それは既に溢れ出している⑦【異形顕現】
いつもお読みいただきありがとうございます。
激戦の続く中、ついに“異形”が姿を現します。
ユウミとオリオン、それぞれの想いと覚悟がぶつかる一戦となりました。
内に秘めた力が表に出る時――
それは救いなのか、それとも……。
どうぞお楽しみください。
『ほう。ジミマイとバフォメット、サタナキアまでもがやれたか。』
アスモデウスは惜しむ様子もなく吐き捨てるように言う。
ユウミとオリオンは上空にいる悪魔を見上げる。
一際異質な雰囲気を感じ取る二人。
『このアスモデウスが戦うことになるとは、まったく面倒なことだ。』
アスモデウスは何もない空間から、黒く燃えるような闇を纏った大剣を出現させた。
『灰燼と化すが良い』
その直後――
ユウミの目の前に瞬間移動したアスモデウスが、大剣を振り下ろす。
『な…!?』
ガギンッ!!
辛うじて受け止めるユウミ。
『ふむ。これを防ぐか。』
『グォォォオオオオ!!!』
横からオリオンが飛び掛かる。
アスモデウスは即座に回避し、距離を取る。
『グルルル……ユウミよ。気を付けろ。此奴、何かある。』
『うん。あの剣、凄く嫌な気配がする。』
『何かしらの異能が付与されておるのだろう。』
『フハハハ。異能…そんな生易しいものではない。』
アスモデウスは大剣を振り上げる。
『しかし、お前らには理解できまい』
バァァオンッ!
振り下ろされた大剣から、黒い炎が解き放たれる。
空気が焼け、地面が溶ける。
視界すら歪むほどの熱量。
(これは……)
(まずいのぉ……)
二人は左右に散って回避する。
黒炎が倒れていたジミマイとバフォメットを呑み込み、一瞬で消し炭へと変えた。
『あれに少しでも当たったら……』
ユウミの頬を冷や汗が伝う。
『ユウミ!あの炎には触れるな!』
『わかってる!オリオンも気を付けて!』
『防げるものなら、やって見せろ!』
バァァオンッ!
バァァオンッ!
バァァオンッ!
無数の黒炎が降り注ぐ。
『グォォォオオオ!!!』
オリオンは避けず、ティガロンオーラで無効化する。
ユウミは跳躍し回避するが、次々と炎が迫る。
『まずい……避けられない』
空中では動けない。
『くそっ!』
咄嗟に刀を振る。
シャインッ!
(あれ……?)
炎が――斬れた。
オリオンは静かにそれを見ていた。
ユウミは刀を見る。だが、不知夜の声はない。
(今のは……俺の力……?)
再び炎が迫る。
シャインッ!
シャインッ!
シャインッ!
すべて斬り裂く。
『炎が斬れる……』
『違う。』
『オリオン。』
『ユウミよ。お前が斬っているのは――魔法だ。』
『……魔法を……斬った……』
理解が追いつかない中――
アスモデウスの魔力が爆発的に膨れ上がる。
大剣を大きく振りかぶる。
次の瞬間。
地面を割るほどの一撃とともに、最大の黒炎が放たれた。
二人は迷わず駆け出す。
『グォォォオオオオ!!!』
『やぁぁあああああ!!!』
気合が空気を震わせる。
爆炎に穴が空く。
オリオンの光と、ユウミの斬撃によって。
道が開かれる。
二人は止まらない。
オリオンは翼で加速し、ユウミは風を纏う。
烈風がアスモデウスへ迫る。
『…なぜこの炎を……』
動揺するアスモデウス。
同時に放たれる一撃。
バキンッ!!!
大剣が粉砕される。
吹き飛ぶアスモデウス。
だが――笑っていた。
『カース・オブ・アンリーシュ……』
砕けた大剣が闇を放つ。
『…デーモンズ・ドラゴン』
折れた大剣が、アスモデウスの胸に突き刺さる。
『ぐぁ……ぁぁ……ゔおぉぉお!!!』
肉と剣が溶け合う。
蠢く。
膨張する。
『……なんなんだこれ……』
『……わからぬが……嫌な気配だ……』
ボコボコと変形していく。
ズドォォォン!!!
――静寂。
次の瞬間、世界が軋んだ。
『ギャァオオオオオ!!!』
現れたのは――異形のドラゴン。
『……ドラゴン!?』
『うむ……だが、あのようなものは知らぬ……』
黒き巨体。
尻尾には山羊の頭。
腹にはアスモデウスの顔。
ドグンッ!
刀が脈打つ。
――使え。
――力を貸そう。
(……不知夜。まだ、待って)
――お前だけでは斬れん。
(……試したいんだ。自分の力を)
――良かろう。
『ユウミ!来るぞ!』
ドラゴンが口を開く。
黒い光が収束する。
『ユウミよ。頭と腹は我に任せよ』
『じゃあ俺は尻尾だね』
風を纏い、背後へ回る。
バァァァアアアン!!!
黒い光線。
『グォォォオオオ!!!』
オリオンが巨大化し、光で押し返す。
『凄いなオリオンは。俺も負けてられない!』
ユウミは山羊と対峙する。
『ボォォォオオオ!!!』
魔法陣が展開される。
だが止まらない。
雷を避ける。
炎を斬る。
氷を砕く。
風を纏い、音を置き去りにする。
刃が届く。
ギィィィイイイン!!!
『なに……!?』
弾かれる。
一瞬の隙。
頭突き。
ガァァァン!!!
吹き飛ぶ。
屋敷の壁に叩きつけられる。
『……っ……』
だが立ち上がる。
(……怪我……してない……?)
ドグンッ!
――使え。
(……まだだ)
(硬い……だが……)
『やれることがまだあるんだ。俺なら斬れる』
返答はない。
歩き出す。
その背中を、憂うる影が見つめていた。
『でも斬れなかった時はさ、力を借りるよ。不知夜。』
第17話をお読みいただきありがとうございました。
今回のテーマは「顕現」と「境界」です。
力を使うことは、同時に“何かを越えてしまう”ことでもあります。
ユウミの中で起きている変化、そして刀との関係――
少しずつ不穏な気配を感じていただけたら嬉しいです。
そして、オリオンとの共闘も一つの見どころでした。
信頼があるからこそ成立する戦い、という部分を意識して描いています。
次回はさらに物語が大きく動いていきますので、ぜひ引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。
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本当にありがとうございます。




