空気を感じながらも、シルザの後について歩き、棚に並ぶ武器や防具へ視線を向ける。


煌びやかな装飾。


磨き抜かれた刀身。


見るからに高級品ばかりだ。


(……手頃?)


ふと目の前にあった美しいハンターナイフを手に取る。


(……金貨200枚!?)


先日、王城で受け取った褒美が金貨200枚。


つまり、目の前のナイフ1本で全財産が吹き飛ぶ計算だった。


『ん?どうしたユーミー。ナイフなんか必要なのか?』


背後から、シルザがぬっと顔を出す。


ユウミは慌てて小声になる。


『ちょっとシルザ……どこが手頃なんだよ。ナイフ1本すら買えないんだけど……』


『なぁに心配いらねぇよ。俺がいりゃ問題ねぇ。必要なもん選べ。』


嫌な予感しかしない。


だが、来店時にシルザが普通に店主へ話しかけていた辺り、流石に盗賊の類ではないのだろう。


恐らく、少々……いや、かなり怖いAランク冒険者というだけだ。


それに、ギルドでも高ランク冒険者は割引を受けられると言っていた。


きっと、その類なのだろう。


……多分。


『……そうなのか?でも俺、防具には詳しくないんだよね。何を選べば良いのか全然わからない』


『そういやユーミー、防具らしい防具を着けてなかったもんなぁ』


ユウミは現世で通っていた高校の白い学ラン姿のまま、この世界へ転生した。


転生場所も山の中。


防具など必要になる機会すらなかった。


『よし!お前の戦闘スタイルに合う装備を俺が選んでやる!任せとけ!』


そう言うとシルザは、店中を歩き回りながら次々と装備を選び始める。


『……おいおいシルザ。本当にそんなに必要なのか?それに金だって――』


『何度も同じ事言わせんなユーミー。装備も金も俺に任せとけって。』


シルザは防具から目を離さないまま返答した。


その後も装備選びは延々と続き、気付けば昼近くになっていた。


『ユーミーとオリオンは外で待っててくれや。すぐ済むからよぉ。』


『え?でも、俺の分の支払いは――』


『だから気にすんなって。ここは高ランク冒険者に優しい店なんだよ。』


シルザに背を押される形で、ユウミとオリオンは店の外へ出された。


ちなみに、オリオンの防具も見ようかとユウミが聞いたところ、


『いらぬ』


の一言で終わった。


ドサァッ!!


店内カウンターへ、大量の装備品が積み上がる。


『オヤジィ。会計頼むぜ。』


『……は……はい……』


店主は震える手で商品を確認していく。


『え、えぇと……合計で……金貨……8689枚に――』


そこで店主の言葉が止まった。


シルザが、眉間に深い皺を寄せながら店主を見下ろしていた。


『オヤジよぉ』


『ひっ……!』


『前にも言ったよなぁ?俺はAランク冒険者として、この国を守ってやってんだぜぇ?』


低く響く声。


店主の肩がビクリと震える。


『ゴブリンやオーク狩ってる連中とは訳が違ぇんだ。その金額にはよぉ……俺への敬意が感じられねぇんだが?』


『ひぃぃっ!!』


『まさかとは思うが……他の奴らと同じ扱いしてねぇよなぁ?』


『い、いえぇっ!計算に……計算に間違いがありましたぁ!!少々お待ちくださいぃぃ!!』


ガチャガチャと慌てて計算をやり直し始める店主。


数分後――


チリンッ!チリンッ!


