それは既に溢れ出している⑤【頂に立つ者】
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
物語はついに一つの頂へ――。
積み重ねてきた戦い、その先にあるものとは何か。
ユウミが立つその場所に、何を見るのか。
ぜひ最後まで見届けていただけたら嬉しいです。
『今までの悪魔とは思わんことだティガロンよ。』
バフォメットは一言告げると、ニヤリと口角を上げる。
『どこが違うのかわからぬな』
『今にわかるさ。それにお前には取っておきを用意してあるし…な!』
ズァッ!
振り下ろされた大斧を、オリオンは軽やかに躱す。
『貴様らの取っておきなど、姑息で卑怯と相場が決まっておる。』
『デモンズフレア!』
爆炎。
しかしオリオンは、その爆心をかすめるように抜ける。
『デモンズボルト!』
雷撃が走る。
だが、その動きは——見切られていた。
『デモンズブレイド!』
魔法の隙を突いた横薙ぎ。
ズバァンッ!
大岩ごと一刀両断。
『ヒヒャヒャヒャ!ざまぁねぇなオイ!』
崩れ落ちる岩。
しかし——
『どうした?大岩が斬れてそんなに嬉しいのか?』
背後。
『なっ…!?』
振り向くより早く、鋭い視線が突き刺さる。
『なるほど!腐っても聖獣という訳だ!』
『腐ってるのは貴様らだ。』
『ヒヒャヒャヒャ!良いだろう!見せてやろう!』
大斧が天に突き立てられる。
斧腹の紅い線が裂け——眼が開く。
『ピジョン・オブ・カース・ブラッド』
視界が、歪む。
空気が、重く沈む。
オリオンの身体が——止まる。
『ヒヒャヒャヒャ!どうした?身体が動かないのか?』
微動だにしない。
その瞳だけが、わずかに細められる。
『どうだ!話すこともできまい!』
ガシーンッ!
大斧が叩き込まれる。
衝撃が地を震わせる。
——その瞬間。
オリオンの前脚が、ほんのわずかに沈んだ。
『……!』
バフォメットの目が見開かれる。
(通る……!?)
だが——
次の瞬間、違和感に変わる。
手応えが、ない。
『……ぼ…防御力か……』
『違う』
低く、短く。
オリオンの口元が、わずかに歪んだ。
『ヒャヒャ。だが、動けなかれば時間の問題だ』
『デモンズフレア!』
爆炎。
『デモンズボルト!』
雷撃。
『デモンズレイ!デモンズロット!』
連続する魔法。
轟音と共に土煙が舞い上がる。
『はぁ…はぁ…これで……』
土煙が、晴れる。
そこには——何もない。
『ヒヒャヒャヒャ!消し飛んだか!』
その時。
空間が、沈んだ。
『な……なんだこの影は…』
振り向けない。
背後に“何か”がいる。
『……後ろに……いる…』
目の前に黒い液体の瓶を出現させる。
振り向き様に投げようとした、その瞬間——
『我の翼を潰した毒。それが貴様のとっておきか?』
身体が止まる。
振り向いた先にいたのは——
巨大な白き聖獣。
翼を広げた、ティガロン。
『我はこの世界の頂に立つ存在である。控えよ小悪魔。』
その一言で、大気が軋む。
膝が、沈む。
『ぐぬぅぅ……!』
無理やり立ち上がり、瓶を投げつける。
『これは以前の10倍の効力だ!』
瓶が砕ける。
黒い液体が蠢き、襲いかかる。
『聖虎王気——ティガロンオーラ』
一瞬。
世界が、静止した。
次の瞬間——光が爆ぜる。
毒は触れる前に、蒸発するように消えた。
『…ば……ばかな!魔法でこの毒は…』
『これは魔法ではない。我のとっておきよ。』
『ならば、また動けなくしてやる!』
再び眼が開く。
『ピジョン・オブ・カース・ブラッド!』
オリオンは動かない。
『ヒヒャヒャヒャ!これで——』
グチャッ
地面ごと、砕けた。
『さっきから思っていたのだが、それは何なのだ?』
踏み潰されたまま、バフォメットは呻く。
『……図ったな……この……クソ……』
グチャッ
『おお、そうであった。貴様は他の悪魔とどう違うのだ?』
返答はなかった。
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勝者——オリオン。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。
「頂に立つ者」――
この言葉が意味するものは、強さだけではないのかもしれません。
戦いの果てに得るもの、失うもの、そして背負うもの。
ユウミがこれからどんな選択をしていくのか、引き続き見守っていただけたら嬉しいです。
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次回もよろしくお願いします!




