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龍眼の転生者 〜内なる龍が目覚める時〜  作者: 小川 俊


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30/35

それは既に、そこにある

いつもお読みいただきありがとうございます。


今回のお話では、ユウミが新たなスキル『アイテムボックス』と向き合うことになります。


一般的な収納スキルとは少し違う、彼だけの力。


その正体と意味が少しだけ明らかになりますので、楽しんでいただければ幸いです。


それでは、第30話『それは既に、そこにある』をお楽しみください。

オリオンとユウミは宿の裏手にいた。


『取り敢えず、南部の街はこれで終わりだね』


『うむ。それにしても南部だけでこの量とはな』


二人は一日かけて街中を駆け回り、悪魔の気配を感じる物を片っ端から回収していた。


その結果、パンパンに膨れた大袋が五つ。


『千個くらいはありそうだね』


『うむ。それにしても手が込んでおる。透明化の魔法まで施されておったとはな』


『俺一人だったら、気配は感じても見つけられなかったよ』


『うむ!これが聖獣ティガロンの力よ!』


オリオンは得意げに鼻を鳴らす。


『でもさ……正直、気持ち悪いよね。このモニュメント』


ユウミは袋から一つ取り出す。


黒曜石のように艶めく漆黒。


赤子のような顔は、歓喜にも苦悶にも見え、見る者の心をざわつかせる。


目と口の窪み――その穴から、微量の悪魔の気配と魔力が滲んでいた。


『悪魔の美意識など理解できぬな。昼でこの程度だ。夜になれば、さらに濃くなるだろう』


『アイツらの時間か……。それで、これどうする?』


『ふむ……存在すること自体が害だな』


二人が考え込んだ、その時だった。


(……なんだ?)


ユウミの手のひらが、じんわりと熱を帯びる。


(袋の中の……これが気になる)


手と袋を見比べる。


『どうかしたのかユウミよ』


ユウミは答えず、ゆっくりと大袋へ手をかざした。


その瞬間――


手が淡く光り、袋も同じように輝き出す。


次の瞬間。


五つの大袋が、音もなく消えた。


『なんと……消えおった。今、何をしたのだ?』


『いや……なんとなく、こうすれば収納できる気がして……』


『よもや、スキルか』


その言葉で、ユウミは思い出す。


教会で見た、自分のステータス。


『……なるほど。これが、アイテムボックスか』


ユウミは静かに目を閉じた。


意識を、深く沈める。


そして――繋がる。


ユウミの瞳の奥に、無数の部屋が広がる。


そこには、これまで手にしてきた物が静かに置かれていた。


『何が見えているのだ、ユウミよ』


『……すごいよ、オリオン』


部屋の一つには、魔物の素材や悪魔の武器が整然と並んでいる。


どの部屋にも扉はない。


――ただ一つを除いて。


虹色に輝く扉。


ユウミはゆっくりと、それに手をかけた。


開く。


息を呑む。


『……え?』


そこには、自分がいた。


目を閉じた、もう一人のユウミ。


やがて、そのユウミが静かに目を開ける。


『……俺は君だよ』


その声は、どこまでも穏やかだった。


『君の中にいる、もう一人の君』


『もう一人の……俺?』


『うん。そう思ってくれていいよ』


不思議と、怖くはなかった。


むしろ――安心していた。


『ここは……俺の心の中?』


『うん。心の中であり、魂の場所でもある』


『じゃあ、アイテムボックスって……』


神我は少しだけ考えるように目を伏せる。


『……箱、というよりは』


『受け入れる場所、かな』


『受け入れる……?』


『うん。君が手にしたものを、そのまま抱えておく場所』


『物も、力も……想いも』


言葉が、静かに胸へ落ちていく。


『この場所は、君が広がるほど、一緒に広がるよ』


『俺が……広がる?』


『うん。優しくなったり、強くなったり、誰かを想ったり』


『そういうの、全部』


神我は少し照れたように微笑む。


『だから、無理に理解しなくていいよ』


『君はもう、ちゃんとできてるから』


ユウミは、言葉を失った。


ただ、まっすぐな自分がそこにいた。


『あ、でも一つだけ』


神我が軽く指を立てる。


『魂が宿っているものは、ここには入れられない』


『それは……君が直接向き合うものだから』


――


『大丈夫なのかユウミよ』


『見てて』


ユウミは地面へ手をかざす。


ドスッ。


空間が歪み、大袋が一つ現れる。


『なんなのだ……それは確か、悪魔のアイテムが入った袋であろう?』


『中、見てみて』


オリオンは袋を覗き込む。


『……なんと』


そこには、黄金に輝く龍のモニュメントがぎっしりと収められていた。


微かに温かく、優しい光を放っている。


『どういうことなのだ?』


『中にいる俺が……綺麗にしてくれたんだと思う』


『……うむ』


――夜


東部の街。


『やっぱり夜の方が見つけやすいね』


『うむ。気配も魔力も濃い』


ユウミは次々と悪魔のアイテムを回収していく。


『昼より早いね』


『あとは西部と北部だけだな』


その時――


ビュンッ!!


夜空を、何かが高速で横切る。


『ユウミ!』


『悪魔の気配……行こう!』


二人は一瞬で屋根へ跳び上がる。


影を追い、疾走する。


『あれだ』


『袋……中は子供だね』


距離を詰める。


あと一歩。


その瞬間――


影が進路を城へ変えた。


ユウミたちも追従する。


――その時


ドカッ!!


『――!?』


視界が弾ける。


ユウミは誰かと衝突した。


――そこにいたのは。

第30話をお読みいただきありがとうございました!


今回はアイテムボックスの初登場回でした。


ただ物を収納するだけの便利なスキルではなく、『心』や『受け入れること』をテーマにした能力として描いています。


そして登場した、もう一人のユウミ。


彼が何者なのか、なぜユウミの中に存在しているのか――その辺りも今後少しずつ明かされていく予定です。


また、悪魔達の暗躍も少しずつ表面化し始めました。


そして最後にユウミが衝突した人物とは……?


次回も楽しんでいただければ嬉しいです!


それでは、また次回でお会いしましょう!

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