『おぉ!待たせたなユーミー、オリオン!会計終わったから着替えようぜ!』


何事もなかったような笑顔でシルザが店から顔を出した。


ユウミは少し不安を覚えながらも、購入した装備を受け取り、試着室へ向かう。


先に試着室から出てきたのはシルザだった。


黒い高襟インナーの上から、銀と深紅を基調とした軽装甲を纏っている。


重装騎士のような鈍重さはない。


肩当てと胸部装甲は必要最低限。


その代わり、シルザの怪力と爆発的な踏み込みに耐えられるよう、高い耐久性と機動力を両立していた。


装甲には炎のような深紅の紋様。


その上から羽織る深紅のロングコートは、翻るたびに燃え盛る焔のような威圧感を放つ。


まさに、“攻撃を受ける前に斬り伏せる”ための装備。


炎のような激情と、獣のような機動力を体現した軽装戦闘装備だった。


『よし。前より動きやすくて良い。』


続いて、ユウミが試着室から姿を現す。


白を基調とした高襟仕様のロングジャケット。


腰下まで伸びる白い外装布は軽く、歩くたびに蒼い裏地が揺れる。


黒いインナーには、蒼いライン装飾。


風属性魔力の流れを整える特殊ミスリル繊維が使用されている。


左肩には小型の銀色の肩当て。


最低限の防御のみを目的とした極軽量仕様。


ユウミの戦闘は、“受ける”のではない。


見切り、避け、斬る。


そのため、防具は極限まで軽量化されていた。


黒と銀を基調とした前腕ガード。


細身の脚甲。


風属性魔力を流しやすい戦闘用ブーツ。


静かな威圧感。


神秘的な存在感。


まるで、白き龍が風を纏い空を舞うようだった。


山で戦っていた頃とは違う。


初めて、“冒険者になった”気がした。


『凄くカッコいいけど……ちょっと派手過ぎないかな?』


少し照れながら呟くユウミ。


『ユーミーもBランク冒険者なんだ。こんくれぇ装備してなきゃ舐められるぞ!』


『でも、これ相当高かったんじゃ――』


その瞬間、店主が物陰からビクッと反応した。


『くどいぜユーミー。もう一度言うが、ここは高ランク冒険者に優しい店なんだよ。なぁ?オヤジィ?』


『ひぃっ!!』


店主は慌てて姿を隠した。


『オリオン。どうかなこれ』


ユウミは少し照れながらオリオンへ視線を向ける。


『うむ。良いではないか。以前よりも気品が増したように見えるぞ、ユウミよ』


『本当?オリオンがそう言うなら良いか。ありがとうシルザ』


満足そうに笑うユウミ。


その姿を見たシルザは、少し顔を赤くしながらそっぽを向く。


『べ、別に大したことしてねぇよ……』


3人はそのまま店を後にした。


『我は腹が減ったぞユウミよ』


『もう昼だからね。マキシマムフレアで昼食にしようか』


『おっ!良いねぇ!あそこは飯も酒も旨ぇからなぁ!』


3人は酒場マキシマムフレアへ向かい、昼食を取りながら今後について話し始める。


『昨夜の怪しい影について整理するけど、オリオンが匂いを辿った結果、そいつは王城へ向かっていた』


『だが、流石に警備が厳重過ぎた。王城には入れなかった』


『誘拐された子供達は、恐らく王城で監禁されている可能性が高い。でも問題は、どうやって侵入するかだ。俺とオリオンは既に警戒されてる』


『俺も王城には入れねぇ。前に騎士50人半殺しにしてから出禁食らってっからな』


『えぇ!?なんでそんなことになったの!?』


『まぁ、長くなるから今度話してやるよ。つうかよぉ。許可なんざ求めず、力づくで入れば良いじゃねぇか』


『それは流石にマズイだろ……下手したら国中から追われることになる』


『じゃあ門番の身包み剥いで成り代わるか?』


『もっとダメだろそれ……』


ユウミは深くため息を吐き、顎に手を当てる。


『お待たせしました!アーマーディアのロースステーキです!』


『待っておったぞ!!』


オリオンは店員から皿を奪うように受け取ると、そのまま豪快に肉へかぶりついた。


『それにしても……オリオンの食い方は豪快だな……』


シルザが苦笑する。


『我が人間に合わせるのは姿だけで十分だからのぉ。むしゃむしゃ……』


『そういや、ユーミーとオリオンってどこで知り合ったんだ?』


シルザは小指を立てながらニヤニヤと笑う。


『オリオンはユーミーの“これ”なんだろ?』


『いや違うよ。オリオンは俺の相棒。そうだな……オリオンとは――』


――その瞬間だった。


ドォォォォォオオオオンッ!!!


地響きを伴う轟音が街全体を揺らした。


店内の食器が激しく震える。


『なんだ!?』


『何かぶっ壊れたぞ!!』


『むひゃむひょひゃ!?』


オリオンは肉を咥えたまま目を見開く。


ユウミとシルザは即座に立ち上がり、店の外へ飛び出した。


その瞬間。


――胸の奥がざわついた。


まるで、何かが始まる前触れのように。


言いしれぬ不穏な気配が、静かにユウミの心へ波紋を広げていくのだった。




【後書き】


第33話をお読みいただきありがとうございました!


今回は戦闘回ではありませんでしたが、ユウミとシルザの新装備お披露目回となりました。


個人的には、シルザが店主さんに圧を掛けながら「高ランク冒険者に優しい店」と言い張る場面がお気に入りです。


また、ユウミも少しずつ冒険者らしい見た目になってきました。

これまでの山籠もり生活から一歩進み、仲間達と共に新たな戦いへ向かう準備が整いつつあります。


そして最後に響いた大轟音。


次回からは王国編が大きく動き始めます。


引き続き『龍眼の転生者 〜内なる龍が目覚める時〜』をよろしくお願いいたします!


もし面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価、感想をいただけると今後の励みになります!

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