それは既に交差している
第27話をお読みいただき、ありがとうございます。
王国の街に辿り着いたユウミ達。
新たな一歩として訪れた冒険者ギルドで、彼らはある“異変”に触れることになります。
それは――相次ぐ子供達の失踪。
そして、どこか噛み合わない人々の記憶。
静かに、しかし確実に広がる違和感。
ユウミの中で何かが引っかかり始めます。
ここから物語は、“守るための戦い”から一歩進み、
“真実を暴く戦い”へと移っていきます。
ぜひ最後までお楽しみください。
▶名前:ユウミ
▶年齢:16
▶種族:龍人
▶レベル:96
▶スキル:龍眼、龍体、剣術、格闘術、アイテムボックス、付与魔法、風魔法、魔法斬り
▶称号:龍者、不知夜の継承者、聖獣ティガロンの主、妖狐玉藻の子、デビルキラー、ドラゴンスレイヤー
▶加護:九頭龍神の加護、妖狐玉藻の加護
(……龍眼か……さっきの、あれか……?)
(……レベル96って、なんだよ……)
(……アイテムボックス……風魔法……魔法斬り……)
(……称号は……龍者……?)
(……よく分からないな……誰かに聞くか)
『あの……シスターさん。……あれ?』
シスターは、ユウミのステータスを見たまま固まっていた。
『ユ……ユウミさん……あなたは……一体……』
『どうかしたんですか?』
『……この際、レベルは良いでしょう……百歩譲っても……問題は称号欄です……』
『称号欄……ですか?』
『聖獣ティガロン様の主……妖狐玉藻の子……どういうことなのですか……』
『これは誤解ですよ。聖獣ティガロンは、俺の友達です』
『……と……友……?』
『えぇ。そして……妖狐玉藻の子は……事実です……』
『ひぃ……な、なんと……!』
『玉藻山から来たってのは本当だったのか!』
シャルロッティも驚きを隠せない。
オリオンは、静かにユウミのステータスを見ていた。
(……龍者……)
その後、シスターは体調を崩してしまい、シャルロッティの鑑定は明日へと延期になった。
ちなみにシャルロッティは、ユウミのステータスを見ていない。
理由は——それがマナーだから、だそうだ。
鑑定ができなくなったシャルロッティは、冒険者ギルドへ向かうらしい。
ユウミたちも、それについていくことにした。
――大通り。
『まったく……ユウミが妖狐の子だったとはな』
『ははは……やっぱり、お母さんは有名なの?』
『有名も何も……昔、この国は妖狐に滅ぼされかけたって話だ。そこに聖獣ティガロンが現れて、この国を救ったってのが伝説になってる』
(なるほど……見てた人がいるんだな)
(それにしても……そんな昔のことが、今も残ってるのか……)
『伝説になってるんだってよ、オリオン』
『我が救ったのは玉藻だ。この国のことなど考えてはおらん』
(……やっぱり、人間に対して冷たいな……何かあったのか……)
バカラッ、バカラッ、バカラッ――!
『馬車が通るぞぉ!気を付けろぉ!』
後方から、鋭い声とともに馬の駆ける音が響いた。
ユウミは振り返る。
その瞬間——
道の先で、子供が転倒した。
『危ない!』
反射的に、地を蹴る。
だが——
同時に、もう一つの影が子供へと迫っていた。
(速い——)
互いに、風のような速度。
減速は——間に合わない。
ゴンッ!!
鈍い衝突音が、大通りに響いた。
『痛っ……!』『痛ぇ!』
バカラッ!バカラッ!バカラッ!
『貴様らどけ!轢き殺すぞ!』
御者の怒号が飛ぶ。
『飛べ!』
男の声。
次の瞬間——
ブワッ!!
ユウミと男は、子供を抱えたまま空へ跳び上がった。
空中で、目が合う。
鋭い眼光。
眉間に刻まれた皺。
歴戦を思わせる体躯。
——強い。
バカラッ……バカラッ……
シュダッ!!
馬車が通り過ぎた後、二人は同時に着地した。
子供を、そっと地面へ降ろす。
『ご……ごめんなさい……う……うえぇぇん!』
泣き出してしまう子供。
戸惑うユウミ。
その横で、男はふっと表情を緩めた。
『ほらほら、泣くんじゃねぇよ。大丈夫だ。ケガしてねぇだろ?』
柔らかな声と、満面の笑み。
男はあめ玉を子供の口に入れると、そのまま軽々と抱き上げた。
『母ちゃんとはぐれちまったのか?』
『……うん……』
『ヘレン!』
『お母さん!』
店から飛び出してきた母親が、子供を抱きしめる。
『ありがとうございました!すみません、本当に……!』
『おお、良かったな。今度は気ぃ付けるんだぞ』
子供は小さく頷き、手を振りながら去っていった。
静寂が戻る。
ザッ——
男が、ユウミへ向き直る。
赤髪のオールバック。
無造作に跳ねたくせ毛。
赤と銀の鎧。
背には、自身の背丈に迫る大剣。
『やるじゃねぇか、お前』
『あなたもね』
『クク……俺の頭突きで吹っ飛ばねぇどころか、同じ高さまで跳ぶとはな』
ニヤリと笑う。
『その面構え……相当場数踏んでやがるな』
『さぁね。でも——子供に優しい人で安心したよ』
『男なら当たり前ぇなことだ。守ることこそが力だろ』
男の視線は鋭い。
外見、立ち居振る舞い、重心——
すべてを見ている。
『俺はシルザ・イェーガーだ。お前は?』
『ユウミだ』
『ユウミか……覚えたぜ』
ニヤリと笑う。
『滅多にいねぇ。骨のある奴だ』
そう言い残し、男は背を向けた。
『ちょっとユウミ、大丈夫?』
『あぁ。問題ないよ』
『そうじゃなくて!ヤバいよ、あの人!』
『何が?』
『あの人……A級冒険者のシルザだよ。“マグマハートのシルザ”って呼ばれてる』
『マグマハート?』
『フレアデスドラゴンの牙で作った大剣の使い手で……強い相手なら人でも魔物でも関係なく挑むバトルジャンキー』
『へぇ……でも、悪い人には見えなかったな』
『ユウミよ。あの男の剣……ドラゴンのものだ』
オリオンが静かに言う。
『……また会う気がする』
ユウミは、そう呟いた。
ユウミとシルザ。
その出会いが——
ただの偶然で終わるはずもなかった。
第27話を読んでいただき、ありがとうございました。
今回から、いよいよ王国編の本格始動です。
ギルド登録という王道の流れの中に、“子供失踪”という不穏な軸を入れてみました。
そして、個人的に大事にしているのが――
「記憶の違和感」と「見えない敵」の存在です。
直接的な戦闘だけではなく、
“気づけるかどうか”が鍵になる展開になっていきます。
ユウミは強い。けれど、今回はそれだけでは届かないかもしれない。
そんな展開を描いていく予定です。
次回はいよいよ、夜の追跡と“影”の正体へ。
少しずつ繋がっていく伏線も含めて、楽しんでいただけたら嬉しいです。
引き続き『龍眼の転生者』をよろしくお願いします。




