それは既に受け取っている
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
第22話は、ユウミにとって大きな節目となるお話です。
これまで積み重ねてきた日々、交わしてきた想い——
そのすべてが、静かに、そして確かに形になっていきます。
別れは、決して終わりではなく。
それは、新たな一歩のための“証”であり、“繋がり”でもある。
ユウミが受け取るもの、そして胸に刻むものに、
少しでも心を寄せていただけたら嬉しいです。
それでは、第22話。
どうぞ、お楽しみください。
ガリッ…ガリッ…ガリッ…
『何をしているのだユウミよ』
ユウミは不知夜を使い、何やら削っている。
『おはようオリオン。ちょっと、不知夜の鞘をつくってるんだ。』
『ふむ。確かに不知夜には鞘がなかったな。何を素材にしているのだ?』
『お母さんの爪とドラゴンの鱗だよ。』
『玉藻の爪か。妖狐となってアスモデウスを倒し暴れた時に折れた爪だな。』
『そうそう。今朝外に出たらお母さんの爪と、それからドラゴンの牙と爪と鱗を見つけたから取ってきたんだ。』
ユウミの傍らには、鋭利な薄紫色のものと黒いものが置いてあり、それらは独特の艶を帯び、キラリと光を反射している。
『まぁ、こんなもんかな。』
『ほう。器用なものだな。』
出来上がった鞘は、淡く美しい薄紫色。
鯉口や鐺などの各所の拵えは艷やかな漆黒。
全体的に非常に上品なものに仕上がっていた。
スー……チンッ…
ユウミは不知夜を、その鞘へと納める。
静かに収まる刃。
——これで、ようやく“旅に出られる”。
『我ながら良い出来だと思う。』
満足そうに、ユウミは小さく笑った。
ーーそして、旅立ちの日
『ユウミこれを。』
『なに?』
玉藻は、そっとユウミの左耳に何かを付けた。
『これは…』
『お守りよ。お母さんがつくったの。いい、肌身離さず付けるのよ。』
それは、紫と桃色が混ざり合う雫玉の耳飾りだった。
『それは私とユウミの家族の証。尾の中から絆の尾と守りの尾を選んだの。きっとこの先、ユウミの助けになるはずよ』
『家族の証か。ありがとうお母さん。』
ユウミは満面の笑みで礼を言う。
『ユウミ……やっぱり言ってしまうのね……』
『泣かないでよお母さん。必ず帰ってくるから。』
『そうね。本当に気を付けるのよ。変な人について行っちゃダメよ。』
『うん。わかった。』
『ユウミ様にオリオン様。どうか道中……』
『それから、拾い食いもお腹を壊すからやらないようにね。』
『うん。そうするよ。』
『改めてこの度のお二人の助力、誠に……』
『それから、変な女には気をつけなさいね!ユウミは優しい分すぐに付け込まれるわ!』
『うん。気をつける。』
『それから……』
『玉藻よ。もう良かろう。カムイも話そうと……』
『最後に!』
玉藻は大きな声を上げると、すっと表情を引き締め、真っ直ぐユウミを見つめた。
『ここはあなたの家よ。もしも、帰りたくなったら、いつでも帰ってきて良いんだからね。お母さんはいつでも……待ってるわ。』
『……』
言葉が、すぐには出てこなかった。
胸の奥が、ぎゅっと締め付けられる。
『……うん……ありがとう…お母さん。』
ユウミはオリオンの背に跨る。
オリオンが、大きく翼を広げた。
『カムイ!』
『はっ!』
『お母さんを頼む。』
『ははっ!』
『じゃぁ、行ってくる。』
バサッ!ブオンッ!
オリオンは翼をはためかせ、一瞬にして大空へと舞い上がった。
小さくなっていく背中。
『ユウミ……頑張りなさい。』
その声は、風に乗って——いつまでも、消えなかった。
第22話を読んでいただき、ありがとうございました。
今回のエピソードは、これまでの“修行編”の一区切りとして、
ユウミにとっての「帰る場所」と「旅立つ理由」を改めて描いた回でもあります。
玉藻との関係、オリオンとの絆、そして受け取った“証”。
それらはこれからの物語の中で、必ずユウミを支える力になっていきます。
そして、ここからはいよいよ“外の世界”へ。
王国、街、人々との出会い——新たな物語が動き出します。
ユウミ自身もまだ気づいていない“自分の強さ”や“役目”が、
これからどのように明らかになっていくのか。
ぜひ、引き続き見守っていただけたら嬉しいです。
今後とも『龍眼の転生者 〜内なる龍が目覚める時〜』をよろしくお願いいたします。




